地図と位置情報
「位置情報データ」でここまでできる! CiscoのWi-Fiで人流分析、住宅地図DBから建物の築年数推計も
「位置情報・ビッグデータカンファレンス2020」レポート
2020年11月19日 07:00
地図データ×人流データで得られる「気づき」がビジネスに――パイオニア株式会社/インクリメントP株式会社
2019年10月から新たに社内カンパニー制を導入したパイオニア株式会社。同社モビリティサービスカンパニーのチーフデジタルオフィサーを務める石戸亮氏が、同カンパニーが取り組むデータソリューション事業について講演を行った。パイオニアは、デジタル地図データの整備に加えて、ヒヤリハット地点などのプローブデータの収集を長年続けており、これらのデータに天気やドライバーの運転傾向を組み合わせて統合的に事故のリスクを予測し、現在の状況に合わせて注意喚起と警告を行う先進運転支援システム「Intelligent Pilot」を提供している。
石戸氏は、データを溜めて活用する流れを水力発電にたとえて、「水が溜まるレイク(湖)があっても、それだけですぐに何かに使えるわけではなく、準備段階として水圧を変えたり、発電所に送ったりするといったさまざまなプロセスがあります。データも同様で、データレイクがあればいろいろな目的に活用できる可能性があるので、ビジネスユースケースや目的を関係者で目線合わせし、パイオニアならではのサービスの可能性を議論してさまざまな産業や顧客に提供していきたいです」と語った。
続いて、パイオニアグループのインクリメントP株式会社の豊田俊作氏(執行役員/事業本部事業戦略部部長)が登場し、地図データ「MapFan DB」と人流データで得られるインサイト(気づき)と活用例について紹介した。
例えば建物データと人流データを組み合わせることで、建物の利用者数や混雑度、人気度などが分かり、建物の商業的価値の試算や、携帯電話基地局を建てるビルの選定に活用できる。また、AOIデータ(Area of Interest:敷地データ)と人流データを組み合わせることで、敷地別の利用者数や混雑度、人気度が分かり、公園や河川敷など建物がない場所について潜在的な観光スポットを見つけ出すことができる。
さらに、道路ネットワークデータと人流データを組み合わせれば道路の渋滞状況を把握して回避できるし、歩行者ネットワークと人流データを組み合わせれば歩行者専用道路や地下街の通行量が分かり、新規出店時の売上予想や不動産価値の推定、屋外広告の効果測定なども行える。
また、町丁目ポリゴンと人流データを組み合わせることにより、時間帯別人口や店舗来訪時の居住地傾向が分かり、公共交通の整備やダイヤの検討、見込み顧客の居住地周辺のポスティングなどの活用ができる。POIデータ(施設データ)と人流データとの組み合わせも同様で、POIごとの利用者数や混雑度、人気度、来店者の推定居住地などが分かり、自店舗と競合店の来店傾向分析や出店計画に活用できる。
豊田氏は最後に、インクリメントPが7月にリリースしたポイントアプリ「トリマ」についても紹介した。同アプリは、移動することでマイルを貯めて、貯まったマイルをポイントやギフトに交換できるアプリ。「トリマの狙いは、新規開通道路や人が多く集まる場所をいち早く察知して地図整備に生かすことに加えて、地図と人流データを掛け合わせることで新たな価値を生み出していくことを目的にしています」と語った。その上で、「地図データを活用した新たなサービスを創るには、さまざまな技術を持つパートナー様との共創が必要です。弊社と一緒に何かできそうだと感じていただいた方は、ぜひご連絡ください」と締めくくった。