地図と位置情報

「位置情報データ」でここまでできる! CiscoのWi-Fiで人流分析、住宅地図DBから建物の築年数推計も

「位置情報・ビッグデータカンファレンス2020」レポート

 リクルートと電通のジョイントベンチャーであり、スマホの位置情報データを活用したマーケティングサービスを提供する株式会社ブログウォッチャー。同社が4年前から主催している「位置情報・ビッグデータカンファレンス」には、スマホの位置情報を活用したさまざまな企業による事例発表が行われている。今年はコロナ禍のもと、オンラインで9月中旬に開催された同カンファレンスの中から、注目の講演を紹介する。

「混雑マップ」がコロナ後の新たなビジネスを創出――ジョルダン株式会社

 経路検索サービスの定番である「乗換案内」を提供するジョルダン株式会社は、乗換案内アプリの最新情報と、公共交通チケットサービス「モバイルチケット」を紹介した。

 同社はコロナ禍での移動リスクを最小限にするため、乗換案内アプリにおいて他社サービスにはなかった新機能「各駅停車 優先検索」を提供開始した。同機能は混雑している急行や快速列車ではなく、各駅停車を優先して検索する機能で、「混雑列車や混雑時間を避けたい」というニーズに応えて実現した。

 また、同アプリを使用するユーザーの位置情報をもとにした「混雑マップ」も無料で提供開始した。同機能は、位置情報の提供に同意したユーザーのログからヒートマップを生成して混雑度合いを視覚化するもので、前日から7日前までの混雑度を30分刻みで表示できる。同社は今後、同機能を進化させて、収集した位置情報と経路検索の検索ログを掛け合わせることで未来の混雑予想を行う機能も開発中だという。これによってユーザーは、週末のイベントで混みそうな場合にバスを避けてタクシーを使ったり、タクシードライバーが客の多そうなエリアを探したり、企業が人の多い場所や時間帯に向けてサービスを展開したりといったさまざまな活用が可能となる。

混雑度の未来予測データを開発中

 続いて、旅先で楽しめる食事・施設チケットやエリア内で使えるクーポンを公共交通フリーパスと組み合わせて提供する「モバイルチケット」も紹介した。同サービスは、英Masabiの日本における総代理店としてジョルダンが提供するもので、2019年9月より愛知県豊田市において観光型MaaSのモバイルチケット「ENJOYとよたパス」の提供を開始した。これは2019年秋に開催されたラグビーの国際大会に合わせて、国内外の観光客向けに提供したもので、多言語対応のアプリを使って企画きっぷを購入することにより、スマホひとつでバスや飲食店、観光施設での利用が可能となる。

 バス乗車券にはMasabiのモバイルチケッティングサービス「Justride」を採用しており、バス1日フリーパス乗車券を出して画面を見せて自由に乗れるほか、店や飲食店でクーポン画面を見せればお得に利用できる。グルメも観光もスマホで完結する同サービスにより、顧客がどこから来て、市内からどのように移動し、どこの施設や飲食店をいつ利用したか、どのエリアに多く滞留していたのか、といった紙では把握できなかった人の動きが分かる。これにより、将来の都市計画や交通計画立案における基礎データなどに利用できる。

愛知県豊田市でモバイルチケットを提供

 ジョルダンの佐藤博志氏(執行役員戦略企画部長)は、「人流データは、地元の人ですら気づけなかった新たな地域のスポットの魅力を教えてくれます。ジョルダンは非独占的な企業体連合としてJ MaaS株式会社を立ち上げて、交通事業者や広告事業者、通信キャリア、旅行事業者、地方自治体、製造業などさまざまな企業がデータを共有し、参画企業同士によるコラボレーションの場を創出するオープンイノベーションを目指しています。ジョルダンは乗換案内を広告塔として、日本全国の面白いスポットを発掘し、面白い国・ニッポンを創っていきたいと思います」と語った。

ジョルダン株式会社の佐藤博志氏(執行役員戦略企画部長)

 佐藤氏は、充実したインフラを持ち、定時運行を実現している日本の公共交通と、Suicaなどの電子マネーやモバイルチケットなどのソフト面を組み合わせることで、日本を一気にMaaS先進国にすることができると語った上で、「あらゆるサービスから日本の知られざる魅力を知らせて、スマホ1台で済むようになれば、日本はもっと元気になります」と語った。

片岡 義明

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報トラッキングでつくるIoTビジネス」「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。