地図と位置情報

「位置情報データ」でここまでできる! CiscoのWi-Fiで人流分析、住宅地図DBから建物の築年数推計も

「位置情報・ビッグデータカンファレンス2020」レポート

「Cisco Meraki」のWi-Fi人流データ連携で、個人情報を取得せずにターゲティング広告も――シスコシステムズ合同会社

 シスコシステムズ合同会社は、クラウドネットワーキンググループのプロダクトセールススペシャリストを務める青木亮二氏が、クラウド管理型ネットワーキングソリューション「Cisco Meraki」について紹介。同ソリューションは、無線LANアクセスポイントやスイッチ、SD-WAN&セキュリティアプライアンス、端末管理のEMM(Enterprise Mobility Management)、セキュリティカメラ、SaaSアプリ監視などを世界中どこからでも単一画面で一括管理できるソリューションで、テレワーク環境にも対応している。

シスコシステムズ合同会社の青木亮二氏(クラウドネットワーキンググループプロダクトセールススペシャリスト)

 同ソリューションを利用することで運用管理の工数を削減し、オペレーションコストを低減できるほか、アクセスポイントを単なるWi-Fi接続デバイスとしてだけではなく、スマートフォンを持つユーザーの人流データを収集するセンサーとして利用することも可能で、セキュリティカメラをセンサーとして使うこともできる。これにより、収集した人流データを活用することで新しいビジネスを生み出すチャンスがあると青木氏は語った。

 青木氏はMerakiによる人流データの活用例として、同社シドニーオフィスの屋内マップ上に、Wi-Fi接続デバイスの電波強度を測定してユーザーの位置をマッピングしたロケーションヒートマップを紹介し、時間帯別にどのエリアが混雑しているかを示した。さらに、アクセスポイントを設置している電波のエリアに入ってきた人について、エリア内に5分未満滞在した人を通行人、5分以上滞在した人をオフィスを訪ねてきた訪問者であると定義することで、訪問者がその拠点にどれくらいの時間滞在したのか、どれくらいの頻度で拠点を訪れているのか、他の拠点と滞在時間がどのように異なるのか、といった分析が可能となる。

オフィス内のロケーションヒートマップ

 Merakiを活用することで生の人流データを収集することが可能となり、その収集したデータを顧客側もしくは、ほかのサービスに提供しているベンダーにて加工することにより、レポートやグラフを作成し、さらにその情報をもとにマーケティングへも活用できる。例えば、レストランや店舗などにおいて、他のベンターのサービスとMerakiで収集できるデータを連携することで、個人情報を取得せずに利用者に対するデモグラフィック(属性)分析やターゲティング広告の配信もできる。また、フリーWi-Fiにログインした利用者の位置情報とログインIDを、顧客の許諾を取得した上で紐づける仕組みも可能となる。

 青木氏は、「Merakiから収集できるデータを人流データを持つ企業と連携することで、さまざまなサービスが実現できます」と語った。

Wi-Fiから収集したデータをほかのデータと連携

※シスコシステムズによると、位置情報の収集に関してはクライアント側OSの仕様に依存するため、本情報はカンファレンスを実施した2020年9月17日時点のものとなる。また、Wi-Fiの位置情報を利用する際には、総務省にて発行しているプライバシーレポート(ガイドライン)を参照の上で利用することをシスコシステムズは推奨している。

片岡 義明

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報トラッキングでつくるIoTビジネス」「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。