被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

高齢者のネット詐欺被害を撲滅しよう!

両親の財産をネット詐欺で吹き飛ばさないための必須対策

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

 デジタルリテラシーの高い若い世代であれば、こてこてのネット詐欺を見破ることができるかもしれませんが、両親のシニア世代では難しいものです。しかも、シニア世代は、生き馬の目を抜く昭和を生き抜いてきているので、自分に自信があり、ネット詐欺を見抜けないことを認めてないことが多いのです。

 とはいえ、家族が不幸になるのを見過ごすわけにもいきません。本人にデジタルリテラシーを高めてもらったり、詐欺対策ソフトを購入したりと、さまざまな対策が考えられますが、最も効果的なのは、子ども世代が両親とネット詐欺の情報を共有することです。

ネット詐欺の被害に遭わないためには、両親とコミュニケーションを取ることが大切です(acworksさんによる写真ACからの写真)

 時々、テレビでもネット詐欺を取り上げますが、大流行したごく一部の手口しか放送する時間はありません。基本パターンや流行中のネット詐欺の手口は一通り押さえておきたいところです。脱税の手伝いをしてくれたら1億円あげますとか、ロマンスグレーの外国人が口説いてきたとか、事例を知っていれば笑い飛ばすことができます。

 その際、「覚えておけ!」のように上から目線で説教してはいけません。「こんな事件があって、○○万円の被害が出たんだって、自分たちも気を付けなきゃね~」と情報を共有してください。

 ただし、面倒なことに、1回や2回の情報共有では、そう簡単に被害を完全防止することはできません。ネット詐欺を仕掛けるときには、焦らせて判断力を低下させるように仕向けるためです。時間を区切ったり、訴えられると脅したりする手もあるのですが、複合的に利用されるのが「恥ずかしい」という感情です。

 還付金詐欺やロマンスグレー詐欺に引っ掛かったことが知れると世間体が悪いので、お金でなかったことにできるならいくらでも払うという人が多いのです。途中で詐欺だと気が付いているのに、誰にも相談せずに、被害を拡大してしまうのはもったいないです。

 普段から情報共有しつつ、何かあったらすぐ子どもに相談するようにしておきましょう。若い世代が鉄壁のデジタルリテラシーを身に付けておけば、両親から相談があった時点で被害を食い止められます。ここには、どんなにたいしたことがなくても、どんなに恥ずかしい事柄でも相談するように意識をすり合わせておきましょう。

 人に相談する場合は、どうしてそのような状況になったのかを話す必要がありますが、アダルトサイトの架空請求詐欺だと恥ずかしくて内密にしてしまう傾向にあります。そのため、普段から「アダルトサイトの架空請求詐欺は、普通のウェブサイトを見ていても出逢うことがあるので、即連絡するように」と話しておきましょう。実際にそうですし、万一の時の心理的な逃げ道にもなります。

 筆者の親にこの手の話をしたときに、「分かった。怪しいと思ったら、すぐに連絡する」と言ったので、これは難しい、と感じました。例えば、税務署を名乗る還付金詐欺や銀行をかたるクレジットカード詐欺などがハマると、そもそも疑わないまま話が進んでしまうことが多いのです。

 「お金を振り込むように指示されたら連絡する」という条件を付けでも、一部のネット詐欺しか防げません。本連載で何度も取り上げているように、ATMから振り込む以外にも、いろいろな詐欺事件が起きているからです。とにかく、気軽にコミュニケーションするような体制を整えておくことをお勧めします。

 そして、万一、ネット詐欺の被害に遭ってしまったときに、烈火のごとく責めることはしないでください。本人は傷ついているし、反省もしているでしょうから、単に怒りをぶつけるのは意味がありません。ましてや、「遺産として自分のものになるはずだったのに」といった見当違いの理由で責め立てるのは最低です。

 確かに、貯金を全て失うと、その後の人生に大きな影響が出てきます。さらに、今後もネット詐欺の手口は進化し続け、バリエーションも増えていくことでしょう。ネット詐欺を対岸の火事と思わず、まずは自分のデジタルリテラシーを高め、両親を含め家族を守ることを心がけましょう。細かい普段の積み重ねが、いざというときの防波堤になってくれるのです。

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NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。