被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

若者も騙されないように注意!

その情報、シェアして大丈夫? フェイクニュースの拡散で起こった事件

驚異的な拡散力、米大統領選でも影響が

(Image:Shutterstock.com)

 SNSやネットで衝撃のニュースを見て、よく考えもせず拡散してしまう人がいます。怒りを感じたり、面白いから他の人にも知らせようとするのですが、拡散しようとしているものが偽の情報、いわゆる「フェイクニュース」の可能性もあるからです。その情報が正確かどうかをよく確認することが重要です。

英国の国民投票や米大統領選にも大きく影響

 例えば、英国が2016年6月に行った、EU離脱の是非を問う国民投票おいて、英国の離脱を煽るフェイクニュースが拡散しました。離脱派の英国独立党党首がEUへの拠出金が週あたり3億5000万ポンドになると主張したのですが、実際は週1億数千万ポンドだったので、数倍も盛っていたことになります。

 英国統計局が虚偽の情報だと否定しましたが、調査によると英国民の67%がこの情報にリーチし、そのうちの42%は真実であると信じてしまったのです。英国放送協会(BBC)によると、離脱派が勝った要因の1つとして、この金額の件が挙げられており、国民投票の結果に大きく影響したとされています。

 同じく2016年、米国の大統領選で、ヒラリー・クリントン候補を標的にしたフェイクニュースが拡散しました。クリントン氏がイスラム国に武器を売ったという内容で、この記事はFacebook上で78万9000回もシェアされています。また、ローマ法王がドナルド・トランプ候補を支持するというフェイクニュースも出ており、こちらは96万回もシェアされました。この2つのシェア数は、Facebook上でシェアされたフェイクニュースのうちのツートップになり、選挙結果に影響を与えたとされています。

 このほか、2011年3月に起きた東日本大震災では、被災地で外国人による犯罪が横行しているというフェイクニュースが拡散しました。東北学院大学の調査によると、外国人犯罪発生率にほとんど変化はなかったようですが、アンケートでは「とても信じた」「やや信じた」という回答が8割を超えており、「全く信じなかった」はたったの0.8%程度でした。

 その後、2016年に起きた熊本地震では、動物園からライオンが逃げたというフェイクニュースが拡散しました。熊本市動植物園には電話が殺到してしまい、フェイクニュースをツイートした神奈川県の男性が逮捕されています。

安易な気持ちでシェアすると取り返しがつかないことも

 情報をシェアする際は注意が必要です。人を傷つけたり、騙したり、時には法律に違反するような虚偽の内容を拡散すれば、新たな被害を生む可能性や、友人や知人の信頼を失うことにつながりかねません。フェイクニュースを拡散する人は、友人が忠告してくれても無視する傾向が多いのですが、そういった行動を見かねて黙って離れてしまう人もいるでしょう。

 単にシェアしただけ、ということが通用しない場合もあります。

 FacebookでのシェアやTwitterでのリツイートは責任のある情報発信なのです。例えば、2020年6月、元大阪府知事の橋下徹氏が一部のリツイートを巡って、ジャーナリストを相手取った訴訟では、「元のツイートが他人の社会的評価を低下させると判断される場合、経緯や意図を問わず、リツイートも責任を負う」との判断を大阪高裁は示しました(毎日新聞社6月23日付記事『大阪高裁も「リツイートに賠償責任」 1審・橋下氏への名誉毀損認定を支持』参照)。

 フェイクニュースに騙されないためにはどうすればいいのでしょうか?

 まずは複数の情報を参照する癖を付けましょう。情報の出所もチェックしましょう。大手出版社、新聞社、テレビが発信しているなら、信憑性が高まります。有名人が投稿した内容なら、ある程度責任を取るつもりがあると考えてよいでしょう。しかし、本物の政治家やテレビ、新聞でもフェイクニュースを流すこともあるので注意が必要です。

 新型コロナウイルス関連でもフェイクニュースが多数飛び交っています。そのため、国連は「Pause/ちょっと待って」キャンペーンを8月から行っています。シェアする前にちょっと待って考えてみよう、というものです。

 フェイクニュースに踊らされ、失ってしまった信頼の回復には時間がかかります。シェアやリツイートをする際は、間違った情報を拡散しようとしていないか一呼吸置き、不安であれば事実確認を慎重に行いましょう。

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