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【使いこなし編】第237回

2万円を切るお手軽NAS、アイ・オー「HDL1-LA02」でスマホのバックアップを始めよう

入門用としてもちょうどいい、お手軽ネットワークHDD

 今回からは、アイ・オー・データ機器のNASの使いこなしを実践していく。NASは「Network Attached Storage」(ネットワーク接続された記憶装置)の略で、名前の通り、スマートフォンやPCといったデバイスに直接接続するのでなく、家庭内のWi-Fi(ネットワーク、LAN)を介して接続して使う外部ストレージだ。「ネットワークHDD」のような呼び方をすることもある。

 直接接続でなくネットワークを介することで、つなぎ替えることなく複数のデバイスから利用できたり、アプリなどを通じてインターネット経由で家の外からでも利用できたりと、活用の幅が広い。

 写真や動画、書類などを保存しておき、必要なときにすぐ取り出すこともできるし、あまり使わなくなったデータをNASに移動させて、スマホの保存容量を増やす使い方も可能だ。また、使い方にもよるが、クラウドサービスに保存しているデータをNASに移して、サブスク料金を節約することもできる。

アイ・オー・データ機器の家庭用NAS「LANDISK HDL1-LA」シリーズの2TBモデル「HDL1-LA02」を選択した

 今回取り上げるのは、アイ・オー・データ機器の「HDL1-LA02」。同社のNAS「LANDISK」シリーズの家庭向けモデルの中でも最も廉価な「HDL-LA」シリーズの2TBモデルだ(同シリーズには容量2TBと4TBのモデルがある)。

 市場想定価格は2万4310円。4TBモデルの「HDL1-LA04」が3万2890円となっている。型番の細部に「/E」が付いたネット通販専売モデル(外箱の印刷が簡易になっている同等製品)もあり、Amazon.co.jpでは、記事執筆時点だと2TBモデルの「HDL1-LA02/E」が1万9800円と、2万円を切る価格で販売されているようだ。

 これなら外付けHDDと比べても少し高い程度で購入でき、NASを試してみたかったという人の入門用にもちょうどいいだろう。

横置きもできないことはないが、デザイン的に立てて使うことが想定されている
底面にはゴム足が付いていて、下から空気を取り入れて内部を冷却する構造
上面にもエアフロー用の穴が開いている。下からの空気を抜く煙突構造の作り。NASは常時電源を入れて使うのが普通なので本体に排気用のファンがあると動作音が気になってしまうが、本製品はファンレスなので静かだ

NASのさまざまな機能や運用方法と、家庭用・入門用NASとの比較

 このHDL1-LAシリーズは、シンプルな1ドライブ構成だ。法人向けのNASは2ドライブ以上の構成で、複数のHDDに同じデータを記録し、物理的な故障を対策する冗長化(代表的な技術から「RAID」とも。1台のHDDが故障しても、ほかのHDDからデータを復元できるようにしている)を施して運用することも多いが、家庭用なら、冗長化までは考えなくてもいいだろう。

 冗長化は業務で利用中に逐次保存されるデータをリアルタイムに複製することでトラブルに備える技術だが、家庭ではスマホやPCのバックアップ、つまり、逐次ではなく決まったタイミングでデータを保存する用途が主になると思われるので、NASのさらなるバックアップができれば、故障時の対策としても十分だ。HDL1-LAシリーズはUSBポートを備えていて、別途外付けHDDを接続してバックアップできる。

 昨今のNAS、特に海外メーカーの製品では「NASキット」と呼ばれるものもある。HDDが別売りで、空のドライブに自分で必要な容量のHDDを装着して使うことと、NASに内蔵したOSでさまざまなアプリ・サービスを実行できることが特徴だ。HDL1-LAシリーズは最初から2TBないし4TBのHDDが内蔵されており、こうした製品と比べてアプリ面でもシンプルな製品だと言える。

 さらにNASの運用を考えていくと、UPS(無停電電源装置)の導入も視野に入る。UPSは、近所での落雷など急な停電や瞬断(瞬間的に電圧が下がる現象)が起きたときに、安全に電源をオフにする(短時間ならそのまま使い続けられる)という補助バッテリー的な装置で、装置の故障やデータの消失を防ぐことができる。家庭利用ではいささか大げさとも思えるが、筆者宅ではUPSを使っていて、実際にこれまで何度も雷雨の短い停電時に救われている。HDL1-LAシリーズはUPS接続に対応しているので、余裕があれば本連載でも紹介したいと思う。

「HDL1-LA02」の背面。ギガビット対応の有線LANポートとUSB 2.0対応のUSBポートがある

自宅のスマホやPCのバックアップに使ってみよう

 HDL1-LA02の背面には、ギガビット対応の有線LANポートと先述したUSB 2.0ポートがある。有線接続で使う必要があるので、自宅のWi-Fiルーターなどとケーブル接続することを想定して、設置場所と十分な長さのケーブルを用意しておきたい。

 本連載では、スマホの写真と動画、書類などのバックアップのためにHDL1-LA02を活用する方法を実践していく。自宅でネットワーク経由で、つまりケーブルをつながずWi-Fi接続だけでバックアップできるのはもちろん、外出先からも「Remote Link Files」というアプリを使ってバックアップができる。ただし、モバイル回線では実際に使ってみると、速度的にちょっと常用するには厳しいと感じた。

 外出先から利用するのは最小限に留めて、ふだんは自宅内でバックアップし、スマホ内のデータは削除して容量を解放しておく。外出時で必要になったらNASからダウンロードする、という方法が便利で実用的だろう。

 連載ではPCも利用するが、スマホだけしか持っていないという読者でも活用できるように実践していくので安心して読み進めてほしい。

外出先からアクセスするには「Remote Link Files」アプリに機器を登録する
「Remote Link Files」アプリからアップデートした写真を表示したところ
「HDL1-LA02」の設定画面をウェブブラウザーで開いたところ。スマホでも同じ画面になる

筆者宅で「フレッツ光」回線での接続を確認済み

 なお、インターネットを経由した外部から本製品へのアクセスについては、自宅の回線によっては利用できない可能性があることに注意したい。アイ・オー・データ機器のサポートページによると、「IPv6通信のみ提供されている種別の場合、外出先からアクセスすることはできません」と、IPv6のみの通信ではアクセスできないと書かれている。

 詳細な説明は省くが、昨今のインターネット接続サービスでは、多くの場合「IPv4 over IPv6」という方式により、IPv6通信上でIPv4通信も利用可能になっている。筆者宅は「フレッツ光」回線を利用した「OCN 光 ファミリー」というプランのISPを利用していて、この回線で「Remote Link Files」アプリを使って、iPhoneとAndroidスマートフォンから自宅内の「HDL1-LA02」に接続できることを確認している。

 そのため、「フレッツ光」回線を利用した接続サービスを利用している家庭なら、問題なく利用できると思われる。気になる場合は、利用しているISPに、IPv6のみの提供か、IPv4も利用できるかを確認してほしい。

▼参考:アイ・オー・データ機器のヘルプ
【LAN DISK】IPv6回線契約で外出先からアクセスすることはできますか?(アイ・オー・データ機器 サポート Q&A)

 それでは、次回からセットアップして使い始めてみよう。

今回の教訓(ポイント)

アイ・オーの「HDL1-LA」シリーズは、お手軽な家庭用向けNAS
外出先のスマホからも使えるが、バックアップは家庭内で行おう

村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。