超入門! ネットワーク基礎

「Wi-Fiが遅い!」ネット速度低下の原因と対策7選。問題点を“切り分け”し、的確に高速化しよう

 みなさんこんにちは。左門です。ネットを使っていて通信速度が遅いときに、私たちは「Wi-Fiが遅い!」とよく言います。しかし、遅い原因は本当にWi-Fiなのでしょうか? どこに問題があるのかが分からないと、速くするための対策も取れませんね。

 そこで、第1回でも行った「切り分け」で、原因を探りましょう。探偵になって証拠集めをする感覚で、ネットワークのさまざまな場所で速度を測っていってください。


いつも使う場所と「インターネットに最も近い場所」を計測しよう

 まずは、自宅の中で、さまざまな場所の通信速度を測りましょう。最初に、いつも使っている状態のPCやスマートフォン(Android/iPhone)の通信速度と、自宅に引き込まれているインターネット回線に最も近い場所を測ってください。

 インターネットに最も近い場所の速度を測るには、次のようにします。光回線を利用している場合は光ケーブルのスピードを直接測ることはできません。 有線LANを利用できるPCがあったら、ホームゲートウェイに直接有線接続し、インターネットに最も近い場所として計測 してください。もしもWi-Fiしかない場合は、ホームゲートウェイから接続したWi-Fiルーターに計測用の端末(PCやスマートフォン)1台だけを接続して計測することで、代用としましょう。

 計測方法は、1回目でも紹介したGoogleのスピードテストを使えば簡単です。以下の図のように操作してください。

ウェブブラウザーを起動して「スピードテスト」と検索します。検索結果に「インターネット速度テスト」が表示されるので、[速度テストを実効]をクリックしてください
自動でテストが開始され、ダウンロード/アップロードの速度が表示されます(本記事では「ダウンロード」の速度に注目します)

 いつもの場所と、インターネットに最も近い場所で、通信速度がほぼ同じ場合、例えば、ホームゲートウェイに直接接続した状態でも、そこから離れた自室のPCでも100Mbps前後の速度だったとしたら、家庭内LANには通信速度を下げる問題がないと判断できます。

いつもの場所(自室など)と、インターネットに最も近い場所で、まずは通信速度を計測してください
【コラム:計測する条件は統一し、できれば何回か計測しよう】

家の複数の場所で通信速度を計測するときには、計測する場所以外の条件をすべて統一しましょう。例えば、いつも使う場所の通信速度を計測したら、同じ時間帯に、同じ端末で、インターネットに最も近い場所の速度も計測するのが望ましいです。

朝と夜といった時間帯の違いや、計測する機器の違いによっても通信速度は変わる可能性があります。また、速度を計測中に家の中のほかの端末で通信しているのもNGです。

複数の条件が変わってしまうと、何が原因で通信速度の違いが生じているのかが分からなくなってしまいます。比較対象以外の条件はできるだけ変えないことを心がけてください。

また、すべての条件をそろえて計測しても、少し時間がずれるだけで速度が大きく変わったりする場合もあります。余裕があれば、3~5回程度同じ場所の速度を計測し、実情を正しく把握するようにしてください。


インターネットに最も近い場所が遅い場合は、ISPの契約内容や設定の確認から

 いつもの場所とインターネットに最も近い場所で速度がほぼ変わらず、それでも「遅い」と感じる場合は、 自宅の外、つまり回線やISP(インターネットサービスプロバイダー)側に問題がある と考えていいでしょう。

 第1回では、実効速度100Mbpsを、おおむね快適に利用できる目安としてしました。インターネットに最も近い場所ですでに100Mbpsを大幅に下回るようであれば、回線やISPの改善を検討した方がいいかもしれません。その前に、現在の契約状況や回線に問題がないか確認してください。


(1)自宅までの回線やレンタルされた機器に問題がある→書類やウェブで契約内容を見直したうえで、サポートに問い合わせよう

 基本中の基本として、現在利用しているISPの契約内容を確認しましょう。すでに何年も使っているなら、自分が記憶しているよりも遅いサービスを契約したままかもしれません。ISPから書面で送られてきている契約情報や、ウェブサイトの会員ページの情報を見てみてください。契約しているプランが遅いプランである場合は、「(2)現在のISPとの契約では現状では満足できる速度が出ない」を参照してください。

 契約に問題がなかった場合、自宅までの回線(集合住宅なら建物内の配線も含む)や、レンタルしているホームゲートウェイなどの機器に問題がある可能性が考えられます。これらは自分でチェックするのは難しいので、「インターネットが遅い」ことについて、 一度ISPのサポートに相談 してみてください。

 回線や機器のチェックだけでなく、場合によっては、プラン変更で速度アップできる可能性についても相談できるでしょう。光回線のインターネット接続サービスは進化を続けており、今では個人宅に10Gbpsの回線を引けるサービスもあります(エリアによっては引けない場合もありますが)。

 集合住宅では自由に回線を切り替えることが難しいですが、最近ではテレワーク対応のためなどで集合住宅に引き込まれる回線がいつのまにかアップグレードさていたり、戸建て用の回線を導入可能になっていたりするケースもあるようです。管理会社に確認してみるといいでしょう。

【コラム:「IPoE接続」の利用で高速化できることも】

近年ではIPv6接続が普及していて、ほとんどの光回線では、かつて使われていた「PPPoE(Point-to-Point Protocol over Ethernet)」という接続方式に代わり、従来とは異なる通信網を利用して高速な通信が期待できる「IPoE(Internet Protocol over Ethernet)」という接続方式が利用できます。

ここではIPv6やIPoEについて詳細な説明は省略しますが、契約している回線でIPv6 IPoE接続(IPoE方式によるIPv6接続)が可能になっていて、まだ利用していなかった場合、切り替えることで、同じ契約のままで従来よりも高速化できる可能性があります。

利用可能か確認する方法はISPにより異なりますが、私が利用しているISP「ぷらら」では、ウェブサイトの「マイページ」から、設定の確認と変更が可能です。有効化すると、約1日間の切り替え処理後に利用可能になります。

私の家では、IPoEを利用することで通信速度が3割程度上がりました。環境によって効果の大きさには差があると思いますが、一度設定を確認してみてください。

ぷららのマイページでは「ホームゲートウェイによるIPoE接続」をオンにすることで、IPv6 IPoE接続が有効になります


(2)現在のISPとの契約では満足できる速度が出ない→ISPのプラン変更、または乗り換えをしよう

 契約内容やケーブルやホームゲートウェイに問題はないけれど遅い、というときには、同じISPのより高速なプランに変更するか、ISPを乗り換えるか、の選択となります。

 ISPのサポートと相談し、より高速なインターネット環境が手に入れられるようであれば、 プラン変更がおすすめ です。同じISPと契約したままなので手間も費用も抑えられ、レンタルしている機器がそのまま使えるケースもあります。

 ISPを乗り換える場合、まずはどの回線が選べるかを確認してください。ただし、現在光回線を利用している場合、利用可能なそれより速い回線が存在しないことも多いです。

 現在、家庭からインターネットを利用するための回線には、主に、光回線、CATV回線、モバイル(5G)回線、その他(ADSL、マンションが独自に導入している回線など)、の4種類が挙げられます。

 このうち光回線は最も一般的かつ有力で、現在の標準的な光回線で1Gbpsの通信速度、高速なもので10Gbpsが期待できますが、自宅に10Gbpsなどの高速な光回線を導入可能かどうかは、確認が必要です。サービスエリア外である、集合住宅で管理会社や大家の同意が得られない、集合住宅の設備に問題がある、などの理由で導入できないことがあります。

 ただし、 現在利用しているものと同じ光回線のままでも、ISPを乗り換えることで高速化できる 場合もあります。NTT東西の光回線サービス「フレッツ 光」を利用している場合は、同じくフレッツ 光を利用している(「フレッツ 光コラボ」と呼ばれるISPを含む)OCN、BIGLOBE、ぷらら、@nifty、などの多くのISPから乗り換え先を選べます。

 自宅から通信事業者(NTT東西)までは同じ光回線でも、各ISPが持つ設備や、ISPからインターネットへの接続点となる「IX(Internet Exchange)」と呼ばれる装置までの回線がISPごとに異なるため、速度の差が生じます。以下の図のようなイメージです。

 どのISPが高速だと一概には言えませんが、乗り換えを考える場合は、IPv6 IPoEのようなサービスの有無も確認したうえで、総合的に判断するのがいいでしょう。一般的な傾向としては、料金が高額なISPや大手とされるISPの方が、高品質、つまり高速なサービスが期待できるでしょう。大手ISPは多くのユーザーを抱えていますが、それだけ設備投資も行われているはずです。

 CATV(ケーブルテレビ)によるインターネット接続サービスは、地域により提供事業者が異なり、事業者によって提供される回線の種類や通信速度も変わります。同軸ケーブルによるサービスの場合は数百Mbpsが限界ですが、光回線であれば1Gbpsや10Gbpsが期待できる場合もあり、高速化のために乗り換える対象として考えられます。

 モバイル回線は、NTTドコモなどの携帯電話用の回線を利用するものです。最近では自宅のコンセントに接続するだけで利用可能な「ホームルーター」と呼ばれる機器が登場していて、回線工事を必要としない手軽さが魅力です。

NTTドコモのホームルーター「home 5G」。工事不要で導入でき、5Gエリアでは高速通信が可能

 通信速度は、従来(4G)だと遅いと言わざるをえません。しかし、5Gの電波が入るエリアでは、1Gbpsを超えるような通信速度で利用可能とする機器も登場しています。ただ、自宅で実際にどの程度電波が入り、期待どおりの速度が出せるかは、使ってみないと分からない面もあって安易におすすめはできません。

 UQ WiMAXでは「Try WiMAX」という15日間のお試しが可能で、記事執筆時点ではauの4G通信回線とWiMAXを利用したホームルーターを試せます。5Gに対応したホームルーターも試せるようになったら、導入前に試せるサービスとして注目です。


家庭内LANのどこかが遅い場合は、順番に切り分けていく

 インターネットに最も近い場所では高速なのに、いつも使う場所の端末では遅くなるという場合、家庭内LANのどこかに原因があります。さまざまな場所で速度を計測し、問題を切り分けながら解決を図りましょう。


(3)Wi-Fiルーターから先が遅い→まず再起動&ファームアップデートし、さらに切り分けよう

 Wi-Fiルーターの先に接続した端末が、接続方法(Wi-Fi/有線LAN)に関わらず遅い場合、まずはWi-Fiルーターを疑います。まずは簡単にできる対策として、Wi-Fiルーターの再起動(電源を切って入れ直す)と、ファームウェアのアップデートを試してください。

 再起動とファームウェアアップデートでも問題が解消せず、やっぱり遅いという場合、次のように速度を計測して、できるだけ問題を切り分けてください。

Wi-Fiも有線LANも遅いか?

 同じPCをWi-Fi接続した場合と有線LANで接続した場合での、通信速度を比べてみてください。一方が遅ければ、そちらに問題があるのだと切り分けられます。

 Wi-Fiが遅い場合は、次の「Wi-Fiルーターのすぐ近くでもWi-Fiが遅いか?」や「接続する端末ごとに速度が大きく変わるか?」も確認してください。有線LANだけが遅い場合は、「(4)有線LANが遅い」を参照してください。

Wi-Fiルーターのすぐ近くでもWi-Fiが遅いか?

 Wi-Fiルーターを設置してある場所のすぐ近くと、壁や天井を隔てた別の部屋や、遠く離れた部屋で通信速度を比べてみてください。すぐ近くでも遅い場合は、Wi-Fiに問題がある可能性が高いです。別の部屋や離れた部屋で遅くなる場合は、遮蔽物や距離が原因となって電波が十分に届かず、遅くなっていると考えられます。

 どの場所でもWi-Fiが遅い場合は、「(5)Wi-Fiが全体的に遅い」を参照してください。特定の場所で遅くなる場合は、「(6)特定の部屋やWi-Fiルーターから遠い場所で遅い」を見てください。

接続する端末ごとに速度が大きく変わるか?

 複数台のPCやスマートフォン、タブレットがある場合は、それぞれで通信速度を比べてみてください。特定の端末だけが遅い場合は、その端末に何らかの問題がある可能性が高いです。解決方法は「(7)特定のPCやスマートフォンだけが遅い」を見てください。

 以下では状況別に考えられる問題と解決方法を解説していきますが、利用しているWi-Fiルーターが古い(目安として、3年以上前に発売された製品である)場合は、 新しい製品に買い替えるだけで、けっこうな高確率で複数の問題を一気に解決できる 可能性があります。ぜひ検討してください。

 買い替えることで一気に問題が解決するのは、不具合が解消されるのと同時に、性能もアップするためです。Wi-Fiの規格の進化については第1回の解説も参考にしてください。一般に、新しい規格に対応したWi-Fiルーターは通信速度だけでなく電波の強度も上がっており、複数の端末との通信を効率化する「MIMO(MU-MIMO)」や、端末がある場所を自動的に判断して電波を最適に届ける「ビームフォーミング」などの機能も搭載しています。

 また、Wi-Fiルーターの多くは、ユーザーが細かな設定を変更しなくても自動で最適な設定がされるように作られています。その反面、Wi-Fiルーターの設定を自分で変更しようとすると、かなり複雑で難しいです。

 こうした理由から、あまり古い機種を細々といじって問題を解決しようとするよりは、思い切って買い替えてみた方が、手っ取り早く問題を解決できる場合が多いです。


(4)有線LANが遅い→ケーブルを挿し直し、それでもダメなら取り換えよう

 有線LANはWi-Fiと比べて考えられる原因の種類が少ないので、先に解説します。Wi-Fiルーター自体に問題はなさそうなのに有線LANの通信速度が遅い場合、まずはケーブルを疑ってみましょう。

 ただ、いきなりケーブルを買い替える必要はありません。まずは、ケーブルをWi-Fiルーターの有線LANポートから一旦抜いて、あらためて 「カチッ」と音がするまで挿し直して ください。接触不良が改善し、これだけで通信が安定することもあります。それでも改善しなかったら、念のため、別のLANポートに挿し直すことも試してみてください。使用していたポートが故障している可能性もあります。

 以上で改善しなかったら、ケーブルそのものに問題がある可能性があります。ケーブルの規格が古いほか、コネクタ付近が損傷している、途中の配線で圧迫されたりして損傷し、断線しかかっているなどの可能性が考えられます。分解しても修理は簡単でないので、LANケーブルを買い替えるのが現実的です。このとき、LANケーブルのカテゴリに注意し、第1回で解説したように、現在主流の「CAT6」のケーブルを購入してください。


(5)Wi-Fiが全体的に遅い→Wi-Fiの設定を見直そう

 Wi-Fiルーターのすぐ近くでもWi-Fiによる通信速度が遅い場合、原因はWi-Fiルーターにある可能性が濃厚です。先述のように思い切って買い替えてみるのもおすすめですが、設定を見直して解決を図る場合は、次のことを試してみてください。

  簡単にできて効果も大きいのが、5GHz帯を利用すること です。現在使われているほとんどのWi-Fiルーターは2.4GHz帯と5GHz帯という2種類の周波数の電波を利用できます。このうち5GHz帯の方が高い最大通信速度で利用でき、周囲にある他の電波を放出する機器(例えば電子レンジなど)による電波の干渉も受けにくいので、5GHz帯に接続するようにしてください。Wi-Fiルーターの設定画面で、2.4GHz帯と5GHz帯それぞれのSSID(アクセスポイントの名称)を設定できるはずです。

 以下は、私が利用しているWi-Fiルーターの設定画面の例です。2.4GHz帯と5GHz帯の両方を有効にしてSSIDを設定していますが、端末は5GHz側に接続しています。

Wi-Fiルーターの設定で2.4GHz、5GHzそれぞれのSSIDを設定し、端末から5GHzのSSIDに接続するようにします

 SSIDの設定画面にある、「チャンネル」と「帯域」の設定項目にも注目してください。「チャンネル」とは、大雑把に説明すると、近くで利用されるWi-Fiの電波が干渉しないよう2.4GHz帯と5GHz帯という決められた周波数帯の中で、さらに細分化された周波数帯(これをチャンネルと呼びます)を選択するための設定です。「自動」にしておけば自動的に干渉しにくいチャンネルが選ばれるので、ほかの設定には変更しないようにしましょう。

 「帯域」は、電波の中のどれだけの範囲(幅)を占有して通信するかという設定で、帯域幅を広く(大きな数値に)設定すると、複数のチャンネルが同時に利用されることがあります。これを設定可能な最大値にしておくことで、高速な通信が可能になります(端末側も対応している必要があります)。通常は変更する必要はありませんが、20MHz、40MHzなどに設定されていて、より大きな数値を設定可能な場合は、変更してみるといいでしょう。

【コラム:帯域幅で速度はどれだけ変わるか試してみた】

帯域幅による通信速度の影響を調べるため、Windows 10のPCで、帯域幅を変えてみました。「コントロールパネル」の「ネットワークとインターネット」→「ネットワーク接続」にて、Wi-Fiのアダプターを右クリックして「プロパティ」を表示し、一番上のアダプターの下にある「構成」をクリックした「詳細設定」タブで、「チャネル幅」を選択します。

すると、以下のように、20MHzという表記以外に「自動」があります。自動になっていると思いますが、これで80MHzの帯域が使えます。

Wi-Fiアダプターの設定で「チャネル幅」の設定を変更できます

試しに、この設定を変更して通信速度を測ってみましょう。帯域幅をデフォルトの「自動」にした場合が左、右は20MHzにした場合です。80MHzと20MHzの違いにより、通信速度が大幅に下がりました。

帯域幅「自動」の場合。80MHz幅で通信します
帯域幅「20MHz」にすると、「自動」の場合と比べてダウンロードは約1/3、アップロードは約1/4になりました



(6)特定の部屋やWi-Fiルーターから遠い場所で遅い→設定や配置を見直すか、中継機を導入しよう

 家の中の特定の場所でWi-Fiが遅くなる場合は、家のさまざまな場所で速度を計測してみてください。Wi-Fiルーターのすぐ近くと離れた場所、壁を隔てた別の部屋や上下階などです。

 特定の場所で通信速度が遅くなるのは、その場所の電波が弱くなっているためです。原因は複数考えられますが、主なものは「ほかの機器と電波が干渉している」「距離が遠い」「障害物で電波がさえぎられている」の3つです。

 電波の干渉は先にも述べたように、Wi-Fiルーターと端末の間に電波を発する機器がある場合です。「電子レンジを使うとWi-Fiが切れる」と言われることがありますが、通信機器でなくても、意外な機器が電波を発することもあります。対策としては、 5GHz帯に接続 するようにしてください。

 遠い部屋でWi-Fiが遅くなってしまうケースは、Wi-Fiルーターからの距離が原因で電波が弱まり、速度が低下すると考えられます。一般的な家庭(数十m程度の距離)では距離の問題はまず起きないと思いますが、もしも距離の問題が考えられる場合は、置き場を変えてWi-Fiルーターを近づけることで解決する場合もあります。置ける場所やケーブルの引き回し方などに問題がなければ、検討しましょう。

 障害物の影響は、木造の家だとあまり起こりませんが、鉄筋コンクリートの場合は壁や床・天井を間にはさむことで、かなり電波が弱まります。壁などを隔てないようにWi-Fiルーターの置き方を変えることで、対策が可能です。

 距離や障害物の問題に対し、Wi-Fiルーターの置き場を変えて効果的な対策ができない場合は、「 Wi-Fi中継機 」と呼ばれる機器を別途導入することで、電波が届く距離を延ばしたり、障害物を回り込んで電波が届くようにしたりできます。中継機でなくWi-Fiルーターをもう1台設置するのでも構いません。この場合、中継器との接続は、無線でも可能ですが、安定した速度を確保するには、有線のLANケーブルで接続することをお勧めします。

TP-LinkのWi-Fi中継機「RE605X」。コンセントに挿すだけで利用でき、電波を中継します

 参考までに、私の家は3階建ての一戸建てで、2階のリビングルームにホームゲートウェイとWi-Fiルーターがあります。1階と3階には有線LANケーブルを引いていて、1階にある仕事部屋では有線LAN接続でPCを使っています。3階には寝室があり、Wi-Fiが高速に使えるよう、3階用のWi-Fiルーターを設置しています。


(7)特定のPCやスマートフォンだけが遅い→設定などを確認するか、思い切って買い替えよう

 Wi-Fiが遅いなと思っていたら、実はスピードテストをするPCやスマートフォンが遅いことが原因だった、ということもあり得ます。そもそも 古い機種だと新しいWi-Fiの仕様や機能に対応できておらず 高速通信ができなかったり、メモリやストレージが足りていないと処理能力が不足して遅くなったりします。また、多くのアプリケーションを動かしすぎている場合などにも遅くなることがあります。

 処理能力が不足している場合は、インターネット以外のアプリケーションも遅いと感じるはずです。そのような場合は、新しい機種に買い替えることをおすすめします。

 処理能力以外の原因もあります。PCで多くのアプリを動かしすぎている場合、それらによってインターネットの処理が十分に行えず、遅くなってしまう場合があります。また、セキュリティソフトの機能が原因で、ページの表示に時間がかかることもあります。

 ウェブブラウザ―が原因となることもあります。現在使っている人はほとんどいないでしょうが、Internet Explorerを使った場合のウェブページの表示速度は、Google Chromeなどの高速ブラウザーよりも遅くなり、スピードテストの結果も変わります。また、利用しているアドオン(追加機能)が原因で遅くなる可能性もあります。


ほかにもさまざまな問題が原因となりうる

 家庭内LANで遅くなることが多い箇所と、考えられる主な原因および対策は、以上のとおりです。原因を的確に切り分けるには、有線LANを利用できるPCが複数台あるとさまざまな比較がやりやすく、便利です。
 ここまでに挙げた以外にも、通信が遅くなる原因はいくつも考えられます。例えば、接続しようとしていたウェブサイトなどのサーバーに問題がある場合、PCがウイルスに感染している場合、ISPの設備に一時的な障害が起きている場合などです。

 特殊なケースを考えていけばきりがないのですが、速度を計測していてこれまで上げた中でも原因を推測しにくいデータになった場合は、少し時間を置いて計測し直したり、計測する端末を変えたりしてみてください。切り分けをすすめていけば、原因がきっとつかめるでしょう。


現状に不満がなくても、もっと速くできる可能性も!?

 最後に、お恥ずかしい話でもありますが、この記事の執筆中に1つ発見したことを紹介します。

 第1回でも書いたとおり、私の自宅では1Gbpsの光回線を契約していて、実効速度は約90Mbpsでした。これは、仕事部屋の有線LAN接続したPCで計測した速度です。しかし、記事を書きながらさまざまな方法でスピードテストをしていると、同じ部屋で同じPCをWi-Fi接続したときには、200Mbps以上の速度が出ることに気付きました。

 有線LANがWi-Fiの半分の速度になるのが普通だとは考えにくく、何らかの問題がある可能性があります。調べていくと、2階では有線LANに接続して200Mbps以上の速度が出ますが、仕事部屋のある1階では90Mbps程度になり、どうやら2階と1階の間のLANケーブルに問題があるようだと分かりました。

 自宅は新築で購入しましたが、もともと問題があったのかもしれません。建設会社に依頼してケーブルを交換してもらったところ、仕事部屋の有線LANでも200Mbps以上の速度が出るようになったのです。よかったです。

 100Mbpsでも全く不満を感じていませんでしたが、より快適になった気がします。現状の回線速度にそれほど不満がない場合でも、一度スピードテストをしてみると、発見があるかもしれません。

左門 至峰

さもん しほう。ネットワークおよびセキュリティの専門家。株式会社エスエスコンサルティング代表。セミナーや研修講師、執筆活動を行う。著書にネットワークスペシャリスト試験の「ネスペ」シリーズ(技術評論社)、「FortiGateで始める 企業ネットワークセキュリティ」(日経BP社)のほか、雑誌「日経NETWORK」やウェブサイト「@IT」などにも寄稿。近著に「ストーリーで学ぶ ネットワークの基本」(インプレス)がある。