俺たちのIoT

第21回

夏休みと言えば「IoT自由研究」、子どもと一緒に楽しもう!

 今年もまた暑く長い夏休みのシーズンがやってきました。夏休みと言えば子どもたちにとっては遊びに旅行にと楽しい時期である一方、子どもの自由研究をどうするか、頭を悩ませている保護者の方も多いのではないでしょうか。IoTをテーマにする本連載では、子どもでも簡単に楽しめるプログラミングや電子工作を使った「IoT自由研究」をおすすめしたいと思います。

けっこういろいろある、子ども向けプログラミング学習キット

 一般的にプログラミングは英単語を多用し、文字入力もパソコンが中心など、子どもにとってはとてもハードルの高いものです。そのため子ども向けのプログラミング学習キットは子どもでも簡単に扱えるよう、スマートフォンやタブレットを使ってドラッグ&ドロップ操作でプログラミングが簡単に行なえるようになっています。また、子どもが興味を持ちやすいよう、自分で作ったプログラミングでロボットが動くといった分かりやすいギミックが採用されています。

 「Ozobot」は、米Evollveが開発した教育用ロボットで、黒・赤・青・緑で書かれた線を本体底面のセンサーが読み取り、プログラムされた通りに動くことができます。プログラムはドラッグ&ドロップで簡単に操作でき、パソコンやスマートフォン/タブレットというデジタル機器と、紙とペンというアナログな道具を組み合わせてOzobotをコントロールする点が特徴です。

 DFRobotの「Vortex」は、対戦ゲームが楽しめるBluetooth搭載のプログラミングロボットです。サッカーやゴルフ、相撲のようにぶつかって戦う「バンピングファイト」といったゲームが4種類用意されており、スマートフォンからワイヤレスで操作して遊ぶことができるだけでなく、自分でプログラミングして新たなゲームを作ることもできます。

 プリモトイズの「キュベット」は、ビル・ゲイツやバラク・オバマといった著名人が幼少のころに学んだと話題になった教育法であるモンテッソーリに基づいた知育玩具です。パソコンやタブレットの画面は使わず、動きが割り当てられたブロックを木製のボードにはめていくことでキュベットに指示を出すという、積み木のような感覚でプログラミングを学ぶことができる点が特徴です。

 スター・ウォーズのキャラクター「BB-8」を再現したロボットで話題になったSpheroの「Sphero SPRK+」は、Blueoothで接続してラジコンのように操作するだけでなく、アプリから動き方をプログラミングできます。球体という特徴的なデザインのロボットを操る楽しみに加え、子ども向けプログラミングとして定番とも言えるブロック型のプログラミングで、動きだけでなく光り方もコントロールできます。

 知育玩具の代表的存在とも言えるレゴも、数多くのプログラミング対応製品を販売しています。数々のセンサーを搭載して動作をプログラミングでき、大人にもファンが多い「マインドストーム」が有名ですが、対象年齢を下げた「WeDo2.0」も新たにラインアップに追加されました。こちらもパワーセンサーやモーションセンサー、チルトセンサーといったセンサーとプログラミングを組み合わせることでレゴブロックを動かすことができます。

 WeDoは基本的に教育機関や企業を対象とした製品ですが、2017年には、同じくマインドストームの対象年齢よりも低年齢に向けた「LEGO BOOST」が一般向け製品として発表されました。こちらも、傾斜センサーや色と距離の計測用センサー、インタラクティブモーターとレゴブロックを組み合わせることで、ギターやネコ型ロボットなど5つのモデルを組み立てることができます。

 Makeblockの教育用ロボット「mBot」も、レゴのようなブロックを使って組み立てるプログラミングロボットです。ブロック操作でプログラミングできるビジュアルプログラミングとして代表的な存在である「Scratch 2.0」をベースとした独自のプログラミングソフト「mBlock」と専用のアプリでロボットを操作でき、難易度によって3種類のロボットが用意されています。国内ではサンワサプライやケニスなどさまざまな販売店が取り扱っています。

 ブロック型のプログラミングロボットとしては、 UBTECHの「Jimu Robot」という製品も日本で販売されています。こちらもブロックで自由にロボットを組み立て、プログラミングで動かすことができます(「ロボットショップ」の「Jimu Robot」販売ページ)。

ソニーも、プログラミングロボットや知育玩具に積極的

 大手電機メーカーのソニーも知育玩具には積極的で、プログラミングに対応した子ども向け製品を多く手がけています。

 「MESH」は、さまざまな機能を搭載したブロック形の「タグ」を組み合わせて作ることができる製品です。ボタンやLED、人感センサー、明るさセンサーなどの機能を搭載したタグを複数組み合わせられる点が特徴で、「人が来たら通知する」「温度が変わったらLEDが光る」といった動作を簡単に作ることができます。

 「toio」は、 モーターで動くキューブ型のロボットを、リング上のコントローラーを使って操作できる玩具です。単体でも操作できますが、自分で作った紙工作やレゴブロックをキューブと組み合わせることで、自分が作った人形やロボットを操作して戦わせるといった遊びが可能です。プログラミング要素はありませんが、自分で作った工作を実際に動かせるため、重心や大きさなどを工夫して楽しむという学びを得ることができます。

 「KOOV」は、ソニー・グローバルエデュケーションが開発したプログラミングロボットです。MESHやtoioに比べるとオーソドックスとも言えるブロック型で、立方体のブロックとセンサーを使って組み立てたロボットを動かすことができます。

電子基板・はんだ付けで、より本格的な体験が行える製品も

 冒頭で紹介した通り、子ども向けのプログラミング学習は、ゲーム感覚で簡単にできる製品が中心ですが、電子基板やはんだ付けといった、より本格的なプログラミングを体験できる製品も登場しています。

 スイッチサイエンスの「nekoboard2」は、Scratchに対応した電子工作ボードです。ドラッグ&ドロップ操作でプログラミングできるScratchに対応し、音センサーや明るさセンサーなどを標準で搭載するほか、他の抵抗センサーを取り付けられるピンソケットが用意されています。

 誠文堂新光社のECサイト「KoKa Shop」では、同社の発行する「子供の科学」で紹介された電子工作を購入することができます(KoKa Shopの「ポケデン」キット販売ページ)。はんだ付けが必要なものもあり難易度は高めですが、身近で入手できるお菓子のパッケージを使った電子工作など、電子工作をより身近に感じられる製品が多数取りそろえられています。

 筆者が所属するCerevoでも、ミニ四駆をスマートフォンから操作できるラジコンに改造できるキット「MKZ4」という製品を開発・販売しています。こちらもはんだ付けやプログラミングの書き込みなど難易度は非常に高めですが、ミニ四駆という身近な製品を改造することで、ハードウェア開発に必要なメカ機構、プログラミング、電気回路といった要素を一通り体験することができます。


 ITの普及に伴いプログラミングは身近な存在となりつつあり、2020年には小学校でのプログラミング教育を必修化するという文部科学省の発表もありました。そのため、子どものころからプログラミングを学ばせようという動きも最近では活発化しています。

 今回紹介した子ども向けの学習プログラミングは基本的なものばかりではあるものの、プログラミングがどんなものかというのを学ぶには十分な要素を持っています。今後来るであろうプログラミング必修の時代に備えて、夏休みをきっかけに子どもとプログラミングに触れてみるのはいかがでしょうか。

甲斐 祐樹

Impress Watch記者からフリーランスを経て現在はハードウェアスタートアップの株式会社Cerevoに勤務。広報・マーケティングを担当する傍ら、フリーランスライターとしても活動中。個人ブログは「カイ士伝」