清水理史の「イニシャルB」

今年だけで3台目。Wi-Fi 7検証目的で買った最新ノートPCは今度こそ320MHz幅でつながるか?

筆者がWi-Fi 7検証用に購入した3台目のPC ASUS Zenbook S14(UX5406)

 Wi-Fi 7の検証目的で、今年3台目となるノートPC「ASUS Zenbook S14(UX5406)」を購入した。さすがに費用をかけすぎていることは自分でもわかっているが、どうしても5764Mbpsでつないでみたいという欲望を抑えられなかった。

 果たして、320MHz幅で通信できるのか? 実機を使って検証してみた。

状況証拠では「320MHz幅でつながる」はず

 1台目は自分の勇み足で非対応PCを購入。2台目は、対応状況不明のまま「賭け」で買ったものの運よく対応モデルを購入できたが、本来つながるはずなのに、未だにドライバーがリリースされない……(Lenovo様、他社様は最新ドライバー配布済みです。待ってます)。

 そして今回の3台目。

筆者がWi-Fi 7の検証のために今年購入した3台のPC

 Wi-Fi 7の320MHz幅通信(最大5764Mbps)を実機で検証したいという意図で、例年以上に機材にお金をかけてきたが、そろそろ予算の面で限界が近づきつつある。

 先日、中学からの同級生で経理面の面倒を見てもらっている税理士との打ち合わせで、高額出費の領収書を前に「またパソコン買ったの? なんで?」と問われ、答えに窮してしまった。

 ただ、大丈夫。さすがに今回は慎重の上にも慎重を期して購入している。

 購入したのは、ASUSの新型ノートPC「Zenbook S 14」だ。Core Ultraシリーズ2を搭載したIntel版のCopilot+ PCとなる。

 本当はメモリ32GB、タッチパネル搭載の最上位モデル(UX5406SA-TU7321GR)が欲しかったが、上記の理由から、最も価格が安いモデル(UX5406SA-U5165GR)を購入した。スペックとしては、Core Ultra 5 226V、メモリ16GB、SSD 512GB、タッチパネル非搭載となる。

ASUS Zenbook S 14。Core Ultra 5 226V搭載、メモリ16GBの廉価版モデル
天板のデザインが特徴的。素材もCeraluminumというハイテクセラミック素材

買う前の準備1:スペックを念入りに確認

 購入にあたって、まずスペック表で「Wi-Fi 7対応」であることを確認した。ASUSのウェブサイトにPDFで掲載されている詳細なスペック表には、以下のように記載されている。

・無線LAN(※8):IEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax/be (Wi-Fi 7)

※8. 電波法により5.2/5.3/6GHz帯は屋内使用に限ります (5.2GHz帯高出力データ通信システムの基地局又は陸上移動中継局と通信する場合など法令により許可された場合を除く)。

ASUS Zenbook S14 UX5406のスペック表より

まずはスペック表でWi-Fi 7対応を確認

 「IEEE 802.11be(Wi-Fi 7)」と記述されているので、まずは一安心。

 これまでのPCでは、「注」で6GHz帯の使用は国ごとに異なるなどの注釈がされていたが、今回はない。「屋内使用」についての注なので6GHz帯がLPI(Low Power Indoor)モードとなるだけだ。

 つまり、320MHz対応かどうかは明記されていないが、否定もしてないことになる。

買う前の準備2:技適の確認

 続いて、法的な対応を確認した。

 320MHz幅を利用するには、いわゆる技適(技術基準適合証明)で320MHz幅に関する申請がなされている必要がある。

 が、しかし、これを調べるのが容易ではない。何しろ、実機に記載されている技適番号がわからないと検索できない。

 レビュー記事や動画などで、背面を確認できるシーンがあったので、限界まで画像を拡大したりしてみたのだが、どうやっても読み取れなかったため、仕方なく実機を確認することにした。

 大手家電量販店の通販サイトをチェックし、店頭在庫が「あり」になったタイミングで訪問し、実機の背面をチェックして、技適番号を読み取ると、「003-240007」という文字列を確認できた。

Zenbook S 14の底面に記載されている技適番号。写真は筆者が購入したPCで後から撮影したもの

 この番号は、インテルの「Intel Wi-Fi 7 BE201D2W」の番号だ。2024年Q2にリリースされたチップとなる。もちろん、ハードウェア的に320MHz幅に対応し、MLOもeMLSR対応と記載されている。

 PCのスペック表でLPIモードとなっているので、「第2条80号(6GHz帯のLPI、79号がVLP)」の項目を開くと、以下のように320MHz幅用の2つのチャネル向けの認証がされていることが確認できた。これで法的にも問題ないことが確認できた。

技適の認証画面。Intel Wi-Fi 7 BE201D2Wの番号
Intel Wi-Fi 7 BE200D2Wのスペック

買う前の準備3:ドライバーの確認

 最後に、店頭にてドライバーが「23.70.3.1」であることも確認した。店頭では管理権限がないためデバイスマネージャーを開けないので、Wi-Fiの接続情報から取得できる情報のみを確認した。

ドライバーのバージョンが23.70.3.1であることを確認。画面は筆者が購入したPCで後から撮影

 最新版のドライバーは23.80.1だが、リリースノートによると、23.70.2でBE201チップに対応、Windows 11 24H2のWi-Fi 7対応、ハードウェア規制の更新が含まれている。また、4K-QAMと320MHz幅は、Wi-Fi 6E環境でもサポートされていると記載されているため、320MHz幅接続自体は問題なさそうだ。

▼Intel Wireless Wi-Fi Drivers 23.70.2リリースノート(Intel)
Release Notes

 ただし、課題は「Regulatory updates」の記述だ。各国の法規制に対応すると、ここで国名が記載されるが、日本の法規制対応については23.70.3.1も23.80.1にも記載されていない。この点は若干不安だ。

 このように、PC本体、搭載チップ、技適、ソフトウェアに関しては、「ほぼ」320MHz幅に対応できそうだったので、購入を決断したことになる。

23.70.2のリリースノート

いざ接続……

 というわけで、慎重な検討の末に購入を決定し、手元に届いたASUS Zenbook S 14を、Wi-Fi 7でつないでみた。

 利用したアクセスポイントは、TP-Linkの「Archer BE805」だ。アクセスポイントの設定画面でもリンク速度を確認できるので、クライアントと両方で情報を突き合わせて状況を判断しやすい。

 結果は、成功! 320MHz幅の5764Mbpsでのリンクを確認できた。

320MHz幅の5764Mbpsでリンクした!
アクセスポイント側の表示でも確認
netshの結果

 いやあ、ホッとした。理論上は大丈夫でも、実際につないでみるとダメということが何度もあったので、今回もドキドキだったが、これでようやくWi-Fi 7の検証環境が整ったことになる。

 ついでなので、簡単にベンチマークテストも実施してみた。10Gbpsの有線でつないでPCに対して3mほどの近距離でiPerf3を実行した結果は「3.67Gbps」と3Gbpsオーバーを実現できた。一瞬、4Gbps越えの値が出ることもあった。

 すばらしい。3Gbps越えは、これまでWi-Fi 7のアクセスポイントを2台利用したアクセスポイント間通信でしか見たことがなかったが、PCからでも気軽に3Gbps越えで通信できるようになった。

iPerf3の結果。上りの速度は3.31Gbps
下りの速度は3.67Gbps

 ちなみにMLOは、Intel BE201側が「eMLSR」のみの対応となるため、速度の上乗せは期待できない。複数帯域で接続できるが、データ転送時はどれか1つの帯域が選択されるため、2.4GHz、5GHz、6GHzの単独で接続した場合と上限の速度は同じになる。

 実際、以下のように2.4GHz+6GHzで5764Mbps、5GHz+6GHzで5764Mbpsと、6GHz単独接続時と同じ速度表示となった。

2.4GHz+6GHzでも5764Mbps
5GHz+6GHzでも5764Mbps

Wi-Fi 7の検証環境が整った

 以上、今回は筆者のWi-Fi 7対応PC購入記をお届けした。

 320MHz幅の接続ができるようになるまで、かなりの期間と費用がかかったが、ようやくWi-Fi 7の検証環境が整ったことになる。これで、安心してWi-Fi 7対応ルーターをレビューすることができそうだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。