清水理史の「イニシャルB」

中国発の無料NAS OS「fnOS」、現時点の実用には「ローカルファースト」の壁があるものの、高い完成度に感心
2026年6月29日 06:00
昨年、一部マニアの間で話題になっていた無料のNAS OS「fnOS」を試してみた。市販のNAS OSに勝るとも劣らない、モダンで多機能なものになっており、非常に完成度が高い。
しかし、この製品の最大の問題は日本では一部の機能がどうしても使えないことだ。この時代にあえてグローバル化を後回しにし、ローカルファーストな発想で製品の完成度と市場の評価を高める手法は非常に興味深い。
現代的な多機能NASを無料で
fnOSは、「飞牛(Fei niu)」というブランドが展開している無料のNAS向けOSだ。中国の新興企業「广州铁刃智造技术有限公司」が開発しており、以下のウェブサイトから誰でもダウンロードしてインストールできる。
▼fnOSのダウンロード
飞牛 fnOS
ウェブページを見るだけでもわかるが、デスクトップを模したモダンなデザイン、多くの機能と追加可能なアプリ、スマートフォン連携、AI機能なども搭載した本格的なNAS OSとなっており、とても無料とは思えない完成度となっている。
現状、人気となっているQNAP、Synology、UGREEN、TerraMasterと肩を並べるような機能のNASを、手元の余っているPCで実現できてしまうのだから、そのインパクトは大きい。
現状、余っているPCなどを活用して無料でNASを構築しようとすると、OSではTrueNASが有力な選択肢だが、これはエンタープライズ発想の製品でクラシカルなデザインに加え、機能的にも難しく、正直、誰にでもおすすめできるものとは言えない。かといって、CasaOSなどの手軽なものは、機能的に物足りず、現状は「コレ」という選択肢がない状況になっている。
ユーザーが望んでいるのは、人気のNASのようなモダンで多機能な環境を無料で手に入れることだが、そのニーズに応えたのが、まさに今回のfnOSということになる。
言語の壁を超えるのは簡単
ということで、今回は、BeelinkのME mini(Intel N150、M.2×6、2.5GbE×2)に実際にインストールしてみた。
前掲の公式サイトからISOファイルをダウンロードし、書き込みツール(筆者はRaspberry Pi Imagerを利用)を利用してインストール用のUSBメモリを作成。PCに装着して起動後、画面の指示に従ってインストールするだけと簡単だ。
インストール後、同じネットワークのPCから、画面に表示されたIPアドレスにブラウザーでアクセスすると、デスクトップスタイルの管理画面が表示されるので、ストレージを構成したり、使いたい機能のアプリを追加したりすればいい。
今回は、前述したようにBeelinkのME miniに6枚のM.2 NVMe SSD(全て500GB)を搭載した状態でインストールしたが、ストレージの構成でBtrfs、ZFS、ext4の3種類の形式を選択できたうえ、RAID 0/1/5/6/10の構成も自由に選択できた。今回は全てSSDで構成したので使わなかったが、SSDキャッシュも構成可能だ。
ファイル共有や同期、Dockerや仮想マシンの利用、AIによる画像認識なども可能で、全ての機能を検証できたわけではないが、おそらく市販のNASでできることは、ほぼ実現可能と言えそうだ。
と、ここまでサラリと書いたが、これらの手順は、本来だと全て中国語でのオペレーションとなる。「下载」からダウンロードし、「存储空间」でストレージを構成しなければならない。漢字から何となく想像はできるので、欧米の人ほど困らないが、なかなか判断が難しいケースもある。
しかし、このあたりの言語の問題は、さほど大きな障壁ではない。ウェブインターフェースなので、ブラウザーの翻訳機能を使えば、全てではないし、完璧でもないが、ほとんどの用語を理解できる。最初はとっつきにくいかもしれないが、これなら言葉の壁で悩むことはないと実感した。
超えられないサービス地域の壁
ということで、しばらく自宅のNASとして運用しようと考えていたのだが、世の中、そううまくはいかない。
fnOSには、外部からの接続を簡単に行うためのFN Connectというサービスが提供されている。最近のNASで一般的なクラウドでの名前解決や中間サーバーを利用した中継などを提供するサービスだ。
このサービスを利用するには、携帯電話によるユーザー登録が必要なのだが、この番号に日本の携帯電話の番号を登録できない。中国向けにのみ提供されており、日本からは利用できないのだ。
また、外出先からNASのデータにアクセスしたり、写真のバックアップをしたりできるスマートフォン向けのアプリも提供されているのだが、このアプリもダウンロードできない。ダウンロード用のリンクをたどっても、AppStoreでアプリが見つからない。中国でのみ提供されているわけだ。
なので、家庭内でのファイル共有やバックアップ、AIを使った写真整理、OpenClawなどの先進的なアプリなど、ローカルで使う分には問題ないのだが、スマートフォン、外出先での利用はあきらめるしかない。
こうした機能も、将来的に中国以外でも利用可能になると考えられるが、このあたりは冒頭で触れたローカルファーストの戦略が大きく関係する。公式ドキュメント(ヘルプセンター)に掲載されている有料化に関する記述を見ると、このあたりの方針が示されている。
▼ヘルプセンター
如何安装和初始化飞牛 fnOS?
一部を翻訳して引用すると「初期段階では、マーケティング予算の大部分を製品の改良と反復に費やします」「fnOS(中国語版)を国内の全ユーザーに無料で提供します。既存機能は無料で、生涯無料利用が提供されます」と、これまでに触れた製品としての完成度の高さ、およびローカルファーストによる無料モデルの維持の方針がはっきりと語られている。
しかし、その一方で、ここには「今後、海外市場向けの国際多言語版を開発し、手数料を課す予定です」という記述もある。
ソフトウェアを購入するのか、サブスクリプションになるのか、転送機能などの機能ごとの課金になるのかなど、具体的な内容はこれから決まると考えられるが、ユーザーは何らかのかたちで料金を支払って利用することになりそうだ。
なので、最終的には、その金額次第と言えそうだが、それでも手元で余っているPCを、市販製品と互角のNASとして使えるようになるのは非常に魅力的だ。ぜひとも、安めに設定して欲しいものだ。
ローカルファーストは日本の先行事例も
もしかすると、こうした同社の方針を否定的に考える人もいるかもしれないが、個人的には、面白い方法なので、ぜひ日本のメーカーにもまねをして欲しいと感じた。
もちろん、同様の事例は過去にもあった。有名なのは、任天堂のNintendo Switch 2だ。2025年6月に同製品の発売が開始されたとき、日本語・国内専用モデルが5万9980円、多言語版が6万9980円と、国内版の方が安い価格で販売された。為替の影響などの理由も含まれているが、であれば国内版も高くするという選択肢もあったため、ローカルファーストの意味合いもあったのではないかと推測できる。この恩恵を受けるわれわれは特に何も感じなかったが、おそらく「うらやましい」と感じた海外ユーザーもいたことだろう。
なので、今後、こうした戦略は、難しいが面白いと思う。もちろん、グローバルで通用する汎用性の高さと高い完成度が不可欠だが、海外での有料化を想定しつつ、国内ユーザーにいち早く、無料の製品を提供するというのはアリなのかもしれない。
使ってみるのも面白い
一応、パフォーマンスもチェックしてみたが、これはハードウェアに依存するため何とも言えない。今回は、2.5Gbps接続、SSD×6のRAID 5構成で、以下のようにシーケンシャルで2.5Gbpsのネットワークの上限となる高い速度を実現できた。リードはランダムの性能も高いが、ライトのSEQ1M Q1T1が若干下がった。ただし、実用上はまったく不満はない印象だ。
ということで、機能や性能も優秀なNAS OSと言えそうだ。前述した2つのサービス地域の壁のうち、アプリは現状どうしようもないが、リモートアクセスはIPv6+Dynamic DNSなどで代替もできるので、実際に運用するのもありだ。話題のOpenClawもインストールできるので、エージェントの実行環境として活用する手もある。面白い製品なので、余っているPCがあれば試してみることをおすすめする。















