ワーケーション百景

第6回:ポップアップテントとポータブル電源で大自然テレワークを体当たりレポート

クルマに装着できるテント「CARSULE」でテレワークしたら快適過ぎて困った件

「CARSULE」でテレワークすれば仕事がはかどる?

 なんて爽やかな朝なのか。都会の喧噪から離れ、筆者は今、緑あふれる森の中で、鳥のさえずりと小川の流れをバックグランドにこの原稿を書いている。クルマのバックドアに装着して使えるポップアップテント「CARSULE」(カースル、通常価格5万3200円)のおかげだ。

 2021年7月に本誌ニュース記事でも紹介したCARSULEは、そのユニークな使い方と、テレワークも快適にこなせそうなキューブ型の広々とした空間が話題を集めた。

 筆者もCARSULEを見た瞬間、外の新鮮な空気を吸いながら仕事をすれば、どんなにはかどることか……と夢想した。ずっと在宅勤務で引きこもっていては、気分が滅入ってしまいそうになることもある。自宅から離れたところへ行って、CARSULEの中で快適にテレワークしてみたい……。そう思っていたら、メーカーのHNY Trading株式会社からお借りすることができたので、さっそく人里離れた山奥へと出かけて試してみることにしたのだ。

持ち運びは小さく折りたたんで、開くと巨大なキューブ型テントに

 改めてCARSULEについて簡単に紹介すると、これは跳ね上げ式のバックドア(いわゆるハッチバック)を持つクルマと一緒に使うことができる、キューブ型の組み立て式テントだ。

 使用可能なクルマのサイズなどには条件があるので、購入時には必ずチェックしておきたい。が、あとで写真も交えて紹介する通り、必ずクルマと一緒に使用しなければならないわけではない。通常のテントのように単独で使うこともできる。

 持ち運び時の折りたたんだ状態では、直径約86cm、厚さ約13cmの専用キャリーバッグに(一部付属品を除いて)一式収まるサイズ。しかし開いて組み立てると、高さ2.0×幅1.8×奥行き2.0mという巨大なテントができあがる、というのがCARSULEの特徴でもある。

キャリーバッグに収納した状態
持ち運んでいるときはこんな感じ。参考までに言うと、筆者の身長は177cm

 ただ、クルマと一緒に使う場合は、当然ながらクルマの後部にその分のスペースが必要になるので、広めの駐車スペースがほしいところ。実際、筆者宅の駐車スペースでは全く入りきらなかった。だからこそ、十分な広さがある山に向かうことにしたわけだ。

 ちなみに直径約86cmのバッグは、最終形のテントサイズから考えるとたしかに劇的なコンパクトさではある。けれども、重量は実測10kg超となかなかの重さ。4mm厚のフェルト地のマットも1枚付属しているが、これはバッグには入らず、けっこうかさばる。

 また、こういったテントを持ち運ぶときは、だいたいはキャンプ用具や宿泊用アイテムなども同時に運搬するパターンが多いはず。特に今回の目的である「テレワーク」となると、テーブルや椅子も別途必要だ。ラゲッジスペースが狭い車種だと、CARSULEが載らないということはないにしても、他の荷物も含めるとわりとギリギリ満載な感じになる可能性があるので注意しておきたい。

フェルト地のマット(左)も付属。キャリーバッグには入らないので別で運ぶ
クルマのラゲッジスペースに入れたところ。キャリーバッグは寝かせた状態で奥行きギリギリ

 CARSULEの同梱物は、テント本体と、天井・床の梁となって支えるための骨組み、雨から守る屋根代わりのシート、安定して自立させたいときのペグとロープ、補修用テープなど。先述したようにフェルト地のマットも付属する。1人で組み立てることもできるが、開いたときのサイズが大きいこともあるので、2人で協力した方が効率良くセットアップできることは間違いない。

キャリーバッグに入っている同梱物

早ければ5分で完成……らしいけれど、実際にかかった時間は!?

 現地でさっそく組み立てる前に、まずは床となる場所選びから。一般的なテントと同じように、できるだけ平らで、多少の凹凸があるときは固すぎない地面になっているところを選びたい。芝生や砂浜だとベストかもしれないが、そう都合のいい場所ばかりとは限らないので、凹凸を和らげることができる付属マットはやはり必須。地面からの湿気などを防げるレジャーシートを用意しておくのもおすすめだ。

ここをキャンプ地とする
まずはレジャーシートを敷いて、その上に今回2枚お借りしたフェルト地のマットを重ねてみた。あとで知ったのだが、テント内部に敷くのが正解らしい(スミマセン)

 場所を決めたら、テント本体を取り出す。柔軟性のあるフレームを持つ本体が丸まったような形で収納されている。言ってみれば、撮影用の折りたたみ式レフ板と同じ仕組み。ゆっくり広げて寝かせると、一気に2.0×1.8mほどの面積になる。

テント本体を広げたところ

 その後の組み立て工程では、さらに1.5倍くらいのスペースは占有することになるので、クルマの後方に十分なスペースがあるかどうか再度確認しておこう。最終的にクルマの後部にぴったりテントをくっつけて固定することになるが、位置調整は組み立て後でもできるので、この時点で正確に位置決めしておく必要はない。

 次に、寝かせているテントの重なっている上側(組み立て後は側面になる部分)を引っぱってずらし、梁となる骨組みを床面と天井面の計4カ所に差し込んでいく。続いてテントを一気に持ち上げ、差し込んだ骨組みそれぞれの両端を、テント本体に取り付けられている固定具に差し込めば、ほぼ自立が可能な状態となる。

寝かせているテントの上になっている側を(写真で言うと)手前側にずらす
床になる面を持ち上げて、2本分用意されているスリットに骨組みを1本ずつ入れていく
天井側の面にも同じように入れていく
全体を立たせて、骨組みの両端をフレームに取り付けられている固定具に差し込……もうとしているがなかなかうまくいかないの図
なんとか形になってきたが、まだまだ悪戦苦闘中。せめて2人で協力して組み立てていれば、もっと楽だった

 続いて、テント全体をクルマに近づけてバックドアを覆う形にし、テント内部にぶら下がっているベルトをバックドアに回して固定する。筆者のクルマ(ホンダ シビック ハッチバック FK7)では、バックドアのサイズが小さいためか締め付けて固定するのが難しかったので、バックドア内側の取っ手のようになっている部分に通して固定する形にした。

テント全体をクルマ側に寄せ、内部のベルトでバックドアを締め付ける。筆者のクルマでは難しかったので、取っ手部分を通して固定した

 テント内部ではさらに、四隅にフックを引っ掛けてヒモを橋渡しし、さらに安定して自立できるようにする。それから再びテント外に出て、前方(クルマ後部に面している方)のスカート状になっているところを伸ばし、クルマとの隙間を覆い隠す。ここは付属のマグネットを使うことで隙間をぴったり閉じることができるようになっている。以上で基本的な組み立ては完了だ。

再び外側に回り、カバーを広げてマグネットで隙間を埋める
こんな感じ
真後ろから見たところ。とりあえず使える状態にはなった

 このままでも使えるが、より安定感が欲しいとき、CARSULEを単独で使いたいとき、あるいは降雨が予想されるようなときは、プラスアルファの手順が必要になる。

 まず、安定させたいときや単独で使う場合は、付属のペグとロープを使って4方向から引っ張るようにして固定(これも一般的なテントと同じような手順だろう)。雨を防ぎたいときはシートを被せてロープで結んで固定し、骨組み用ポールが入っていたケースをテント内部の天井部分に立てて突っ張らせればOKだ(小屋裏を作るようなイメージ)。

ロープとペグでより安定させることができる
シートを被せ、ペグと結んでいるロープを結びつけて屋根に。多少の雨なら防ぐことができるらしい
最後に骨組み用のポールが入っていたケースを内部の天井に立てて完成

 今回は1人で組み立ててみたところ、完成まで1時間以上かかった。安全に、効率良く組み立てるためにも、人手があるならやはり2人以上で作業したほうがいい。メーカーによると慣れれば5分程度で完成するそうだが、それには相当の熟練が必要になる予感……。

できあがりの全体像
筆者が悪戦苦闘しながら組み立てる様子を早回しで(2分17秒)

1人でも、2人でも、自然と一体になってテレワーク

 組み立て後の内部空間は、外側から見るよりも広く感じ、窮屈さはない。テントの左右と後部の3面は、外側のジッパーを開けることでメッシュ地の窓にすることができ、そのメッシュ窓自体もジッパーで開閉できるようになっている。メッシュは目がそこそこ細かく、蚊などの虫が入り込んでくることはまずなさそうで、それでいて風通しはいい。暑い日にはメッシュ窓にしておくのがデフォルトになるだろう。

写真だとわかりにくいが、かなり広々としている
窓部分は完全に閉じることができる
外側のジッパーで窓を開き、丸めて下側に固定
後部の窓は上側に固定
メッシュ窓の目はわりと細かく、蚊は入りそうにない

 というわけで、内部にアウトドア用のテーブルやチェアを置いて、PCもセットしてデスクワークしてみたところ、1人なら余裕で伸び伸び仕事ができた。少しレイアウトを工夫すれば2人でも問題ない。メッシュ地の窓を通して、森の緑に囲まれていることを常に実感する。

まずは1人分のテレワーク環境を整えてみた

 大きな窓で視界が広く確保されていて、閉じ込められている感覚はない。普通に立ち上がっても頭がつっかえたりしない、2mの高さがあることも関係しているだろう。

 都会の自宅では絶対に得られない開放感を味わいながらのテレワーク。標高が高く涼しい場所だったこともあり、ほどよい微風がCARSULE内を通り抜ける。エアコンのような人工的なものではない、爽やかな空気の中、自然と一体となってそこにいるような気分。つまるところ、最高だ。

最高やん
レイアウトを工夫すれば2人同時にデスクワークできる
窓を閉じているときはもちろん暗いので、明かりを点けたい

 ところで組み立てたあとになって、「クルマで買い出しに行きたい」ということになる可能性もあるが、そのときにCARSULEをいちいち片付ける必要はない。スカート部を留めているマグネットと、バックドアを締め付けているベルトを外すだけでいい。その状態でもきちんと自立するように、テントをペグとロープで固定しておきたいところ。戻ってきたあと、再度クルマと合体させるときは、クルマの排気ガスがテント内に入らないこと、排気部分が高熱になっていないこと、といった点に注意しよう。

マグネットとバックドアに固定しているベルトを外せば、CARSULEはそのままでクルマ移動できる

 課題と言えそうなのは、夏場の炎天下だと、快適に使うには工夫が必要なところだろうか。涼しい森の中でも、窓を閉め切ればすぐに蒸し暑くなったくらいだ。CARSULEに限らずテント全般に言えることだけれど、強烈な日差しの下ではサウナ状態になること間違いなしで、少なくとも扇風機などの冷房器具と一緒に使いたくなる。

課題は電源確保。できればポータブル電源を活用したい

 そういったことを考えると、CARSULEでより快適に過ごすためには、いかに電源を確保するかも重要となる。PCを使ってCARSULE内で仕事をするにしても、長時間の利用が想定されるなら、やはり電源は必須だ。

 自宅の駐車場や庭なら延長ケーブルで対応できそうだが、そうでなければ災害対応も考えられている大容量の電力供給機能を備えたEV(電気自動車)や、発電機などの外部電源機器を用意したくなる。クルマのエンジンをかけて車内電源を使うのは、排気ガスがテント内にこもったり、火災になる恐れがあるため避けたい。

 といっても、たとえばガソリン発電機は、サイズ・重量・環境負荷を考えると、今回のようなシーンでは使いにくい。それこそ、ここは最近流行のポータブル電源の出番ではないだろうか。

 そんなわけで、すでにいくつかの写真に写り込んでいる通り、同時に「Jackery ポータブル電源 708」もお借りして使ってみた。最大出力500Wで、2つのAC出力と1つのDC出力、3つのUSB出力を備える。片手で軽々運べるコンパクトボディながら、ノートPCなら約12回、スマートフォンなら約68回も充電可能な、大容量ポータブル電源だ。

最大500W出力の「Jackery ポータブル電源 708」

 これであれば、容量から見て、2人で同時にノートPCとスマートフォンを使ったとしても数日間のデスクワークをこなせるだろう。オプション品のソーラーパネルも用意すれば、ポータブル電源自体もクリーンエネルギーで充電できる。

 今回は森の中ということもあってそもそも日差しがほとんど届かず、充電できるほどの発電量は得られなかったのが残念ではあるけれど、ポータブル電源本体のみで十分に役立ってくれた。

オプションのソーラーパネル「Jackery SolarSaga 100」。出力は最大100W

 CARSULEは想像以上に快適で、使い勝手も良かったが、問題もあった。「めちゃくちゃ仕事がはかどった!」という結論にしたかったのに、あまりに快適すぎる環境だったため、反対に「仕事なんかしてられっか!」という気分になってしまったことだ。結局この記事は冒頭部分しか書けなかった。

 これはCARSULEが直接の原因ではないが、テント内に広々とした空間が広がり、周囲の自然がしっかり感じられる狭苦しさのない3面メッシュ窓というCARSULEの利点も遠因ではないか。なんとなく仕事のペースがゆっくりになるし、子供たちに「遊びに行こう!」と言われれば、この自然を目の前にしてあらがえるわけがない。

3面メッシュ窓の開放感がとにかく素晴らしい

 「仕事はできるが、仕事にならない」ということが判明した初めてのCARSULE体験。特に家族みんなで出かけた先で使うと、一緒に遊びたい気持ちがどうしても強くなるので、仕事にならない率が高まる。ふらっと1人で出かけ、景色のいい場所にCARSULEを立て、新鮮な空気を吸いながら仕事する、という形なら、生産性はうなぎ登りになるはずなので、いつかは1人で試してみたいなあ……。