インタビュー

確定申告前に押さえたい! 自分ピッタリの業務ソフトの選び方

青色申告ソフトと会計ソフトはどう違う? 事業の段階別「ぴったりな業務ソフト」とは?

起業でも副業でも、避けて通れないバックオフィス業務。その手間を削減できる「業務ソフト」だが、「どれを選んだらいいかわからない」という人も多いだろう。今回は、事業の段階別に「使うと便利なソフト」を聞いてみた。

 2016年から本格的に動き出した「働き方改革」。大手企業でも、リモートワークを導入したり、副業をOKにしたりと時代が動きつつある。早速、副業で収入をアップしている人も続々増えている。さらに、昨今のスタートアップブームの中、起業する人も多い。

 そこで必要になるのが、「見積」「請求」「帳簿付け」といった業務。会社勤めでは、バックオフィス部門の人たちが処理してくれるが、副業や起業では、避けては通れない。実際、そろそろ「青色申告」というキーワードが気になる個人事業主も多いだろう。

 この手の業務は、専用のソフトやサービスで効率化できるが、不慣れな業務だけに「何を選んだらいいかわからない」「今だけを考えて選んでいいものだろうか?」と不安に思う人も多いだろう。そこで今回は、「実売価格数千円から」の手ごろな価格の業務ソフト「ツカエル」シリーズを例に、業務ソフトの選び方やポイントを聞いてみた。

 お伺いしたのは、同シリーズの開発・発売元であるビズソフト株式会社の開発部、針ヶ谷氏と遠山氏だ。

 業務の内容や事業の発展段階別に、どういったソフトを選択し、あるいは乗り換えていけばよいのかなど、様々なポイントを聞いてみたので、参考にしてほしい。

1:個人がまず考えるべき「青色申告」「簿記の知識なしでもできると楽」

――最初に、御社の業務について簡単に紹介してください。

ビズソフト株式会社開発部の針ヶ谷氏

 弊社は、受託と業務用パッケージのシステムを作成しています。受託業務では人事労務系のウェブシステムやECサイトを作成しており、業務用パッケージでは、「ツカエル」シリーズ6種類(会計系の「会計」「青色申告」「現金・預金出納帳」と、経理系の「経理」「見積・納品・請求書 匠」「見積・納品・請求書」)のWindowsソフトと、クラウドサービスの「ツカエル見積・請求書オンライン」を提供しています。

――個人が副業や起業を始めた場合、何が必要になりますか?

 起業はもちろん、副業を始めた場合でも、ある程度の売り上げを超えると確定申告が必要になります。

 白色と青色の2種類がありますが、現在はどちらも記帳が必要です。それであれば、65万円の控除をはじめ、配偶者など、生計をともにする家族の給与が経費に出来るといったメリットの大きい、青色申告がお勧めです。

 確定申告では所得税の申告をするのですが、記帳も必要です。この記帳と申告をサポートするのが、「ツカエル青色申告 18 +確定申告」です。

●こだわりは「簡単さ」、入力だけでなく修正も…

――なぜ記帳をするのにソフトが必要になるのですか?

 帳簿に記帳するには、簿記の知識が必要です。しかし、起業したばかり、副業を始めたばかりの方だと、簿記がよく分からないことがあります。国税庁のウェブページでも申告書の書き方はあっても、簿記のやり方は書いていません。基本自分で勉強してください、というスタンスなんです。そこで、弊社では簿記の知識があまりなくても、簡単に記帳できるような機能を用意しています。

――どのくらい簡単になっているのですか?

 青色申告で65万円の控除を受けるには、複式簿記で記帳する必要があります。弊社の「かんたん取引帳」という機能では、金額と日付とともに普段取引しているときに出てくるキーワードを選ぶことで、自動的に複式簿記に展開して仕訳を作成します。借方とか貸方といった複式簿記の内容が画面に出てこないので、簿記の知識がなくても簡単に入力できるようになっているのです。

「ツカエル青色申告 18」の「かんたん取引帳」画面

――簡単なのは取引の入力のみですか?

 弊社の強みは、入力した項目を訂正する際も、元の画面で修正できる点です。たくさんのレシートなどを入力していると、誰でもミスしてしまいます。最終的に合計を見たりしてミスに気が付き、内容を修正することはよくあるのです。しかし、訂正するときに仕訳の状態になっていると、簿記の知識がないとどうしようもありません。そこで、弊社では入力した画面そのままで、簿記を意識しなくても修正できるようになっています。

 ミスを修正するというのは、機能としては伝えにくいのですが、実際作業しているとよくあることで、皆さんが困っているところでもあります。「かんたん取引帳」という機能名も、「かんたん入力」といった名前ではなく、入力だけでなく、訂正もできるということで「取引帳」としました。

――青色申告のときも簡単にできるのですか?

 青色申告では決算書を作成しなければなりません。「ツカエル青色申告 18 +確定申告」では必要な帳簿をワンクリックでまとめて印刷できます。もちろん、平成29年分の確定申告にも対応しています(注:ダウンロードでの提供になるとのこと)。

 決算書の画面に出ている数字から、問題のある帳簿にたどり着けるというのも強みです。最初は搭載していなかった機能なのですが、ユーザーから問い合わせが来たのです。決算書の数字を見て、取引の入力を間違えたことに気が付く方がたくさんいます。そんなときは試算表を見てもらうのですが、勘定科目が普通に出てきます。ユーザーは「かんたん取引帳」で入力しているので、どの勘定科目になっているのか分からないのです。そこで、決算書から帳簿にたどり着けるようにして、手軽に訂正できるようにしました。

「ツカエル青色申告 18」の所得税確定申告書作成画面

――操作が分からなくなったら問い合わせできるのですね?

 はい、操作で分からないことがありましたら、サポートさせていただきます。こちらは「基本使用サービス」で対応しています。

 ダウンロード版ではウェブからお問い合わせいただけますし、パッケージ版ですと、ウェブに加えてお電話での問い合わせにも対応いたします。

「あんしんデータお預かりサービス」の概要

――インストール型のソフトだとデータを失ってしまうこともあるのでは?

 「基本使用サービス」の中に、「あんしんデータお預かりサービス」をご用意しています。最初に設定すれば、ソフトを終了させたときに自動的にクラウドに保存してくれます。万一、PCが壊れた場合でも、クラウドからバックファイルを復元することができます。

――パッケージ版とダウンロード版の違いはなんですか?

 「ツカエル青色申告18 +確定申告」のパッケージ版は7400円(税別)、ダウンロード版は、5000円(税別)となっています。

 パッケージ版は、1パッケージに2ライセンス入っており、加えて6ヶ月の基本使用サービスが無償でついていますが、ダウンロード版は1ライセンス単位での販売で、こちらは12ヶ月の基本使用サービスを含んでいます。

 また、パッケージ版では「基本使用サービス」の期間が終了した場合、そのままお使いいただくことも可能ですが、ダウンロード版は12ヶ月のライセンスが切れると起動できなくなります。

 先に触れた、サポートの違いも考えると、自分で調べて解決できる人はダウンロード版がいいと思います。必要なときに即利用できますし、初期コストを抑えることもできます。「何かあったときに電話で相談したい」という方はパッケージ版をお勧めします。

2:取引が増えたら「請求書」や「見積書」さらに拡大したら資金繰り確認もできる「経理」を

――事業が少し大きくなってきたら次は何が必要ですか?

ビズソフト株式会社開発部の遠山氏

 経理処理を行うソフトが必要になります。まずは、請求書を手書きではなく、印刷して送りたい、というニーズが出ると思います。その場合は、「ツカエル見積・納品・請求書 18」がお勧めです。

 「ツカエル見積・納品・請求書 18」のウリはコストパフォーマンスです。メーカー希望小売価格は4000円(パッケージ版・税別)/3000円(ダウンロード版・税別)と低価格帯の製品ですが、それでもなるべくいろいろなことができるようにしています。請求書を出したり帳票を印刷したりするのはもちろん、売掛の管理もできます。例えば、請求書を作成した段階で売り上げの見込みを立てられ、実際に入金されたら、その管理も可能です。

 さらに、1ヶ月分を合算した合計請求書にも対応しています。同じ顧客への複数の請求書をまとめる機能で、建設業などで多く使われています。この機能を搭載している低価格帯のソフトはあまりないと思います。

●「請求書と同じ画面で作業を……」

――「ツカエル見積・納品・請求書 18」のこだわりポイントはどこですか?

 操作画面のデザインにこだわっています。できるだけ実際の請求書と同じレイアウトで作業できるようにしました。

 さらに、ユーザーの手間を省くような機能も用意しています。例えば、通常は取引先をマスターに登録してから請求書を作成するのですが、「ツカエル見積・納品・請求書 18」では、請求書の作成画面から取引先を登録しつつ作業を進められるのです。なるべく行ったり来たりをしなくて済むように心掛けています。

「ツカエル見積・納品・請求書 18」の見積書作成画面

――人を雇うようになったら何が必要になりますか?

 給与や賞与を出すことになるので、「ツカエル見積・納品・請求書 18 匠」をお勧めします。「ツカエル見積・納品・請求書 18」のすべての機能に加えて、給与明細と賞与明細の作成機能を利用できます。

 「ツカエル見積・納品・請求書 18 匠」は、印刷できる帳票が増えています。合計請求書を一括登録できる機能も付いていますので、多数の請求書を発行するユーザーに活用していただいています。また、建設業のユーザー様が多く使っていらっしゃる、内訳明細書や原価計算書もサポートしています。

請求書の例
給与明細書の例
内訳明細書の例
ツカエル経理 18」パッケージ

――「ツカエル経理 18」はさらに上位版のソフトなのですね?

 はい。「ツカエル経理 18」は「ツカエル見積・納品・請求書 18 匠」のすべての機能に加えて、帳簿機能を搭載しています。現金出納帳や預金通帳を入力管理することで、請求書などの販売管理と給与のデータと連動し、資金繰りを確認することもできます。

 人を雇うようになると、請求書を発行して黒字なのだから問題なし、というわけにはいきません。いつ、いくら入金されるのかを把握しておかないと、給料を支払えなくなる可能性もあります。「ツカエル経理 18」では、3ヶ月先までの資金繰りを予測してくれるので安心してお使いいただけます。

 また、オプション(4800円(税別)/年)とはなりますが、「給与計算オプション」を契約していただければ、厚生年金や健康保険、所得税の計算も自動的に行えるので手間がかかりません。

――とてもいろいろできるのですね。

 「ツカエル経理 18」の設計コンセプトは、小規模の会社の社長がこの1本で請求書や給与明細の作成から、資金繰りまで全部できるようにするというものです。もともとは「社長の経理ナビ」という名前の製品でした。

 一般的には、販売管理や給与計算、帳簿付けといった機能はばらばらに販売されているものですが、「ツカエル経理 18」は1本でトータルに管理しています。それだけの機能を、パッケージ版が1万6000円(税別)、ダウンロード版で1万円(税別)という低価格でできるというのが強みです。

――どうしてそこまで安くできるのですか?

 難しい質問ですね(笑)。1つには、コストダウンを心掛けている点が挙げられます。例えば、弊社の製品には紙のマニュアルは付属していません。もちろん、画面のデザインは分かりやすいように作成しておりますし、ウェブ上には詳細なヘルプも用意しています。その代わり、紙のマニュアルを省くことでコストを削減しているのです。

――経理系のソフトは上位互換のようですがデータは移行できるのですか?

 はい、移行というよりも、そもそも同じ形式のフィルですので、そのまま読み込めます。ソフト自体は、インストールし直していただく必要がありますが、それまで入力したデータは引き続き利用できます。もちろん、経理系だけでなく、会計系も同じ形式のファイルですので「ツカエル現金・預金出納帳 18」のデータを「ツカエル会計 18」で読み込めます。

3:法人化したら「会計」へ

――法人にしたら何が必要になりますか?

 法人の会計には「ツカエル会計 18」がお勧めです。

 「ツカエル青色申告 18 +確定申告」では法人の決算ができないためです。逆に、「ツカエル会計 18」で個人の青色申告をすることはできます。もちろん「ツカエル青色申告 18 +確定申告」で作成していたデータは、「ツカエル会計 18」に引き継げます。

「ツカエル会計 18」のキャッシュ・フロー計算書画面。この画面は、法人データを使った場合に表示できるもの。

――「ツカエル会計 18」でも簡単に入力できるのですか?

ツカエル会計 18」パッケージ

 「ツカエル会計 18」でも「かんたん取引帳」があるので、手軽に経費を入力できます。会計ソフトは、簿記の知識を持っている人が使うこともあるので、伝票で入力することもできます。

 ただ、お客様とのやりとりの中で知ったのですが、簿記を分かっている人でも「かんたん取引帳」で入力していることがあるのです。正直、私もなんでだろう?と思ったのですが、日付と摘要と金額の3つだけ入れればいいので、最初の登録が楽なんだそうです。その後、元帳や試算表を見るとのことで、「かんたん取引帳」から仕訳帳に移動したいと言われました。最初、仕訳帳を知らない人が「かんたん取引帳」を使うのですから、直接移動する機能は頭にありませんでした。もちろん、お客様からの要望をいただき、ニーズがあることが分かったのですぐに搭載しました。

――どのくらいの規模の会社まで対応できるのですか?

 入力する金額の桁数次第ですが、ある程度の規模の会社でしたら使っていただけると思います。実際、100人以上の会社のユーザーさんもいらっしゃいます。ただ、平均的には10人前後の規模の会社さんに多く使っていただいています。いわゆる中小企業といった規模がほとんどです。

――会社だと税理士に申告を依頼することも多いと思いますが?

 税理士の先生が弊社のソフトに対応している場合は、データを渡すだけで済みます。パッケージ版であれば、ライセンスが2本付いているので、1本を渡すといったことも可能です。そもそも、元はそのようなコンセプトでパッケージ版に2本のライセンスを付けました。

 弊社のソフトは、NTTデータの税務申告ソリューション「達人」シリーズと連動しており、そちらを経由して税理士の先生に決算書を作成していただくことも可能です。

――決算を丸ごと税理士にお願いするのであれば、会計ソフトでなくてもいい?

 決算は税理士の先生に全部お任せする、というのであれば「ツカエル現金・預金出納帳 18」という製品があります。記帳に特化したソフトで、価格は4000円(パッケージ版・税別)と3000円(ダウンロード版・税別)と低価格になっています。

ユーザーの使い勝手を追求して、ときにはケンカも

――開発で苦労した点を教えてください。

 簡単に入力してもらう、という機能の開発が大変でした。エンジニアはキーボード操作に慣れているので普通に入力できるのですが、お客様は慣れていません。そこで、画面を作っては、社内の人たちに見てもらい、「難しい」と言われながら何度も改良を重ねました。ここだけでも2~3ヶ月かかりましたね。

 例えば、1対1の仕訳を入れるのは簡単ですが、口座から引き落とされると手数料を引かれたりします。本来、その手数料は別に入れなければいけないのですが、それだと分かりにくい。なんとか一緒に入れてもらいたいが、簿記は意識させたくない、と。結局、引き算するようなかたちで見せるように画面にこだわりました。(針ヶ谷氏)

――どんなところにこだわって開発しているのですか?

 私はもともと評価をする部署から開発に来たので、品質はけっこう気にする方です。物づくりの中で、少しでもお客様が使いやすくなればということで限界まで修正を加えます。ときに、エンジニアとケンカになるくらい、議論を交わすこともあります。

 こだわっているのはスピードです。ユーザーのPCにインストールするクライアントプログラムなので、操作感がよくなければいけません。レスポンスがネックになるクラウドサービスよりも快適なのはもちろん、他社のクライアントプログラムと比べても高速に動作することを目指しています。(遠山氏)

――最後に、ユーザーやこれからユーザーになる人へ一言ください。

 『お客様の想像を超えたソフトウェアを「創造」する』という弊社の企業理念に基づき、ソフトを使う人の立場に立って、より便利で、使いやすい製品を提供し、お客様に喜んでいただくことが私たちの喜びだと思っています。体験版やフリー版もございますので、ぜひ使っていただければ幸いです。

(協力:ビズソフト株式会社)