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2021年に流行しそうな働き方、1位は「地方在住型ワーク」~地方にいながら、東京の企業で稼げる時代に
ランサーズ、働き方のトレンドランキング発表
2020年12月28日 15:15
インターネット上で企業がフリーランスに仕事の外注を行う「クラウドソーシング」の仕事依頼サイト「ランサーズ」を運営するランサーズ株式会社が15日、独自に集計した「働き方トレンドランキング2020」および「働き方トレンド予想ランキング2021」を発表した。本記事では、12月16日の「フリーランスの日」を前に開催された記者発表会と、“今年働き方が変わった人”によるトークセッションの模様をお伝えする。
「教育→仕事→引退」という標準的モデルのない時代へ。テクノロジーの進化とコロナ禍がもたらした働き方の変化
ランキング発表に先立って、ランサーズ取締役の曽根秀晶氏が登壇し、「働き方に関する変化」をテーマに講演を行った。曽根氏は、この四半世紀にGAFAM(Google、Amazon、Apple、Facebook、Microsoft)がテクノロジーによってわれわれのライフスタイルを大きく変えたことに言及し、これらの企業が提供する情報やモノ、サービスなしにはわれわれの生活や仕事が成り立たなくなっていると語った。一方、インターネットやスマートフォンが普及したときに比べて、テレワークはこの1年で急激に普及しており、今後はAIを使いこなす力、すなわち「AIリテラシー」の高い人が圧倒的に生産性を高めていくのではないかと展望を語った。
このように変化の速い不確実な時代となったことに加えて、人々の寿命が長くなった「100年人生時代」においては、従来の「教育→仕事→引退」の3ステージからマルチステージへと変化し、標準的モデルのない時代となったため、自分なりの人生に向き合って新たな幸福のあり方が模索されるようになった。こうした中で、企業と個人の関係性も変化し、これまでの日本型や欧米型の雇用モデルから、会社と個人がより対等な関係となるパートナーシップ型の雇用モデルへとシフトしていくのではないかと語った。
さらに、コロナ禍によって働く時間や場所、情報のアクセス、社外人材の活用などが自由になり、働く様式や環境、仲間などが変化してきており、働き方をめぐる課題も、「一人一人の自律性を高める」「チームの生産性を高める」「心のレジリエンスを強くする」「仲間同士の信頼関係を強くする」といった点が重要になってきていると語った。また、ミーティングやオフィスの概念も変化しており、その一例として、ランサーズが毎月行っている全社集会では、YouTuberが使うライブ配信ソフト「OBS Studio」を使ってイベント会場にいるかのような演出で配信し、双方向による活発なコミュニケーションを実現していることを挙げた。
2020年の働き方、トレンドランキング1位は「テレワーク」。「パワフル副業者」「ふるさと副業」も話題に
続いて、働き方トレンドランキング2020および働き方トレンド予想ランキング2021の発表が行われた。このランキングは、ランサーズ登録者470人にオンラインでアンケートを実施し、その結果をまとめたもの。働き方トレンドランキング2020では、今年話題になった働き方についてのワード33個のうち、特に話題になったと思うワードを5つ選択、働き方トレンド予想ランキング2021では、「来年話題となりそうな働き方ワード19個のうち、特に流行しそうなものを5つ選択してもらった結果を集計した。
今年話題になった働き方ワードとしては、「はんこ(押印)禁止」「テレワーク(リモートワーク、在宅勤務)」「従業員シェア」「フリーアドレス」「ジョブ型」「エッセンシャルワーカー」「ギグワーカー」「同一労働同一賃金」「DX」「ペーパーレス」「ワーケーション」「オンライン名刺交換」など33のキーワードが挙げられた。
この中から選ばれた働き方トレンドランキング2020の第3位は「副業(187票)」。在宅勤務が増加し、通勤時間が減ったことで、副業など新たな挑戦をすることが可能となったことが背景にある。副業というと従来は「小遣い稼ぎ」といった少額のイメージがあったが、今年は400万円以上稼ぐ「パワフル副業者」や、都会にいながら地方で副業する「ふるさと副業」が話題となった。また、お金が目的ではなく、スキルをつけるためというポジティブな理由で副業を開始した人も増加しているという。ランサーズの調査では、約3割の人が「今年副業を始めた」と回答したという。
第2位は、Zoomなどの「オンライン会議(ツール)」。新型コロナウイルス感染拡大防止のためのリモートワークが広まったことが背景にあり、これによってどこでも会議ができるようになった結果、地方移住やワーケーションなどの動きが広まった。また、従来は対面で行っていた営業活動や株主総会などもオンライン会議ツールが使われて話題となった。ランサーズの調査では、「オンライン会議は意外とできる」と回答した人は、「(オンライン会議は)難しい」と回答した人の約4倍という結果になったという。
第1位は、「テレワーク(リモートワーク、在宅勤務)」で、これも新型コロナウイルス感染拡大防止が背景にある。東京都の調査では、57.8%の企業が「テレワークを導入している」と回答しており、「在宅勤務手当」や「交通費は実費精算」といった対応をする企業も現れた。こちらもオンライン会議と同様に、「(テレワークは)意外とできると思った」と回答した人が「難しい」と回答した人の約4倍という結果になった。なお、ランキングの4位は「はんこ廃止」、5位は「時差出勤」となっている。
2021年に流行しそうな働き方、1位は「地方在住型ワーク」。次いで「DX推進」「ふるさと副業」など
一方、働き方トレンド予想ランキング2021については、「来年流行しそうな働き方ワード」として、「リバースメンタリング」「地方在住型ワーク(ハイブリッドワークライフ)」「オンラインメンター」「パワフル副業者」「新卒の通年採用」「復業」「オンライン(DX)化推進」「ワーケーション」など16のキーワードが挙げられた。
この中から選ばれた第3位は、就職などで自分の地元を出た人が副業として地元の企業でオンラインなどで働くことを意味する「ふるさと副業」がランクイン。人手不足で困っている地方企業と、地元に貢献したい働き手の需要と供給が一致することに加えて、コロナ禍によって今までオンライン化していなかった地方の中小企業がオンライン化するようになることにって、このような働き方が増えるという予想だ。ランサーズの調査によると、「2020年に副業をしたいと考えたか?」という問いに対して、「副業を始める準備をしている」または「副業をしたいと思ったが何もしていない」が37.4%という結果となった。
第2位は、「オンライン化推進(DX推進)」。コロナ禍によってオンライン化が急激に進んだことに加えて、はんこの廃止など行政手続きのオンライン化も進んでいることを理由に挙げている。ランサーズの調査でも、「今後、オンラインのみで完結する仕事は進むと思うか?」という問いに対して、「進むと思う」という回答は86.0%となった。
第1位は、地方移住や地方にいながら首都圏の会社で副業をする「地方在住型ワーク」。これは地方移住が進んで場所にとらわれない働き方を選択する人が増加したことに加えて、地方にいながらスキルさえあればより稼げる東京の企業で働ける時代となったことが背景にある。実際に、副業人材を募集する東京の大手企業が増加してきており、ランサーズの調査では、住む場所についての考えの変化について質問したところ、「地方で働きたいと思った」が13.9%、「首都圏で働きたいと思った」が5.0%となり、地方移住の関心が高まっていることが分かった。なお、ランキングの4位は「ワーケーション」、5位は「パワフル副業者」となっている。
“今年働き方が変わった人”が語る、コロナ禍での働き方・副業へのスタンス
続いて、“2020年に働き方が変わった人”によるトークセッションが行われた。参加者は、ロート製薬株式会社の広報として働きながら副業で北海道に林業のベンチャー企業の株式会社BATONPLUSを立ち上げた小谷美帆氏、パーソルキャリア株式会社の転職メディア事業部でコンサルタントとして働きながら副業でランサーズのライターとして活動を始めた中嶋駿弥氏、2014年にランサーズに副業として登録し、コロナ禍でフリーランスとなったウェブマーケターの藤﨑勝雄氏、ランサーズの開発部で働きながらオンライン師弟サービス「MENTA」でオンライン師匠としても働く安達涼氏の4名。以下、議論したテーマごとに各参加者の発言を紹介する。
オンラインは「情報は伝わるものの、熱意や気持ちが伝わりづらい」
――新型コロナウイルスの仕事への影響は?
小谷氏:
ロート製薬は製造業なので工場の稼働は避けられませんでしたが、営業や広報などは緊急事態宣言下で一斉にリモートワークに切り替わりました。女性の社員が多いこともあり、もともと週1のペースでリモートワークを取り入れていましたので、それほど大きな影響はなかったのですが、やはり取引先やメディアなど直接お会いするのが基本だったのがオンライン会議に移行したことで、商談などもオンラインでできることが分かりました。
安達氏:
オンライン師弟サービスの仕事は増えていて、コロナ禍はあまり関係なく、エンジニアになりたい人がかなり多くいるので、そこに対してどうアプローチをしていくかが重要になるので、コロナの前と後で変わらない感じです。ただ、コロナ禍によって「今までの仕事がなくなったので自分でサービスを作りたい、でも技術が上がらないので教えてください」という相談は多くなりました。
中嶋氏:
コロナ禍での本業への影響としては、まず採用を止める企業さんが増えたことと、あとはオンライン商談をする機会が増えたのですが、オンラインは情報は伝わるものの、熱意や気持ちが伝わりづらいという側面があり、それに慣れるのが難しいなと思いました。副業については、コロナ禍がきっかけで副業を始めたので、コロナ前後の変化はよく分かりません。
副業を続けていくには「モチベーションのコントロール」が必要
――コロナ禍で働き方を変え、苦労した点は?
藤崎氏:
会社員からフリーランスになったことで、自由な時間が増え、会社員時代は対応できなかった「平日にミーティングをしたい」と言ってくださるクライアント様が増えましたね。
安達氏:
副業で仕事を始めた当時は、時間の使い方に苦労しましたね。本業に集中するために一時期、副業をやめたときもありますし。ただし、やはりそういう働き方は自分の中で作り上げる必要があります。自分は教えることが好きなので、本業の時間はちゃんと集中して働いて、定時後は副業をするという時間の使い方が大事だと思います。時には働き過ぎてしまうこともありますが、例えば副業についてはクライアントに「平日の10時から18時までは連絡しないようにしてください」と頼むとか、自分で決まり事を作ってやっていくのが大事だと思います。
小谷氏:
私の場合は就業時間外での副業が認められているので、平日の夜か土日に働くかたちになるのですが、自分の「やりたい」という気持ちでやっているので、続けていくにはモチベーションのコントロールが必要になります。時間の管理はあまり意識したことはないですね。思い返すと、週に4~5時間やっていたなあ、というときはあります。副業を始めて2~3年経ってくると、最初は新鮮な気持ちで楽しかったのに、モチベーションが下がるときもあります。例えば最近では「この仕事はいつまでにやらなければいけないのに全然できていない」というとき。そういうときは「自分は何がしたかったのか」ということをもう一度考えて、その副業で得たかったことや、社会にどんな価値を提供したかったのかということを整理するようにしています。
中嶋氏:
私の場合、オンとオフがあるというよりは、ずっとオンの状態が続いていて、本業のオンがそのまま副業のオンに切り替わるような感じです。もともと「無駄な時間を過ごすのが嫌だ」という思いから副業を始めたので、本業でも副業でも無意味な時間を過ごさないようにしています。ライターの仕事を始めたことにもあまり苦労はなくて、転職コンサルタントの仕事もウェブライティングの仕事も、文字でいかに人に使えていくかというのがキモになっているので、伝えたい人のことを考えて活動していくことが大事だと考えています。
「何が安定なのか、どこで働くのか」は重要ではない
――ずっと今の働き方をしたいか?
小谷氏:
私の場合はロート製薬が主でサブが副業のBATONPLUSというかたちですが、今のところはそれを変えるつもりはありません。BATONPLUSのほうは全員が副業で、「本業で得たスキルを事業の活性のために使う」という理念で集まったスタッフなので、当分変わることはないと思います。
中嶋氏:
今の時代は、何が安定なのか、どこで働くのかというのは重要ではないと思っていて、それならば個人の能力を高めていったほうが良いのではないかと私は考えています。少なくともあと数年くらいはこの働き方になると思いますが、その中においても、なるべく個人の能力を高めて、仮に会社が潰れても生きていける、そういう人間になりたいなと思います。副業については、最初は「1日に1時間くらいやればいいかな」と思っていたのですが、次第に楽しくなってきて、1日に2~3時間は平気でやっていたりとか、休日5時間くらい働いたりとかしてます。
藤崎氏:
私は毎日が楽しくて仕方がないですね。自分の頑張り次第で収入も増えていくので。仕事の単価も上がってきているので、仕事にかける時間も少なくなりましたし、時間のゆとりも増えました。
安達氏:
私はランサーズが好きですし、今後ランサーズからもいろいろなサービスが増えてくると思いますし、やらなければいけないことも膨大にあります。それに対して毎日どうやって作り上げるかということを常に考えていて、それで培った知識をメンターとして教えているので、それで弟子が成長したときに例えば「安達さんと一緒に働きたい」と言ってもらえればモチベーションが上がるので、そういう意味ではこのかたちで今後もやっていきたいと思います。
「スモールスタートでもいいから飛び込んでみる」
――働き方で悩んでいる人にアドバイスを。
小谷氏:
新しい働き方に挑戦するときは、「できるのだろうか?」とか、「忙しくなって家族と過ごす時間が減らないか?」とかいろいろ懸念されることはあると思うのですが、「スモールスタートでもいいから飛び込んでみる」というのをお勧めしたいですね。自分でやってみたいことを開示するとか、ほかの人に話を聞いてみるとか。コロナ禍によって働き方が変わってツールも浸透したので、働く人には追い風になっていると思います。いろいろな働き方、その人に合った働き方を受け入れる空気も少しずつ出てきていると思うので、恐れずに、「100かゼロか」というよりは徐々に移行していく、「まずはやってみる」のがいいと思います。そのためには、自分がどうありたくて、そのために何を選択するか、ということについて納得することが必要だと思います。
中嶋氏:
私も同じ意見で、副業したいならまずはやってみるのがいいと思います。副業で失敗しても死にはしないので、入り口もたくさんあるし、まずは思い立ったらやってみるといいと思います。今始めたい人はすぐに始めて、トライアンドエラーでやっていけば、自分の「稼ぐ」という個の力を高められるので、ぜひやってみてはいかがでしょうか。
藤崎氏:
自分の人生に対するビジョンを持たずに生きていると人生があっという間に終わるので、今を大事にしてほしいですね。収入面でもフリーランスというかたちで高めていってほしいです。
安達氏:
結局は自分からアクションを起こさないとなにも始まらないと思っています。自分にできること、できないことは副業をすることで分かると思うので、そこはぜひチャレンジすると収入も得られてモチベーションも上がると、すごくいいのではないかと思います。