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世界初、ドローンを「空飛ぶ避雷針」にする実験にNTTが成功
2025年4月21日 06:30
日本電信電話株式会社(NTT)は4月18日、ドローンを使用して雷を誘発・誘導する実験に世界で初めて成功したことを発表した。「空飛ぶ避雷針」として実用化が期待される。
NTTグループが管理・運用する通信設備には落雷対策がされている一方、落雷被害はあとを経たない。一般的に、落雷対策には避雷針を用いることが多いが、効果範囲が限定的なだけでなく、場所によっては避雷針の設置が困難だという。そこで、新たな落雷対策としてドローンを活用すべく、雷雲に合わせてドローンを移動させ、雷を積極的に誘発したうえで安全な場所に誘導する「ドローンの耐雷化技術」および、積極的に雷をドローンに落とさせる「電解変動を利用した雷誘発技術」を実証する実験を行った。
実験は、2024年12月~2025年1月の期間に、島根県浜田市山間部の標高900m地点で行われた。雷雲の接近に伴い、付近の電界強度が高くなったタイミングでドローンを飛行させて雷を誘発し、狙った場所に雷を落とす、といったものだ。
使用したドローンは、雷が直撃しても市中で誤作動・故障しないために設計された金属製の耐雷ケージを備えている。また、雷を誘発するため、飛行させたドローンと地上の間を導電性のワイヤーで接続し、地上側に高耐圧スイッチを取り付け、スイッチの操作によってドローン周囲の電界強度を変化させる手法を考案した。これにより、スイッチ操作のタイミングでドローンと地上をつなぎ、ドローン周囲の電界強度を急激に上昇させることで、雷を誘発できる。
雷の誘発は、次のような流れで行われた。まず、フィールドミルという大気中の電界を測定する計測器を用いて、電界強度が上昇したタイミングを図り、電界強度上昇にあわせてワイヤーをつけたドローンを高度300mまで飛行させる。地上側でドローンと地上を導通させることにより、ワイヤーに大電流が流れ、同時に周囲の電界強度が大きく変化する。雷誘発の直前にはワイヤーと地面の間に2000V以上の電圧が生じていることを確認されており、急激にドローン周囲の電界強度を変化させたことで、ドローンに雷が誘発された。
なお、誘雷と同時に、破裂音、ドローンを牽引するウインチ部の発光、ドローンの耐雷ケージの一部溶断が確認されたが、耐雷ケージを具備したドローンは、誘雷後も安定して飛行を続けたという。
NTTでは今後、雷が直撃しても故障しないドローンの開発のほか、ドローン誘雷の成功率を上げるため、高精度な発雷位置予測、および雷の発生メカニズムに関する研究開発を進めていく。これに加え、誘雷した雷のエネルギーを蓄積・活用することもめざし、雷エネルギーの蓄積手法の研究開発にも取り組んでいくとした。