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「ふるさと納税」ってなぜお得なの? まずは基本的な仕組みを知ろう!

ふるさと納税の仕組みと活用法<前編>

▼この記事のポイント

  • ふるさと納税は全国の自治体に寄付ができて実質節税にもなる!
  • 2000円を超える分は、一定金額まで税控除
  • 年収や家族構成などによって寄付できる金額が異なる
ふるさと納税の基本的な仕組みの図解
ふるさと納税の基本的な仕組み(詳細は記事本文を参照)

[目次]

  1. ふるさと納税ってなぜお得なの? まずは仕組みを知ろう!
  2. 寄付したお金ってどうやって戻る? いつの間にか住民税が軽減される?
  3. 返礼品はどうやって選ぶ? まずは自分の寄付額の上限を知ろう
  4. 税金の軽減方法は「確定申告」と「ワンストップ特例」の2種類から選ぶ(別記事
  5. 6カ所以上寄付するなら知っておきたい確定申告の方法は?(別記事
  6. ワンストップ特例制度の利用条件と注意すべきこと(別記事

※この記事は、書籍『マンガと図解でよくわかる つみたてNISA&iDeCo&ふるさと納税 ゼロからはじめる投資と節税入門』(酒井富士子著/株式会社インプレス発行/1430円)より、ふるさと納税に関するパートの一部を抜粋して再構成したものです。

ふるさと納税ってなぜお得なの?まずは仕組みを知ろう!

2000円ですぐに始められる!

 「ふるさと納税」は、都道府県や市区町村に寄付することで、税控除が受けられる制度です。自分で選んだ自治体に寄付をすると、年間寄付金額のうち2000円を超える分について、一定上限まで所得税・住民税から控除される仕組みです。

 2008年にスタートした当時は、進学や就職などで自分の生まれ育った故郷から移転した人が、故郷に税金面で貢献できるように設計されたものでした。ただ実際には、生まれ故郷でなくとも全国どこでも自由に寄付できるうえに、複数の寄付先を選ぶことも可能です。

 ふるさと納税をする大きな魅力は、寄付先から「お礼の品」として返礼品がもらえることです。その内容は地域の名産品や旅館の宿泊券、サービスなど、自治体によってさまざまです。

 また一般的には、納めた税金の使途は自分では決められませんが、ふるさと納税では、例えば災害対策や教育事業の支援、街の環境整備など、いくつかの選択肢から選ぶ形で、寄付金の使途を指定することもできます。また後日自治体から報告書が送られてくるので、税金の使い道がわかり、寄付をする側にも安心感が生まれます。

【用語解説】控除…… 「一定の金額を差し引く」という意味。ふるさと納税で控除される「所得控除」は、課税の対象となる所得額から一定の金額を差し引くことで、所得税や住民税が軽減されます。

ふるさと納税の基本的な仕組み

ふるさと納税人気の5つの理由

  1. 返礼品がもらえる
    約1800の自治体のうち半数以上が、寄付金を納めると「お礼の品」として特産品をくれる。その内容は地域の名産品や旅館の宿泊券などから家電まで、自治体によってさまざま
  2. 生まれ故郷でなくてもOK
    「ふるさと」というと、寄付先は生まれ故郷限定のようにも思えるが、実際は全国どこを選んでもOK。気に入ったお礼の品がある自治体や応援したい自治体など、日本全国から自分の好きな場所を自由に選んで寄付ができる
  3. 税金が控除される
    適用下限額2000円は自己負担となるが、それ以外は、個人住民税の約2割という上限はあるものの税金が戻ってくる
  4. 5カ所までなら確定申告不要
    2015年4月から、「ワンストップ特例制度」が始まり、確定申告が不要な会社員など給与所得者の場合、寄付先が5カ所以内なら、納税先団体に申請することで、確定申告をしなくとも税金の控除を受けられるようになった
  5. 寄付したお金の使途を指定できる
    通常、支払った税金の使途は決められないが、ふるさと納税は寄付する際にいくつかの選択肢から使い道を選ぶことができる。自分で使い道を指定しない場合は、各自治体にお任せすることとなる

▼ポイント

  • ふるさと納税は全国の自治体に寄付ができて実質節税にもなる!

寄付したお金ってどうやって戻る?いつの間にか住民税が軽減される?

所得税は還付、住民税は6月から軽減

 ふるさと納税の最大のメリットは、税金控除です。つまり、寄付金額に応じて税金が戻ってくるということ。上限はありますが、寄付した額から2000円を超える部分について、所得税と住民税の控除が受けられます。

 具体的な例を挙げて説明しましょう。年収700万円のAさん(妻は専業主婦)が10万円の寄付をした場合です。Aさんの所得税率は10%なので、まず9800円が所得税から還付されます。

 次に住民税に関しては、「基本分」と「特例分」の2本立てが控除されます。基本分は、寄付金から2000円を差し引いた額に本人の住民税率(10%)を掛けた金額9800円です。さらに特例分として、10万円から自己負担額2000円、所得税分9800円と住民税基本分9800円を差し引いた残額7万8400円が戻ってきます。つまりふるさと納税をすると所得税の軽減、住民税の基本分と特例分の軽減の種類の控除が受けられるので、10万円寄付した場合は、9800円+9800円+7万8400円=合計9万8000円が戻ります。

 所得税の還付金は確定申告することで早くて4月頃に所定の銀行口座に入金され、住民税は6月の天引き分からふるさと納税分が12カ月に分割されて軽減されます。例年より住民税が少なくなったと節税を実感できるのは 6月以降です。

年収700万円の会社員Aさんが10万円寄付した場合の試算

年収700万円、所得税率10%、住民税率10%の会社員が10万円のふるさと納税をした場合に受けられる3種類の税金の控除額についての説明

ふるさと納税と住民税のスケジュール

ふるさと納税と住民税のスケジュールについての図解

▼ポイント

  • 2000円を超える分は、一定金額まで税控除

返礼品はどうやって選ぶ?まずは自分の寄付額の上限を知ろう

人気の食品は受け取り時期に注意

 一定の上限までの寄付であれば、2000円を超える部分について、税金が控除されますが、注意したいのは「一定の上限」は一律ではなく、年収や家族構成によって異なることです。返礼品を選ぶ前に、まずは自分の上限を確認することが必要です。

 例えば同じ年収400万円でも、夫婦共働き、独身の場合は4万2000円、夫婦と子ども2人では1万2000円になります。総務省のふるさと納税ポータルサイトに掲載されている表で自分に近い上限額を確認してみましょう。同サイトには自分の上限額を試算するツールもあるので、自分で計算してみましょう。

 控除額の上限がわかったら、いよいよ返礼品選びです。最も人気が高いのは食品ですが、ふるさと納税初心者が陥りがちな失敗として挙げられるのは、受け取り時期の選び方。同時期に複数の自治体に寄付をしたために、一気にお礼の品が届き、冷蔵庫や冷凍庫に入りきらなくなってしまうことです。特に肉の場合、冷凍で届くことが多く、冷蔵の場合でもすぐに食べないのなら冷凍する必要があります。魚介類も新鮮な獲れたてを選んでも、不在で受け取れない、料理をする時間がない、などで美味しく食べられるタイミングを逃してしまう場合があります。

 こうしたことは避けるには、年間計画を立てることが大切。毎月自治体だけに寄付するなど、ルールを決めて寄付の時期を分散させるのです。定期便などを選ぶのも有効な手段です。

全額控除される寄付の上限額の目安

全額控除されるふるさと納税の上限額(年間上限)の目安の表

▼ポイント

  • 年収や家族構成などによって寄付できる金額が異なる

酒井 富士子(さかい ふじこ)

経済ジャーナリスト、金融メディア専門の編集プロダクション・株式会社回遊舎 代表取締役。日経ホーム出版社(現日経BP社)にて「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長を歴任。リクルートの「赤すぐ」副編集長を経て、2003年から現職。「お金のことを誰よりもわかりやすく発信」をモットーに、暮らしに役立つ最新情報を解説する。