特別企画
やじうまWatchで振り返る2012年
(2012/12/27 12:00)
ネットを駆け巡る日々の小ネタを、平日(月〜金)の週5回お届けしている「やじうまWatch」。今年のネット界隈では違法ダウンロードの刑事罰化、ファーストサーバの大規模データ消失、コンプガチャ問題、さらには遠隔操作ウイルス事件など大きな出来事もあったわけだが、やじうま的世界においては多くのネットユーザーを巻き込んだおもしろネタや、予想もつかない斜め上のネタがユーザーを楽しませてくれた。そんな2012年を代表する話題の数々を、10項目プラスアルファという条件で抽出してみた。やじうま視点からの2012年を、いっしょに振り返っていただければ幸いだ。
Kindle上陸で電子書籍が盛り上がるも、話題の中心になったのは「kobo」?
電子書籍にまつわる話題たけなわだった2012年。これまでサービスインの噂が度々報じられながらいずれも誤報で「また日経か」というフレーズの定着に一役買ったアマゾンKindleの上陸は、今年のトピックのひとつだろう。
そんな中、電子書籍関連の本筋とは違ったところで下半期の話題をさらったのが楽天kobo。サービスイン当日に認証サーバーが繋がらずに大混乱に陥ったことを皮切りに、端末やサービスについての不満であふれたユーザーレビューを非表示にしたり、またWikipediaのページや楽譜を1冊としてカウントするなどの行為に対し、ネット上では非難の声が上がった。在庫処分とみられる端末の無料送りつけに遭った一部のユーザーは、それをヤフオクに出品してKindle購入の原資にするなど、ちゃっかりしたところを見せつけていた。求人サイトで楽天がうたっていた「グローバルなベストプラクティスを実践していただくグローバルなオポチュニティです」がこれを指していたのか、真相はいまだに不明なまま。来年の巻き返しに期待しよう。
◇どうしてこうなった? Wired掲載の楽天・三木谷社長の華麗なポーズが話題沸騰
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20120829_555939.html
◇楽天kobo、Wikipediaの人名ページを電子書籍として登録し話題になる
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20120918_560342.html
◇無料進呈がアダに? 楽天「kobo Touch」がヤフオクで投げ売り中
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20121029_569338.html
iOS 6のAppleマップで大混乱、JR青梅線の「パチンコガンダム駅」に注目集まる
6月にベータ版が登場した際、ランドマークがスカスカであることが指摘されていたiOS 6搭載のApple独自マップ。当時はまだベータということで大きな問題にはならなかったが、ほぼそのままの状態で秋に正式リリースに至ってしまったのだからたまらない。
リリース後しばらくしてAppleが陳謝し、さらに年末近くになってiPhone 5で使えるGoogleのマップアプリがリリースされたことで当面の支障こそなくなったわけだが、肝心のiOS 6のマップはまだ完全なものになっていない。インパクト抜群のネーミングで話題になり、実際に現地を訪れる人まで現れた「パチンコガンダム駅」は、本稿執筆時点で最新版となるiOS 6.0.2でも依然そのまま。根本的な解決までには、まだまだ時間がかかりそうな雲行きだ。
◇華やかに登場したiOS6の新マップ、ベータ版のスカスカ具合が話題に
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20120613_539662.html
◇ひまつぶしに最適? iOS 6の新しい地図アプリによる「間違い探し」が大ブーム
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20120921_561072.html
◇これもひとつの聖地巡礼?「パチンコガンダム駅」に実際に行ってみる人々
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20120924_561847.html
◇Appleに削除された旧マップそっくりのアプリが再登場、物議を醸す理由とは
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20121108_571372.html
「新しいiPad」から「新しくないiPad」へ、そしてネタにされるSiri
昨年のスティーブ・ジョブズ前CEOの死去後も、精力的に新製品をリリースするApple。今年は第3世代のiPadこと「新しいiPad」、iPhone 5、そしてiPad miniおよび第4世代のiPadなどが相次いで投入された。春先にそのネーミングが物議を醸した「新しいiPad」は、秋には早くも「新しくないiPad」に変わっていたわけで、怒涛の新製品ラッシュだったと言える。
そんな中で話題をさらったのは、前述のiOS 6のマップ、品薄となったLightningコネクタ、そして日本語対応した音声エージェント「Siri」だろう。すでに海外版の時点から擬人化やショートストーリーなどは大量にお目見えしていたが、日本語対応でSiriを使ったお遊びがますます顕著に。まとめサイトなどでは面白いやりとりが大量にまとめられ、果てにはCDデビューまで決定していた。ライバルであるドコモの「しゃべってコンシェル」とともにさらなるネタ化に期待だ。
◇その名も「新しいiPad」、ネーミングにユーザーからは戸惑いの声
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20120309_517414.html
◇音声エージェント機能「Siri」がついに日本上陸、おもしろまとめが多数登場
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20120309_517414.html
◇ボケっぷりまでSiriのライバル? ドコモの「しゃべってコンシェル」が大人気
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20120629_543519.html
フィギュア販売、コミケ出展……マイクロソフトとGoogleの場外バトルが熱い
ネットユーザーに親しみやすさをアピールするという目的があるのかどうかは不明だが、比較的くだけたノリのイベントに企業が参加したり、萌えキャラブームに乗っかる例はここ何年かで顕著になりつつある。
そんな中、本業そっちのけで場外バトルを繰り広げているのが、マイクロソフトとGoogle。もはや定番となったマイクロソフトの萌えキャラ戦略だが、今年は17万円の「クラウディア・窓辺」フィギュア付き製品がリリースされたほか、Windows 8のイメージキャラ「窓辺ゆう」「窓辺あい」がデビューしたりと、1年を通じてネタが尽きなかった。一方、ライバルであるGoogleはコミケに初出店したり、つば九郎との契約交渉に望んだりと、こちらもネタだらけ。こうしたライバル意識はユーザーとしても大歓迎だ。
◇どちらが付録かわからない、17万円の「クラウディア・窓辺」フィギュア
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20120525_535149.html
◇Windows 8のイメージキャラ「窓辺ゆう」「窓辺あい」の家系図が公開
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20121015_566077.html
◇FA宣言のつば九郎にGoogle日本法人がオファー、きょう交渉の様子が生配信
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20121220_579478.html
国産の無料通話アプリ「LINE」が一大インフラ化も、さまざまな問題が噴出
スマートフォンなる言葉が登場した当時、ここまで急激な移行は誰も予想できなかっただろうと思えるほど、ガラケーからスマホへのシフトは顕著だ。そんな中、スマホ同士で無料通話および無料メールができることが受け、大ヒットとなったアプリ「LINE」。海外でも幅広く使われる一方、6月には企業アカウントの提供もスタートし、登録ユーザー数が1億人の大台も間近ということでいまや一大インフラとなりつつある。
もっとも、普及の一方でFacebookの友達が自動的にLINEに追加されてしまう仕様など、なにかと物議を醸すことが多かったのも事実。また、アプリストアのカスタマーレビューでは友達募集中の書き込みが大量に発生し、製品やサービスへのフィードバックとして機能しなくなるなど、利用者層が多岐にわたっていることを証明するような出来事も起きつつある。
◇想定外? 無料通話アプリのカスタマーレビュー欄で「友達募集中」
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20120126_507318.html
◇実は深刻? iOS 6で、FBの友達が自動的にLINEに追加される問題が発生中
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20120926_562209.html
◇北朝鮮のミサイル発射の速報で注目集める、LINEの首相官邸アカウント
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20121214_578681.html
SNSで映画の見方が変わる?「まどマギ」「エヴァQ」に見るファンの行動
大作アニメの劇場公開が相次いだ2012年。なかでも注目を集めたのは、秋に公開された「魔法少女まどか☆マギカ」の劇場版前後編、そしてようやく公開された「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」だろう。「まどマギ」が基本的に総集編に準じた作りである一方、完全オリジナル展開の「ヱヴァQ」は公開から1カ月半が経過した現在もその展開をめぐってネット上では賛否両論、旧シリーズと似た謎解きも活発に行われている。
公開直後からSNS経由でのネタバレを嫌って早期に劇場に足を運ぶ人も多かったようで、SNSが普及したことによって映画の見方が変わりつつある格好なのが面白い。一方、大学教授が講義中にヱヴァQのネタバレを始めたという悲劇も報告されており、こればかりは気を付けていても防ぎようがなさそうだ。
◇表情によって大差が…「まどマギ」特典フィルムがヤフオクで大台突破間近
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20121018_566662.html
◇「ヱヴァQ終映後に主題歌を歌おう」企画、釣りの可能性が濃厚に
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20121116_573218.html
◇鑑賞済みのファンにバカ受け、「ヱヴァQ」を13ページで強引にまとめた漫画
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20121119_573986.html
「にゃんこ型イヤホンジャックカバー」などネット発のネタ製品が多く登場
ネットでの反響をもとに製品化されるアイテムや、ネットで話題に火が付く商品がこれまで以上に目立ったのも、2012年の特徴のひとつ。ニコニコ超会議で販売された脳波で動くネコ耳こと「necomimi」や、Twitterに投稿されたイラストから製品化が決まった「にゃんこ型イヤホンジャックカバー」、それに続けとばかりに登場したドアラのイヤホンジャックカバーなど、さまざまなアイテムがネットを賑わせた。ザクとうふやズゴックどうふ、スライムまん、ミクまんなど、ネットを通じて爆発的に売れた製品を含めると、かつてないほどの量だったと言える。秋に発売されたiPhone 5ではイヤホンジャックコネクタが本体下部に移動したことで、イヤホンジャックカバーの市場はやや縮小気味とも言われるが、来年もさまざまなアイテムがネットを賑わせてくれることを期待しよう。
◇ニコニコ超会議でバカ売れの脳波ネコ耳、オークションで2万円超え
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20120501_530615.html
◇にゃんこ型プラグアクセサリー、わずか3週間あまりで試作品が登場
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20120509_531351.html
◇シンクロ率高すぎ! 「脳波で動くネコミミ」が「おおかみこども」とコラボ
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20120801_550318.html
◇大人気「にゃんこ型イヤホンジャックカバー」、作りが雑すぎる偽造品が話題に
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20120828_555721.html
ステマや反アフィで炎上続出、運営側の「なにはともあれまず謝罪」も顕著に
とかく「自分たちが騙されている」「なにかウラがある」話には敏感に反応するのがネットユーザー。年始に発生した反アフィリエイトによる2ちゃんねるニュー速ユーザーの大量移住や、ゲハブログの騒動、食べログのステマ騒動、そして年末近くのペニーオークション絡みによる芸能人の虚偽ブログ問題は、それぞれ性質はまったく異なるものの、ユーザー側からすると類似の事象として認識されている節がある。
運営側が自ら炎上を巻き起こしたstudygiftや、スパイアプリ疑惑で会社の解散に至ったミログのように、本格的に炎上するとサービスはおろか会社存続の危機に立たされることから「本格的な炎上の前になにはともあれまずは謝罪」という風潮も広まりつつある。2ちゃんまとめサイトがカモフラージュ広告記事について一斉に謝罪した件などは、その象徴的な出来事だったといえそう。ネットの自浄作用が働いていると信じたいところだ。
◇2ちゃんねるで一揆発生? 反アフィリエイトでニュー速民が大量移住
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20120111_503495.html
データ直販や自費出版、有料メルマガ……ネット上でのマネタイズの動きが活発に
マネタイズを巡ってさまざまな試みがあったのも今年の特徴。著名人やジャーナリストを中心に昨年暮れから創刊が相次いだ有料メルマガでは、電子書籍ストアでの販売などの新しいスタイルが模索される一方、記事執筆のスタイルに合わないとして廃刊に踏み切る例や、週刊を標榜しながら週1回どころか月1回も届かないことを告発したエントリが話題になるなど、手放しで成功したとは言えない状況だ。このほか個人向けでは、海外のデータ直販サービス「Gumroad」が注目を集めたり、10月にオープンした日本版Kindleストアで自費出版を試みるユーザーが相次いだりと、ネット上での収入につながる新しいメディアやツールが目立った一年だった。
◇写真1枚からでも売れる? データ直販サービス「Gumroad」が注目集める
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20120214_511818.html
◇「Geekなぺーじ」あきみち氏の有料メルマガがわずか半年で廃刊、その理由とは
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20120301_515498.html
◇誰の責任? 週刊なのに週1回どころか月1回も届かない有料メルマガ
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20121114_572705.html
今年も見られたネタの栄枯盛衰、定着しそうな本命は「エアーろくろ」?
ネットで大ブームになったのもつかの間、あっという間に姿を消すフレーズや表現の数々。「(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー!」のように番組終了とともに見かけなくなった例はさておき、2月頃に流行した「膝に矢を受けてしまってな…」や、暮れにTBS宣伝部のツイートを発端に大流行した「……きこえますか…きこえますか…」は沈静化も速く、今となっては口にする人はほとんどいない有様だ。比較的定着したのは、語感のおもしろさで話題となった京浜急行電鉄の「ダァシエリイェス」、腐女子の擬人化? キャラの「┌(┌ ^o^)┐ホモォ…」あたりだろうか。フレーズ以外では、IT業界人がインタビューを受ける際のポーズ、いわゆる「エアーろくろ」は、日経新聞にまで取り上げられ注目を集めた。かつての「ツンデレ」などのように、ネーミングが存在しないものに名前がつくと、それが標準となって定着することは多い。10年、20年というスパンで見ると「エアーろくろ」という表現が生き残る可能性は十分にありそうだ。
◇Twitterなどでやたら目にする「膝に矢を受けてしまってな…」の元ネタとは
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20120224_514143.html
◇エアーろくろが転じて、本当にろくろを回す人がウェブ業界に続出
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20120322_520212.html
◇話題の「……きこえますか…きこえますか…」の自動生成ツールが登場http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20121129_575783.html
あとがき
以上10個、トピックとして目立ったものを紹介したが、じわじわと盛り上がったがゆえにこうしたトピックになりにくいネタにこそ、ネットのトレンドが隠れていたりもする。例えばいつの間にか定着してしまった群馬県の呼称「グンマー」は、実はネットで本格的に使われ始めたのは今年の前半だったりと、意外と日は浅かったりする。また、コラボ画像の定番となった川越シェフも、照英氏を徐々に追い上げて(本人の意向とは関係なく)現在の地位を掴んでおり、突発的にブームになったわけではないのが面白い。
また初音ミク関連のように、年間を通して話題がありすぎるがゆえに突出したトピックになりにくいネタもあるほか、インフラとして認知度が高まってきたFacebookやTwitterもそれ自体が突出した話題になることは少なく、見出しだけを見ていくと新興のLINEよりも地味だ。キリストの宗教画の失敗修復で話題になったフレスコ画のように、世界的にブームを巻き起こしたネタも、賞味期限で見るとほんの一瞬だ。突出したトピックになりにくいネタほど、実はしっかりとネットでその地位を固めていると見ることもできそうだ。
一方、ここ10年近く、なにかしらの話題を提供してきたmixiがまったくといっていいほど話題に上らなくなったように、世代交代も実は激しく、今年台頭したネタも安泰というわけではない。2013年はどのようなネタが我々を驚かせ、そして楽しませてくれるのか、期待して待つことにしよう。
◇「修復失敗キリスト画」ブーム、世界的規模で拡大中。パロディも続々登場
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20120828_555721.html