iPhone 3Gの熱気もひと段落し、落ち着いた週になるかと思われましたが、「2012年にネットが終わる」などの怪文書つきウイルスメールがが出回ったり、米Microsoftと米Yahoo!の買収問題が混迷を深めていたりと、不穏な話題もあった一週間でした。
先週末からは、小中学校などが夏休みに入りました。総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」のニュースもありましたが、落ち着いた夏休みを過ごすためにも、家庭でのインターネット利用について考える良い機会となりそうです。
◆有害情報対策の優良企業リスト化も? 民間による"規範"策定へ
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/07/17/20303.html
7月17日、総務省「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」の第7回会合が開催された。年内にまとめる予定の「安心ネットづくり」促進プログラムに向けて、事務局がプロバイダーの対応強化、民間の自主的取り組みの促進、親子のICTリテラシー向上などについて説明。今後はワーキンググループごとに検討を行うことになった。詳細は後半で解説します。
◆「Firefox 3.0.1」公開、3件の脆弱性を修正
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/07/17/20292.html
7月16日、Mozillaは「Firefox 3.0.1」をリリースした。危険度の高い3件の脆弱性を修正したほか、安定性にかかわる問題、フィッシング詐欺・マルウェア対策機能の問題、SSL証明書例外リストにあった問題を修正している。
◆テレビCMとバナー広告が連動、ヤフーと電通が新広告サービス
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/07/17/20295.html
7月17日、ヤフーと電通は新しい広告サービス「Spot&Search」を開発したと発表した。これはテレビCMと検索結果連動型広告を一体化したもので、CM内に表示されたキーワードをYahoo! JAPANで検索すると、検索結果に映像などのバナー広告が表示される。第1弾として日本HPのCM連動による広告が始まっている。
◆MySpace、アーティスト自身が楽曲販売を行える「viBirth」を提供
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/07/16/20285.html
7月16日、マイスペースと、アーティストが個人レーベルを作り音楽の有料配信を行えるサービス「viBirth」を手がけるブレイブがMySpace上で提携。MySpace上でアーティストが自作曲をオンライン販売できるアーティストストア「viBirth」を7月下旬より開始すると発表した。iTunes StoreやNapster、携帯電話向け音楽配信サイトなどでも楽曲の販売が可能になる。
◆「Yahoo!が拒否した提案は、Yahoo!会長が依頼したもの」MSら反論
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/07/15/20259.html
7月14日、米Microsoftは、7月12日に米Yahoo!が発表した内容について反論した。Yahoo!はMicrosoftと投資家のCarl Icahn氏による秘密共同提案を拒否したと発表したが、この提案はYahoo!会長によって依頼されたものであったとしている。Icahn氏もプレスリリースでYahoo!の間違いを指摘し、強い不快感を表明した。
● 「親子のネットリテラシー向上」が柱の1つ。国レベルの違法・有害情報対策を検討中
2007年から特に、いわゆる「闇サイト」の問題が大きな社会問題として注目されるようになりました。また、青少年が違法・有害サイトにアクセスして犯罪に巻き込まれる問題も後を絶たず、これらへの対策のため総務省が2007年11月に設置したのが、「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」です。
同会の第1回会合から4月の第6回会合までは、携帯電話のフィルタリングについて集中的に検討を行い、中間報告も発表しています。そして先週に行われた第7回会合では、今後の検討課題について、「プロバイダーの対応強化など安心を実現する基本的枠組の整備」「民間の自主的取り組みの促進」「親子のICTメディアリテラシー向上支援」を3本柱とした方針が示され、これに技術検討ワーキンググループを加えた、合計4つのワーキンググループが検討を進めていくことになりました。検討結果は、年内に「安心ネットづくり」促進プログラムとしてまとめられる予定です。
「基本的枠組みの整備」には、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(青少年ネット規制法)に基づくフィルタリングや、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」(迷惑メール法)に基づく迷惑メール対策の強化、プロバイダーの体制整備などがあたります。
次の「民間の自主的取り組みの促進」とは、国による規制ではない、民間での違法・有害情報対策を促進するものです。先週17日にはインターネット全般を対象にしたレーティング機関「インターネットコンテンツ審査監視機構(I-ROI)」が審査基準などを発表し、シンポジウムを行いました。
国による一律規制でなく民間レベルでの取り組みを、というのは、青少年ネット規制法の審議時にも挙がっていた声です。I-ROIのシンポジウムでは、ICTリテラシーを水泳に例えて「泳がせないと泳ぎは覚えられない。泳ぎ方を大人が教えるのは必要だが、プール自体を奪う(法で表現を規制する)ようなことはしてはいけない」(慶應義塾大学大学院の中村伊知哉教授)といったコメントもありました。
そこで、3本目の柱となるのが「親子のICTメディアリテラシー向上支援」です。iモードの育ての親である元NTTドコモの夏野剛氏が「携帯電話が当たり前の社会で育った世代は我々とは別の生き物」と言うほど、現在の親世代の多くは子ども世代にとってのインターネットの利用を理解できておらず、そこでの「泳ぎ方」を教えてあげられるような知識も経験もありません。「親が理解できない」という意味では今の親世代にとってのテレビゲームもそれに近いかもしれませんが、インターネットはその先に広い世界との繋がりがあり、悪意を持った人間とも簡単に繋がり、影響を受けてしまうことで、ずっと恐ろしいことになる可能性を持っています。
巨大掲示板「2ちゃんねる」には「夏厨」という言葉があります。夏休みなど長期休暇になると、暇になった学生ら(「厨房」とは中坊→中学生→生意気な子ども、の意味)による「荒らし」などが増えることを指した言葉です。一方、掲示板などへの悪戯のレベルでは収まらないことも多く(殺人予告書き込みで小学生を補導、ファイル共有ソフト海賊版ソフトを販売して高校生が送検など)、家庭で何らかの対策を取ったり、親子で話し合ったり、といったことが必要になっています。
どんな対策を取ればいいのかは、専門家でも簡単には結論の出せないところです。とはいえ、まず各家庭のレベルにおいては、子どもがネットでどんな活動をしているのかを把握し、親はネットに潜む危険について知識を深め、親子で情報交換をしながら安全にインターネットを利用できるようにしたいものです。
2008/07/22 11:49
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小林祐一郎 プログラマ、編集者、Webディレクター等を経て、ライター・編集者として活動。興味のあるテーマは「人はどうすればネットで“いい思い”ができるのか」 。ごく普通の人の生活に、IT技術やネットのコミュニケーションツールがどんな影響を与え、どう活用できるのかを研究している。近著「Web2.0超入門講座」(インプレス) |
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