スッキリ分かるWi-Fiルーター(ASUS編)

Wi-Fiでやってみた【ZenWiFi編】第5回

最新Wi-Fiルーターで「動画が⽌まるからダウンロード⽌めて」がなくなる!

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受けたテレワークの推進によって、家庭内でのWi-Fi利用状況は大きく変わった。

 日中は子どもがスマホで動画を見る程度だったものが、今では両親ともに自宅にノートPCを持ち込んで在宅で仕事。自宅のWi-FiからVPNなどを介して会社のネットワークに接続し、大容量のファイルをやり取りしていると、子どもから「動画が止まる!」と文句を言われる……という状況も、よく耳にする。

ASUSのメッシュ対応Wi-Fi 6ルーター「ZenWiFi AX」
ZenWiFi AXは、最大4804Mbpsに対応するトライバンドのWi-Fi 6ルーター。単体でも使える1台構成と、メッシュWi-Fiを構成できる2台セットに加え、Amazon.co.jp限定のブラックモデルが販売されている。さらに1台の環境へ追加してメッシュWi-Fiを構成できる11ac対応の「ZenWiFi AC」もラインアップする

通信速度低下を抑えるWi-Fi 6の新技術「OFDMA」「MU-MIMO」

 Wi-Fiで通信をする際には、限られた電波を複数のWi-Fi子機で奪い合うかたちになる。そのため複数で同時に通信すると、混雑により速度が低下したり、反応が遅くなったりという問題が発生しやすい。特に大容量ファイルのダウンロードや、一定の通信を継続する動画のストリーミング再生などでは、こうした問題が起こりやすい。

 Wi-Fi 6ではこの対策として、2つの新技術を盛り込むことでスムーズな通信を実現している。1つは「OFDMA」で、使用する電波を細かく区切り、データを無駄なく、かつ素早くやり取りできるようにするものだ。

 もう1つは「MU-MIMO」で、複数の端末に向けて同時に通信が可能になる技術だ。Wi-Fi 5では下りの通信だけだったが、Wi-Fi 6では上りにも対応し、複数端末からの通信でも速度が低下しにくくなっている。

他端末で大容量通信中も、再生動画のコマ落ちや途切れは見られず

 では実際に、複数のWi-Fi子機で同時に通信を行って、その速度を見てみよう。ASUSのメッシュWi-Fiルーター「ZenWiFi AX(XT8)」に、iPhone 11とPC(1)をWi-Fi接続し、iPhone 11ではフルHD、PCでは4Kのストリーミング動画を再生してみた。

この時点では、最大1201MbpsのWi-Fi 6で通信できる「ZenWiFi AX(XT8)」だけに、全く問題なく動画が再生できていた。

 本題はここからだ。4K動画を再生しているPCとは別にPCをもう2台用意し、うち1台のPC(2)をZenWiFiにWi-Fiで接続、もう1台のPC(3)を1000BASE-Tの有線LANで接続して、この間でiPerf3を使って、通信速度を計測してみた。また、Wi-Fi接続のPCでは、Googleスピードテストも実施している。

【検証環境】


    ●動画視聴スマートフォン(iPhone 11)
    インターネット上のフルHD動画を再生
    接続状況:Wi-Fi 6(リンク速度1201Mbps)

    ●PC(1)
    インターネット上の4K動画を再生
    動画再生中、および再生後にGoogleスピードテストで速度を検証
    接続状況:Wi-Fi 6(リンク速度1201Mbps)

    ●PC(2)
    Wi-Fiとルーターに負荷を与えるため、PC(3)との間でiPerf3を実行
    接続状況:Wi-Fi 6(リンク速度1201Mbps)

    ●PC(3)
    Wi-Fiとルーターに負荷を与えるため、PC(3)との間でiPerf3を実行
    接続状況:有線LAN接続(1000BASE-T)
iPerfテスト(単位:Mbps)

※単位はMbps。iPerf3はパラメーター「-i1 -t10 -P10」で10回実施し、平均値を掲載

【Googleスピードテスト】
動画停止中
動画再生中

 動画再生中と停止中でそれぞれ測定してみたが、動画再生中の下りで、やや速度低下が見られる。4K動画の再生では、最大で60Mbps程度の帯域を使うことがあるので、フルHD動画再生中のiPhoneの方も合わせると、おおむね計算が合う。

 また、iPerf3では、可能な限り通信帯域を占有する。つまり800Mbpsを超えるダウンロードやアップロードをしながら、別の端末ではストリーミング再生をしているというかたちになるわけだ。

 こうなると、再生中の映像が途切れるなどの影響が出てもおかしくない。だが、PC・iPhoneともに動画再生が途切れたりすることはなく、全く影響はなかった。

 Wi-Fi 6に盛り込まれたOFDMAやMU-MIMOの技術により、複数端末からの通信で混雑していても、それぞれの端末で必要な通信をうまく処理しているわけだだ。なお、ZenWiFi AXも、本連載でも以前紹介しているASUS製Wi-Fiルーターの機能「Adaptive QoS」に対応しているが、今回の計測では機能がオフの状態で計測を行っている。

【結果のまとめ】


    ●動画視聴スマートフォン(iPhone 11)、PC(1)
    普通に動画を見る範囲で違和感を感じず
    もちろん、映像が途切れるなどの問題もなし

    ●PC(2)、PC(3)
    動画停止中は下り867.9Mbps、動画再生中は同725.9Mbps

 もし複数端末が同時に通信するような環境で、通信が途切れたり速度が落ちたりする場合、Wi-Fi 6対応ルーターを導入することで改善する可能性がある。なおWi-Fi 6は親機・子機ともに対応している必要があるので、スマートフォンやPCを新規購入する際には、Wi-Fi 6に対応しているかどうかチェックしておくといいだろう。

(協力:ASUS JAPAN株式会社)

石田 賀津男