スッキリ分かるWi-Fiルーター(ASUS編)

Wi-Fiでやってみた【ZenWiFi編】第3回

メッシュWi-Fi「ZenWiFi AX」の隠れた使い方? ノートPCで1000BASE-Tの限界速度を出してみる

 前回は、Wi-Fi 6に対応するiPhone 11をZenWiFiにつなぎ、リンク速度が1Gbpsを超えることを紹介した。

 今回は、ASUSのWi-Fi 6対応メッシュWi-Fiルーター「ZenWiFi AX」と組み合わせるWi-Fi子機として、やはりWi-Fi 6に対応するASUSのノートPC「VivoBook S15 S531F」を利用、「ZenWiFi AX+Wi-Fi 6に対応するノートPC」の実力を見てみたい。

 なお、メッシュWi-Fiでの計測に加えて、ZenWiFi AXならではの「ちょっと変わった使い方」でも速度を測定してみた。機能のトレードオフはあるものの、より高速な通信が可能となる。

ASUSのメッシュ対応Wi-Fi 6ルーター「ZenWiFi AX」
ZenWiFi AXは、最大4804Mbpsに対応するトライバンドのWi-Fi 6ルーター。単体でも使える1台構成と、メッシュWi-Fiを構成できる2台セットに加え、Amazon.co.jp限定のブラックモデルが販売されている。さらに1台の環境へ追加してメッシュWi-Fiを構成できる11ac対応の「ZenWiFi AC」もラインアップする

ノートPCでの実効速度は800Mbps

 まずは測定環境を紹介しよう。

 メッシュWi-Fi構成のZenWiFi AXに、Wi-Fiで接続したS531Fから、ZenWiFi AXに1000BASE-Tの有線LANで接続した別のPCに対して、iPerf 3を用いて通信速度を測定してみた。

 この環境では、S531Fのリンク速度は1201Mbpsで、iPerf 3で測定できた実効速度は800Mbps前後となった。

 少し前までは、500Mbps前後でも十分“高速”だったわけで、この速度がメッシュWi-Fiルーターで利用できる、というのは隔世の感がある。

ZenWiFi AXを「さらに高速に使う」使い方とは?

 ここで終わってもいいぐらいなのだが、ZenWiFi AXでは、ちょっと変わった使い方で、より高速な通信をすることもできる。

 改めての話になるが、本連載の第1回で述べた通り、ZenWiFiは、2台以上が連携して動作し、ユーザーがつなぐ先を意識せずWi-Fiの電波が届く範囲を拡大できる“メッシュWi-Fi”に対応している。だが、単体で販売されていることからも分かる通り、1台だけでもWi-Fiルーターとして動作できる。

 そして、ZenWiFi同士の通信(バックホール)専用に割り当てられる最大4804Mbpsの5GHz帯が、1台で使ったときには、Wi-Fi子機との通信に利用できるようになる。

 ちなみに、ZenWiFi AXが備える有線LANは2.5GBASE-Tなので、実質上はこの速度が上限になる。

ZenWiFi AXの4804Mbpsチャンネルに子機を接続

 さて、それでは早速、ZenWiFi AXを単体で動作させ、4804Mbpsの通信チャンネルに子機を接続してみよう。

S531F側のネットワークのプロパティ。2402Mbpsのリンク速度で接続できている

 検証に利用するのは、同じくS531F。このノートPCが搭載するネットワークアダプター「Intel Wi-Fi 6 AX201」は、最大160MHzのチャンネル幅に対応しているのがポイント。単体で動作させたZenWiFiに接続すると、2402Mbpsのリンク速度で接続できた。

 前述のように、メッシュWi-Fi構成時のZenWiFiには1201Mbpsでリンクするので、リンク速度の時点で2倍速、ということになる。

単体で動作させたときのZenWiFi AXの管理画面、上から順に、Wi-Fi 5のスマートフォン、S531F、iPhone 11を接続。ちなみにiPhone 11が対応するチャンネル幅は80MHzまでなので、リンク速度は1201Mbpsのまま

実測950Mbps、1000BASE-Tのほぼ限界を達成

 では、この環境での実効速度はどこまで行くか、実際に通信速度をiPerf 3で測定してみた。有線LANがZenWiFi AXの有線LANの上限である2.5GBASE-Tではなく、1000BASE-Tとなる点には注意してほしい。

 肝心の結果だが、実効速度はおおむね950Mbps。1201Mbpsでリンクした。1201Mbpsでのリンク速度における実行速度と比べて、150Mbps高速と言うことになる。

 LAN接続の1000BASE-Tがボトルネックとなり、リンク速度の増分ほどは高速化していないが、それでも150Mbpsというのは有意な数字だ。メッシュWi-Fiを使わないトレードオフ、という条件はあるものの、どうしても速度が欲しい場合に検討できる手と言える。

2402Mbps接続時にiPerfで計測したデータ。1000BASE-Tの有線LANの限界に近い速度をマーク

 最近は公称で1Gbpsを超えるインターネット接続サービスが広がってきており、状況によっては、1Gbps近い、あるいはそれを超える実効速度でインターネットが利用できる場合もある。ZenWiFi AXは、2.5GBASE-T(2.5Gbps)に対応する有線ポートが用意されている。NTT東西が提供する「フレッツ光 クロス」をはじめ、1Gbpsオーバーのインターネット通信環境が現実的になってきているので、1Gbpsを超えるWi-Fi 6の速度をより活かせる場所が、今後は増えていくはずだ。

 なお、最初に記した通り、ZenWiFi AXでメッシュWi-Fiを構成した環境で使う場合、Wi-Fi子機とのリンク速度は最大1201Mbpsとなり、、最大4804Mbpsの5GHz帯はZenWiFi同士が通信を行うバックホールとして占有される。今回の「2402Mbps」というリンク速度は、「こうしたこともできる」という参考にしてもらうのがいいだろう。

(協力:ASUS JAPAN株式会社)

石田 賀津男