被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
それってネット詐欺ですよ!
人情あふれるストーリーに感動して応援のために募金した
2019年4月12日 06:00
2017年の冬、SNSである出来事がシェアされました。27歳のケイトさんはフィラデルフィアの友人のところへ向かう途中にガソリンが切れてしまいました。ガソリンスタンドまで行くしかないと歩こうとしたときに、ホームレスに声をかけられます。
彼の名前はジョニーさん。自分がガソリンスタンドでガソリンを買ってきてあげるから、車で待っているようにとのこと。女性が一人歩きするのは危険だということで、申し出てくれたのです。
このとき、ケイトさんは現金を持っていませんでしたが、なんとジョニーさんは手持ちの全財産20ドルを使ってガソリンを買ってきてくれました。ケイトさんは必ず返しに来ると言い、無事フィラデルフィアへ向かいました。
その後、ケイトさんはジョニーさんにお金を返しつつ、交流をしたところ、彼の人柄に感動。彼が仕事や住居などを得られるように、ボーイフレンドのマークさんと一緒にクラウドファンディングサイトで寄付を求めました。当初は1万ドルを目標にしていたのですが、みるみるうちにお金が集まります。話に感動し、クラウドファンディングも盛り上がったので、1万4000人が合計40万ドルも募金したのです。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
2018年11月、ケイト、ジョニー、マークの3人全員は起訴されました。この美談を偽造し、詐欺の寄付を募ったためです。
様子がおかしくなったのは、8月のこと。ジョニーがケイトとマークを訴えたのです。40万ドルのうち、7万5000ドルしか受け取っておらず、2人が新車の購入や旅行、カジノに使い込んでいるというのです。それで検察が調査したところ、最初の美談から何からすべてがでっち上げだったことが分かりました。しかも、マークはケイトとその8月に別れたのですが、ケイトの家から出て行かないので不法侵入で訴えられるなど、どろどろ状態になっています。
まず、先にお伝えすると、このクラウドファンディング「ゴーファンドミー」によると、詐欺行為は全体の0.1%以下しかないということです。さらに、詐欺が発覚した場合は、返金されます。今回も、全員に全額が返金されました。
募金した人は被害を回復できたので、それほど深刻な状態でありませんが、それでもネット詐欺に引っかかっていることには変わりありません。いつか、返金されないようなネット詐欺の被害に遭う可能性が高いと言えます。
ネット詐欺は、あらゆる形態で進化しています。特にお金が動くところは、虎視眈々と狙っています。お涙頂戴でお金を盗むというのは昔からの常套手段でもあります。昨年末、中国で貧しい少女が泣いている写真と「リンゴが売れなくなる」という説明文とともに、リンゴの購入をお願いするサイトが登場しました。これもお涙頂戴式詐欺で、普通のネットショップ業者が仕掛けたものでした。とはいえ、クラウドファンディングやネットショッピング、ネットバンキング、オークションサイトなど、人によっては手放せなくなっていることでしょう。
やはり、デジタルリテラシーを身に付け、可能な限り自己防衛することが大切です。とはいえ、今回の件はテレビ局まで巻き込まれてブームになったので、個人で見抜くのは困難かもしれません。しかし、きちんとしたプラットフォームを利用しているのであれば、今回のように被害が回復される可能性が高まります。募金する金額も、小遣いの範囲内であれば、万一の際も諦めがつきます。
しかし、このような話がクラウドファンディング外で持ちかけられた場合は注意しましょう。SNSのみでつながっている面識のない相手や、ばらまかれている迷惑メールで引っかかった場合、被害の回復は見込めません。何かお金を動かすときは、信頼できるプラットフォームで行うべきです。また、イレギュラーなケースでは相手を信用しているかどうかにかかわらず、家族に相談・報告することもとても効果的です。
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NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)
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