被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

絶対に住所を入力していないアダルトサイトからはがきが届いた

 アダルトサイトを閲覧するために、メールアドレスを登録すれば無料とのことだったので、入力してしまいます。しばらくそれっぽい画面を操作していたら、課金のメッセージが出たのでネット詐欺と判断。サイトを閉じました。個人情報はもちろん、クレジットカード情報も絶対に入力していません。今後の迷惑メールは完全無視を貫くだけです。

(「いらすとや」より)

 一見、きちんと対策しているようですが、後日、自宅にそのアダルトサイトを名乗るはがきが届き、入金を促されるケースがあります。他には、アダルトDVDのダイレクトメールだったり、アダルトグッズのカタログだったりします。

 ユーザーは恐怖を覚えるでしょう。絶対に匿名の状態でアクセスしたはずのアダルトサイトに自宅を突き止められるとは思ってもみなかったはずです。はがきで済めばいいですが、直接、人が来る可能性だってあります。世の中には、インターネットのアクセス記録から、相手の全てをつかめる技術があるのでしょうか。

 そうではありません。これは、メールアドレスを元に、名寄せをしたのです。本連載でも何度か紹介したとおり、大企業でも情報漏えい事件を起こしています。日本企業でも、数百万人・数千万人規模で漏えいしたことがあります。IDとパスワードが漏えいし、不正アクセスに利用されることも多いのですが、通販サイトなどでは住所や氏名、性別、生年月日まで漏えいしたことがあります。この情報を手に入れ、アダルトサイトから収集したメールアドレスを検索すればよいのです。運良くマッチしたら、個人を特定できた可能性が高まります。

 『自分の個人情報をごっそり持っている相手に、AVを見ている姿を録画された!』で紹介したように、筆者のところにも住所、氏名から電話番号まで書かれたネット詐欺メールが来たことがあります。これは日本語が変なので、海外からのネット詐欺だと分かりましたが、日本語が完璧で、しかもリアルなはがきで届いたらパニックになるのも頷けます。

 怪しいサイトに入力する際は、それ専用のメールアドレスを利用してください。プライベートやビジネスで使っているメールアドレスは絶対に入力してはいけません。それさえ気を付ければ、この手のネット詐欺は簡単にシャットアウトできます。

 時々、情報漏えい対策として、Gmailのアドレスは“エイリアス”という機能を使って無限にバリエーションを作れるというワザが紹介されることがあります。「yanagiya○○@gmail.com」というアドレスに「yanagiya○○+site01@gmail.com」のように文字列を付け足しても、送受信できるというものです。しかし、情報漏えい対策にはならないので注意してください。「+」の付いた文字列を削除する処理を追加すればいいだけだからです。

 一人暮らしならまだ無視を突き通すこともできますが、実家など家族と暮らしている人だと顔面蒼白になるでしょう。とはいえ、一度支払ってしまうとカモリストに登録され、さらに手を変え品を変えてネット詐欺が殺到することになります。きちんとしたデジタルリテラシーを身に付け、普段から自衛を心がけましょう。そして、ご自分はもちろんご両親などにも、さりげない会話を通じて情報を共有してあげてください。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。