被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

「ETCカードの有効期限について重要なお知らせ」というメールが届いた

 ある日、「『ETCカード有効期限について』重要なお知らせ」というメールが届きました。有効期限について確認するように書かれており、URLが記載されています。URLを開くと、クレジットカード情報を求められました。確かに、クレジットカード付帯のETCカードなので、カードの番号や有効期限、セキュリティコード、氏名、住所、電話番号などを入力しました。しかし、一向に新しいETCカードが送られてきません。それまで使っていたETCは引き続き利用できるので、更新されたのかと特に気にしませんでした。

このようなメールが届いたので、スマホでアクセスし、カード情報や個人情報を入力しました(画像は、「ETC利用照会サービス」ウェブサイトの注意喚起文

 これは、消費者庁やETC利用紹介サービスのウェブサイト上で注意喚起が行われているネット詐欺です。もし、車に乗っておらず、ETCカードを使っていないのなら、迷惑メールと分かるので、無視すればいいでしょう。問題は、実際に使っている場合です。

 ETCカードにも有効期限があるので、この手のメールが信憑性を帯びてきます。しかし、実際はほとんどの場合、有効期限が切れる数週間前に自動的に更新されて新しいカードが送付されてきます。実際の有効期限はETCカードに記載されています。

 ETC利用紹介サービスのウェブサイトでは、リンクを開くとコンピューターウイルスに感染する可能性があると記載されていますが、多くはフィッシング詐欺のサイトが表示されます。

このようなメールが来てもURLを開いてはいけません

 対策としては、詐欺メールなので無視するだけです。リンクをクリックしてしまったとしても、何も入力しなければ問題ありません。万一、ワンクリック詐欺(『ウェブサイトを閲覧していたらいきなり請求画面が開いた!』参照)の画面が表示されても、慌てず無視しましょう。

 見破り方はいろいろあります。サンプル画面ではきちんとした日本語になっていますが、多くは翻訳サイトを利用した変な日本語になっています。加えて、メールアドレスも無茶苦茶な文字列を使っていることが多くなっています。とはいえ、文章が「確認よろしく」となっているのがうまいところです。更新のため、と書くと慎重な人だと不審に思うかもしれませんが、確認してくれ、という指示であればとりあえずURLを開きそうになるでしょう。もし、本当にETCカードの情報を確認したいなら、自分でカード会社を検索してアクセスし、ログインしましょう。くれぐれも、怪しいメールに記載されているURLをクリックしないようにしてください。

 また、消費者庁の言うとおり、ウイルスに感染するサイトへ繋がるケースがあるとしても、PCのセキュリティ機能が有効になっていれば、ほぼシャットアウトできます。とはいえ、前例のないウイルスの場合は感染の可能性があるので、やはり迂闊にURLを開かない、という心がけも大切です。

 このパターンの詐欺は、ETCカードに限らず、いろいろと応用できます。クレジットカードや利用しているパスワード、会員権などの有効期限が切れるとかたることも考えられます。メールの内容を鵜呑みにせず、大丈夫なのか? という視点を持つことが大切です。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。