被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
それってネット詐欺ですよ!
1億7000万円もらえると信じて手数料1530万円を仮想通貨口座へ振り込み
2019年8月9日 06:00
2019年7月、山形県警は50代女性が1530万円のネット詐欺被害に遭ったことを発表しました。「1億円あげますので受け取ってください」などと連絡をして、返信してきた人から手数料などをだまし取るネット詐欺です。
余命がないので遺産を受け取って欲しいとか、クーデターが起きたので全く関係ない人の口座を介して資金を移動したいので手数料を払うとか、社会に善意を還元したいなど、いろいろな理由を付けてきます。今回は、会社の経理で1億7000万円が浮いたのであげます、というメールが来たそうです。後日、さらに9000万円差し上げますというメールも来ました。信じた女性は、手数料として1万円~150万円を二十数回振り込んでしまったのです。
何度も振り込んだ最初の方は、個人名義の口座に振り込んでいたそうです。しかし、その後、仮想通貨であるビットコインの交換業者が持っている口座に振り込むように指示されました。個人名義に振り込んでいたときは被害女性の名義でしたが、ビットコイン交換業者に振り込む際は別名義で振り込ませたのです。
ネット詐欺で銀行に振り込ませると、犯人は現金を引き出す必要があります。しかし、万一、警察にばれていると現場で逮捕されてしまいます。そのため、「出し子」と呼ばれるアルバイトを雇い、ATMから引き出させます。これはリスクもありますし、手間もかかります。
そこで、犯人が持っているビットコインの口座に直接入金してもらい、換金事業者に両替させ、即使えるようにするようにしたのです。ビットコインは資金の流れを追うのが難しく、賢い手法だと言えます。もちろん、犯罪に使われないように、ビットコイン交換事業者は身分確認をしています。では、すぐに捕まえられるのでしょうか?
もちろん、そんなことはありません。銀行口座と同様、仮想通貨の口座も犯人名義ではないでしょう。その場合、どのようにして口座を開設しているのでしょうか? 実は、今回の事件で、被害女性は身分確認とだまされて、運転免許証の写真を犯人に送ってしまっているのです。そのようにして、違法に入手した身分証を元に口座を作っていることも考えられます。
約3カ月間、メールのやりとりを続けて、二十数回1530万円を振り込んだのに現金をもらえなかった女性は警察に相談し、ネット詐欺であることに気が付きました。
まず、この手のネット詐欺があることを知っていれば、詐欺には遭わなかったのが残念で仕方がありません。また、金品を先に求められたら、それも詐欺の典型例。もし本当に手数料がかかるなら、くれると言っている金額から引いてもらえばいいだけです。振り込みの依頼人を自分でない名前にするのもありえません。
メールをばらまき、返信が来たときだけ適当に対処するだけで、ビットコインでリスクなく大金をゲットできるのであれば、今後ますますネット詐欺が増えてしまいます。この手のネット詐欺事例を、可能な限り広い層で共有することが、被害を抑止する有効な手段です。ぜひ、ご両親などに事例を紹介してあげてください。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
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NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)
高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。