被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

100%品質保証、満足保証をうたうハイブランド時計コピー商品のDMが来た

 ロレックスのデイトナが4万5000円、フランクミュラーのヴァンガードが3万5000円、パテックフィリップが驚きの2万5000円。こんな高級時計を激安で売っているネットショップが存在します。

 筆者が長く使っているメールアドレスには、国内発送や2年間の品質保証をうたうダイレクトメール(DM)が届きます。筆者の名前は分かっていないようなので、どこかから漏えいしたメールアドレスのリストを安価に購入して手当たり次第にばらまいているようです。

 URLを開くと驚くと思います。ウェブサイトがものすごくしっかりと作られているのです。あらゆる高級時計に加え、ルイ・ヴィトンやエルメス、シャネルといったブランドのバッグや財布も扱っています。大量の品数の上、それぞれの商品ページも作り込まれています。写真の見た目も本物そっくりです。

 とはいえ、これらは全て詐欺サイトです。商品を選択すると、在庫を確認して報告するために必要だというメールアドレスや名前を入力させられます。その返信メールで、振り込み先が届きます。入金を確認すると、国際速達郵便の問い合わせ番号をメールで送信するという流れです。

 つまり、決済口座はウェブサイト上で確認できないのです。これはネット詐欺に使う口座はある程度使うと凍結されてしまうので、使い捨てにするからです。もちろん、ネットで検索されて情報が出回るのを防ぐ目的もあるでしょう。振込口座は個人名の普通口座です。多くは外国人の名前の名義になっており、本来はこの時点で怪しむべきです。

 お金を振り込んでも、商品が届くとは限りません。問い合わせ電話番号など、そもそも記載されておりません。メールで問い合わせをしても、普通は無視されます。場合によっては、「そのランクの在庫がなくなったので、もう5000円振り込んでくれれば、ワンランク上の商品を送れる」とさらに被せてきます。もしくは、「発送したのに宅配業者が悪い!」と逆ギレしてうやむやにします。

 まれに、せっつくと本当に商品を送ってくるところもあります。しかし、目も当てられない粗悪品であることがほとんどです。絶対に写真通りの商品など届きません。クレームを入れると、送料元払いで送り返せ、と言われる場合もありますが、もちろん返品交換や返金になど絶対に応じません。

有名ブランド品を精巧に模したスーパーコピー品を扱っているウェブサイトはたくさんあります。画像はイメージで、DMのウェブサイトではありません。

 ほとんどのケースでお金を盗まれ、もし商品が来ても粗悪品の可能性が高いのです。さらに、海外から輸入する場合は税関で止められることがあります。すると、コピー品であると連絡が来たり、保管中の倉庫代を求められたりします。いずれにせよ、コピー品に手を出すのは割が合わないと考えましょう。

 ブランド品をコピー販売することは違法です。商標権を侵害しているからです。そして、偽物と知りながら自分で買ったコピー品をフリマアプリなどで販売するのも処罰の対象になります。

 あり得ないほど激安でブランド品が売られているということはない、と肝に銘じてください。欲に駆られて、怪しいウェブサイトで購入するからネット詐欺の被害に遭ってしまうのです。可能な限り、正規サイトや大手のショップサイトを利用しましょう。

 もし、本物とうたっているのにコピー品が送られて来た場合は返品し、返金してもらいましょう。返品や返金に応じない場合は、消費生活センターに相談し、解決しない場合は弁護士などに相談するしかありません。明らかに犯罪であれば、都道府県ごとに設置されているサイバー犯罪相談窓口に相談する手もあります。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。