被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

新型コロナウイルスの治療薬や予防薬、診断キットなどを販売する詐欺が流行中

 アメリカでは、日本よりも露骨で規模が大きい新型コロナウイルスに便乗した詐欺が発生し、FDA(米国食品医薬品局)が警告しています。

 アメリカでも外出が自粛されており、新型コロナウイルスにはまだFDAによって承認されたワクチンや治療薬はありません。しかし、この手の商品があると嘘をついて、名前や住所、クレジットカード情報を盗もうとするフィッシング詐欺が発生しています。ネット詐欺に遭わないためには、怪しいメールに記載されているURLは開かないようにしましょう。

 しかし、問題なのは、実際に製品を発売しているところがあるということです。FDAは法律に違反する製品に警告書を出しており、5月16日現在で51件が報告されています。

 エッセンシャルオイルやシルバー製品、ハーブ製品、鼻スプレー、CBD製品、はちみつ、栄養補助食品など様々な商品が警告を受けていました。各販売サイトでは、「新型コロナウイルス患者が臨床的に改善する」とか「細菌感染による死亡リスクを防ぐ」「免疫力が低下した人は○○シロップを摂取する必要がある」「最新の研究により、新型コロナウイルスに感染しても健康なままでいられる6種類の漢方が見つかりました」などと謳っています。

FDAは新型コロナウイルスに関する不正な製品のリストを公開しています。

 FDAは、これら製品は主張通りに機能しない可能性が高いと断じています。また、主張している成分が身体に悪影響を及ぼすといったことを懸念しています。さらに、これらの製品を信じることで本来必要な医療行為を行わず、状況を悪化させてしまう可能性もあります。そのおかげで、家族もリスクに晒されてしまいます。

 日本では、このような露骨な製品はまだ出回っていません。しかし、メディアで治療薬や予防薬について情報が出始めれば、便乗するネット詐欺が現れかねません。

 まず、世の中に無いものを自分だけが先行して得られるような妄想はしないようにしましょう。何らかの理由で説得してきますが、騙されないでください。承認されていないのであれば、それは効かないか、さらに悪いことに有毒である可能性があります。また、人間用でないものを勧められることもあります。

 例えば、水族館の清掃に使われるリン酸クロロキンを飲もうとする人がいるようです。当たり前ですが、人間が摂取すれば、死んでしまうこともあり得ます。3月には、アリゾナ州の夫婦がリン酸クロロキンを飲み、女性は重篤な状態になり治療中、男性は死亡しました。

 FDAが新型コロナウイルス詐欺に引っかからないように紹介しているヒントをピックアップするので参考にしてください。

  • 病気を治療できると主張する製品を疑う
  • 個人の声は科学的証拠の代わりにはならない
  • 素早く治る、という治療法は疑わしい
  • 科学の革新的な進歩や秘密の成分を謳った奇跡の治療はおそらくデマ

 不安なときは、怪しいものにも飛びついてしまいがち。自分は知識があると思い込んでいる人も、ダブルチェックをしないとそれっぽい情報に引っ掛かってしまいます。情報の扱いに関するリテラシーを高め、ネット詐欺に引っ掛からないようにしましょう。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。