被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

TikTokのフィルターを解除して「裸」を見れる? 宣伝動画から誘導してマルウェアに感染させる手口にだまされる人続出

 TikTokで「Invisible Body Challenge」という動画をアップロードしている人がいます。TikTokにアップロードする動画に「Invisible Body」というフィルターを適用すると、人の肌部分がぼやけた背景画像に置き換わります。この状態で、服を脱いだ映像を配信するというチャレンジです。TikTokで検索してみると、「#invisiblefilter」タグの動画は3000万回以上も再生されていました。

 問題はこのフィルターを解除できるとうたう動画が投稿されたことです。「unfilter」というツールを使えば、フィルターを解除して、肌の部分を見られるというのです。この動画は2つのTikTokアカウントから投稿され、100万回以上再生されたようです。

 そして、米国のコミュニケーションサービス「Discord」のサーバー「Space Unfilter」に参加するように誘導します。そこでは、実際にフィルターを解除したように見えるサンプル動画が投稿されていました。

 そこからリンクされているGitHubでオープンソースのツールが公開されていました。実際に多くの人が訪れており、GitHubのトレンド欄にも表示されていたのです。しかし、このツールをダウンロードしてインストールしてした人は、フィルターが解除できないことに気が付きます。

 これは大掛かりなネット詐欺で、セキュリティ企業のCheckmarxによると、公開されているツールはマルウェア「WASP Stealer」に感染するものだったのです。このマルウェアは、Discordのアカウント情報に加え、クレジットカード情報や暗号通貨のウォレットコード、ログイン資格情報などを外部に送信します。

 すでに、TikTokの詐欺アカウントやDiscordサーバーは削除されていますが、削除前には3万2000人のメンバーがいたそうです。TikTokerの裸が見たいがために、3万人以上が誘導されてしまったのは驚きです。

Invisible Bodyのフィルターを解除できるとうたう動画が出回りました。画像はCheckmarxの記事より

 まず、怪しいプログラムはインストールしない、という基本の対策を守りましょう。何も、金銭を直接奪うことだけがネット詐欺ではありません。サイバー犯罪者からすれば、マルウェアに感染させられればお金儲けの方法はいくらでもあるのです。欲望に目をくらませず、自衛しましょう。

 TikTokに限らず、動画や画像にフィルター加工ができるアプリのなかには、Invisible Bodyのようなフィルターをかけても、加工前の動画が外部に送信されてしまう怪しいものが存在する恐れがあります。今回の詐欺がうたっていたように、後から効果を解除して「裸」の映像に戻してしまえるような機能を、TikTokが実装しているとは思えません。しかし、悪意を持った動画加工アプリが、フィルタの効果を後から解除可能にしているということは、あり得ない話ではありません。

  Invisible Body Challengeは、スリリングなチャレンジとして行われているようですが、絶対に漏えいさせたくない映像は、撮影しない・投稿しないに越したことはありません。怪しいプログラムはインストールしない、漏えいさせたくない映像は撮らない・投稿しない。アプリを利用する際は、このような基本的な点に気を付けましょう。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

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※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
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