被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
MMD研究所の調査結果や座談会から感じたこと
気軽に家族に質問できると、シニア層も安全に楽しくスマホを活用できる
2025年2月14日 11:50
MMD研究所が2月6日、「通信×シニア世代の勉強会」をメディア向けに開催しました。シニア層のスマートフォン利用状況などに関する調査の結果が紹介されたほか、実際に2人のシニアユーザーとWeb会議ツール「Zoom」でつなぎ、リアルタイムでいろいろと質問する座談会も実施されました。今回はこの勉強会のレポートをお届けします。
シニア層のスマホユーザー、7割がトラブル・困りごとを経験
まず、2024年12月に行われた「2024年シニアのスマートフォンの利用に関する調査」「2024年シニアのスマートフォンのセキュリティに関する調査」(調査対象は予備調査が60~79歳の男女1万人、本調査がスマートフォン所有者1200人)の結果が報告された。
シニアのモバイル端末所有率は95.9%と高い。その大部分がスマートフォンで、内訳はAndroidが64.8%、iPhoneが28.8%。日本では、若年層はiPhoneの方が多いのだが、シニア層は圧倒的にAndroidが多い。
機種の内訳も紹介されたのだが、シリーズとモデルが混在しており、正確なランキングは分からなかったものの、AQUOSシリーズやXperiaシリーズの人気が高かった。
シニアが契約しているサービスはNTTドコモがトップで、ワイモバイルとUQ mobileが続き、コストの安いサブブランドの人気も伺える。
契約した場所は、過半数がキャリアショップだった。オンラインサイトで契約した人も一定数いるものの、やはり直接ショップで対面で話をして契約する人が多いようだ。
シニアがスマホの機能を利用するうえでサポートを必要しているものとしては、ダントツで多いのが「ポイントを貯める」こと。ポイ活への関心が高いようだ。次いで、メッセージアプリ、写真・動画の撮影・閲覧においてもサポートを必要としているという。
トラブル経験のアンケートでは、トラブルや困りごとを経験したことがあると回答した人が72.4%おり、そのなかで怪しいメッセージやリンクを受け取った人は32.6%いた。ネット詐欺は年齢問わず仕掛けてくるので注意が必要だ。
不要なオプションまで契約させられてしまう?シニアユーザーのトラブル話も聞くが……
座談会に参加してくれたのは、岐阜県の60歳の女性・たぐちさんと、東京都の66歳の女性・ふかさくさん。実際にシニアユーザーの声を聞けるのは貴重な機会だ。なお、座談会にはスマホのZoomアプリからオンラインで参加しているので、その時点でデジタルリテラシーが低いということはないと言えそうだ。
2人ともiPhoneを使っており、契約しているキャリアはソフトバンクだった。契約した場所も、どちらも家電量販店とのこと。家電量販店は客の要望を聞き、複数のキャリアやブランドから最適なプランを教えてくれるので利用しているという。そのときの決め手は、料金はもちろん、キャッシュバックなどの特典を重視。今使っている端末に関しては、端末を2年で返却するプログラムがお得なので決めたそう。
シニアが携帯ショップに行くと、余計なオプションを勧められて高いプランを契約してしまったというトラブルの話も聞くが、2人は問題なかったという。
LINEや電話、Instagram、PayPayを2人とも活用。そのほか、たぐちさんはTikTokやApple Musicを使っており、ふかさくさんはYouTubeやゲームなどを使っているという。想像以上にスマホを使いこなしており、ふかさくさんは自宅だけでなく病院の待合室での待機時間などでも利用し、1日に3時間半ほど使っているそうだ。難しい操作で分からないことがあるものの、そんなときはお子さんに聞いているという。
このように、座談会に参加された2人はいずれもスマホをとても活用しており、特にトラブルもないようだった。これはひとえに、子供たちに気軽に質問できるためだろう。シニアの女性は気軽に他の人に聞くことができるので、トラブルを回避しやすい。一方、シニアの男性は「俺は大丈夫」と頑固さが出て、分からないことや不安なことも周囲に相談できないまま、ネット詐欺に巻き込まれてしまう事例をよく聞く。次の勉強会では、男性にもお話を聞いてみたいところだ。
シニアユーザーがどれだけスマホを使いこなせるかは、本人の興味や目的のほかに、ショップのスタッフを含めて、周囲に相談できる人がいるか、という要素も大きいと感じた。シニア層のご両親がいる人は、ぜひ、ネット詐欺についての情報を共有したり、スマホの使い方を教えてあげるなど気にかけてあげてほしい。
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参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと