被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

「いいねを押すだけ」「スクリーンショットを撮るだけ」でお金が稼げる!?

 SNSや動画広告で、「いいね」を付けたり、スクリーンショットを撮って送ったりするだけで報酬が得られるという募集を見かけることがあります。1作業で100円~200円程度と、大きな額ではありませんが、隙間時間にできる簡単なことで稼げるのなら、大助かりです。あらかさまな「裏があるうまい話」と感じるような提示金額でもないので、深く考えずに応募してしまう人がいるかもしれません。

 これは、簡単なタスク(作業)でお金が稼げると虚偽の募集で人を集め、いろいろな口実でお金をだまし取ろうとする“タスク詐欺”です。

 国民生活センターが9月4日、タスク詐欺に関する啓発ページを公開しました。それによると、2020年に寄せられたタスク詐欺に関する相談は1341件でしたが、年々増加し、2023年は3694件になりました。2024年も、昨年以上のペースで相談件数が増加しています。相手から請求された金額の平均も、2020年は約28万円でしたが、2024年には約106万円になりました。

タスク詐欺に関する相談の件数は右肩上がりに増えています

 タスクをしてお金を稼ぐはずが、なぜ、逆にお金を取られてしまうのでしょうか。その手口を知っておけば、ネット詐欺に気が付くことができます。

 国民生活センターが紹介している事例では、「動画SNSを見るだけで報酬を得られる」という広告を見た30代女性が、メッセージアプリで申し込みをしました。指示されたタスクをこなすと、実際に数百円の報酬を受け取ることができたそうです。その後、高額報酬のタスクを紹介されました。指定されたアプリに登録して1万円を支払うと、驚くべきことに、その1万円に数千円の報酬が上乗せされて振り込みがありました。

 しかし、その次に3万円を支払うと、損害が出たと言い掛かりを付けられて、処理費用として15万円を要求されました。ここから、次のタスクで返金するからと言われ40万円、報酬を引き出すために必要と言われ70万円とお金を要求され、生活費全てを振り込んでしまいました。もちろん、ネット詐欺なので、最終的に何も得ることはできません。

こんな口実でお金を要求してきたらタスク詐欺かも

 国民生活センターによると、タスク詐欺でお金を要求してくる口実としては、主に3パターンあるそうです。

  1. タスク実行前に振り込みさせるパターン:「高額報酬のタスクは事前に送金が必要である」
  2. タスク実行後に振り込みさせるパターン:「ミスしたために処理費用が必要である」
  3. 報酬を得る段階で振り込みさせるパターン:「報酬を引き出すためには費用がかかる」

 前述の事例は、これら3つのパターンを段階的に使っている典型的な手口と言えそうです。

 まず、高額報酬のタスクを行うためのアプリ登録の際に金銭を要求してきました。仕事を受けるにあたって事前に送金が必要だという時点で怪しいのですが、一度、元金とともに報酬が上乗せされて返ってきています。こうして信用させ、以降の金銭の要求に対する抵抗感を失わせているのです。

 次に、タスクが失敗して損害が出たため、処理費用が必要です、と振り込みを要求してきます。しかし、次のタスクが成功すれば処理費用以上のお金が支払われると言って、安心させるのです。

 最後に、タスクが処理され、多額の報酬が発生していると嘘をついたうえで、その報酬を引き出すための手数料が必要だとして、さらなる振り込みを持ち掛けます。この段階まで行ってしまうとお金が返ってくることはなく、詐欺に気が付くかお金が無くなるまで、何度でも振り込みを要求されることでしょう。

 最初の1、2回は実際に報酬が振り込まれたことで信用してしまい、とことんまでお金をつぎ込んでしまうのかもしれません。しかし、いいねを押したり、意味のないスクリーンショットを撮って送ったりするだけで何十万円も稼げるわけがありません。

国民生活センターが公開している啓発資料のポスターです

タスク詐欺に騙されないために

 詐欺に遭わないためにはまず、簡単に稼げる、という言葉を全て疑ってください。タスク詐欺は、金額としてはそれほど大きくないリアリティのある額ながら、「簡単な作業」という点に魅力を感じさせる点が特徴の詐欺です。簡単なはずの作業が「失敗した」として振り込みを要求されたとき、「次はきっと成功できるから大丈夫だ」と思ってしまうのかもしれません。

 そして、安易に個人情報を開示しないようにしましょう。とはいえ、報酬を受け取ろうとすれば銀行口座情報などを教える必要が出てくるため、そもそも、タスク詐欺に引っ掛からないようにすることが重要です。

 もし、お金を稼ごうとしたのに振り込みを求められた場合は、消費者ホットライン「188(いやや!)」番に相談してください。最寄りの警察の相談窓口につながる警察相談専用電話「#9110」に相談することもできます。くれぐれも、振り込む前に相談するようにしてください。

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと