被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

自分だけは大丈夫と思っているなら逆に危険!

肝に銘じておきたい「ロマンス詐欺被害に遭わないためのリテラシー」10のポイント

ネットで好意を寄せている相手、本物ですか?

 一時期、テレビ番組などで「ロマンス詐欺」がよく取り上げられていましたが、最近あまり見なくなっています。しかし、ロマンス詐欺の被害はいまだに増加傾向にあるのです。

 ロマンス詐欺とは、ネットで知り合った相手に好意を持ってるようにふるまい、親密になったあとで投資や援助といった名目でお金をだまし取る手口です。以前は、詐欺師がかたるプロフィールの多くがアメリカやナイジェリア、イギリスだっために「国際ロマンス詐欺」と呼ばれていましたが、今では日本人をかたるケースも増えています。

 2024年10月、秋田県横手市の50代の女性がSNSで外国人の男性と知り合いました。その後、投資に誘われ、翌11月から2025年1月にかけて合計6020万円相当の暗号資産をだまし取られてしまいました。パソコンの画面上では利益が出ているように表示されていたそうですが、その資産を引き出すためには先に納付金が必要だと言われたことで、詐欺であることが発覚しました。

 こうしたロマンス詐欺の被害者は、以前は女性が大多数だったのですが、投資話との組み合わせにより男性の被害も増えています。島根県松江市の50代の男性は、2024年10月にSNSで知り合った女性とやり取りを始め、暗号資産の投資を勧められ、数カ月間で1058万円相当の暗号資産を送金してしまいました。このケースも画面上では1000万円以上の利益が出ているように表示されていたそうです。

 これらのケースは被害者がともに50代ですが、40代や30代の人もロマンス詐欺の被害に遭い、私たちDLISに相談が寄せられることがあります。しかし、暗号通貨を送ってしまったなら、もう警察でも対応が難しいため、泣き寝入りするしかないのが実情です。

 ロマンス詐欺に遭わないためには、ネットリテラシーを身に付ける必要があります。SNSを見ていると、マッチングアプリで魅力的な異性と出会って親密になったり、暗号通貨に投資して大きく儲けた人は確かにいます。そんな人たちの投稿を見て羨ましがっている人が、ロマンス詐欺や投資詐欺を仕掛けられると、チャンス到来と目がくらんでしまう可能性が高まります。ロマンス詐欺のことを知っていても、引っかかってしまうのです。

 今回は、ロマンス詐欺被害に遭わないためのリテラシーを10のポイントにまとめて紹介します。もちろん、これらに当てはまるからといって必ず詐欺であるとは言い切れないないかもしれません。しかし今回は、ロマンス詐欺被害のリスクを回避することを最優先として、肝に銘じておきたいポイントとしてあえて断言しています。

「ロマンス詐欺被害に遭わないためのリテラシー」10のポイント

1)相手の身元は厳重に確認する
 オンラインで知り合った相手の身元情報は必ず複数の方法で確認しましょう。SNSアカウントが最近作られたものではないか、友人や投稿の履歴は自然か、プロフィール写真を画像検索して他人の写真が流用されていないかなどをチェックしてください。ビデオ通話を提案し、顔が見えるコミュニケーションを心掛けましょう。身元確認を拒否したり、さまざまな理由をつけて応じない場合は詐欺の可能性が高いです。

2)個人情報や恥ずかしい映像は渡さない
 どれほど親密な関係になったと感じても、身分証明書の画像や銀行のアカウント、パスポート番号などの情報は決して共有しないでください。また、女性でも男性でも裸の写真や動画の要求には応じないことが重要です。これらは後に脅迫材料として使われる可能性があります。一度送信したデータは完全に取り戻すことができないことを肝に銘じてください。

3)話の流れに矛盾が多いなら黄色信号
 相手の話に一貫性がなく、前言を忘れていたり、矛盾が目立つ場合は警戒すべきです。例えば、家族構成や職業、居住地などの基本情報が会話ごとに変わったり、過去の会話内容を覚えていなかったりする場合は要注意です。同時に複数の被害者とやり取りしている詐欺師は、誰に何を話したか混乱することがあります。

4)会話がテンプレっぽいなら黄色信号
 会話が不自然に感じられる場合は注意が必要です。過度に甘い言葉や、あなたのメッセージの内容に直接関係のない返信、あるいは質問に対して具体的に答えずに話題をそらすような場合は警戒しましょう。

5)実際に会うのを避けるなら黄色信号
 オンラインでの関係が深まっても、直接会う計画が具体化しない場合は警戒すべきです。突然の仕事の予定、急な病気、家族の緊急事態など、会う直前にキャンセルする理由が頻繁に出てくる場合は特に注意が必要です。遠距離を理由に会えないと言いながらも、感情的な関係や金銭的な支援を求めてくる場合は、ロマンス詐欺の典型的なパターンである可能性が高いです。

6)出会ったアプリから他のアプリに誘導されたら赤信号
 マッチングアプリやSNSで知り合った相手が、すぐに別のメッセージアプリへの移行を強く勧めてくる場合は非常に危険です。これは監視の目から逃れ、証拠を残さないための手段である可能性があります。特に、LINEや、Telegramなどの暗号化されたメッセージアプリへの移行を急かす場合は要注意です。

7)結婚資金、関税、手数料の話が出たら赤信号
 交際が進展し、突然「結婚のための資金が必要」「海外から送る贈り物の関税支払いが必要」「急な手術費用が足りない」などの金銭要求が始まったら、これは明らかな詐欺のサインです。特に「一時的な」支払いを強調し、あとで返すと約束するパターンは典型的です。正当な理由に聞こえても、それは巧妙に作られたストーリーである可能性が高いです。

8)暗号通貨やFXなどの投資話が出たらアウト
 「確実に儲かる投資がある」「特別な投資の機会を共有したい」などの話が出てきたら警戒してください。特に暗号通貨、FX、不動産投資などの高リターンを約束するものは典型的な詐欺手法です。「自分も投資している」「短期間で何倍にもなった」などの成功体験を語り、専用のウェブサイトやアプリに誘導してくる場合は確実に詐欺です。どんなに信頼関係があると感じても、投資の誘いには決して応じないでください。

9)突然相手にトラブルが起きたらアウト
 交際が進むと、突然「事故に遭った」「入院した」「旅先で財布を盗まれた」「親族が危篤」などの危機的状況が発生し、緊急の金銭的援助を求めてくることがあります。これは感情に訴えて冷静な判断力を鈍らせる手口です。特に、具体的な病院名や警察署名を明かさなかったり、第三者による確認を拒否するケースは明らかな詐欺です。

10)怪しいと感じたら警察や弁護士に相談する
 少しでも不審に感じた場合は、ひとりで抱え込まず専門家に相談することが重要です。警察のサイバー犯罪相談窓口や消費生活センター、弁護士などに相談することで、適切なアドバイスを得られます。特に金銭を送金してしまった場合は、すぐに警察や金融機関に連絡し、被害の拡大を防ぐ手段を講じましょう。また、家族や友人など周囲の信頼できる人に状況を打ち明けることも、客観的な判断を得るために有効です。恥ずかしさで相談を躊躇すると、被害が拡大する可能性があります。


 ロマンス詐欺に遭い、貯金を失ったり、巨額の借金を背負ってしまっては悲惨です。ネット詐欺には引っかからないという自信のある方も今一度確認し、ご両親など周囲のシニアの方たちにも、こうしたポイントを心に留めておいてもらうようにしてください。

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと