どうする!? ネットの誹謗中傷、最新事例で知る悲惨さとリスク
ネットで誹謗中傷を受けたらどこに相談すればいい? 困ったときの相談先と注意点まとめ
2022年5月31日 20:46
ネットで誹謗中傷を受けたとき、大きなショックを受けると同時にどうすればいいか困ることでしょう。とは言え、初めてのことだと何から手を付けていいのか分かりません。
そこで、今回は総務省のウェブサイトでまとめられている「インターネット上の誹謗中傷への対策」を参考に、どんな相談先があるのかを紹介します。
誹謗中傷の被害に遭って「悩みや不安を聞いてほしい」ときには
前述のウェブページには「インターネット上の誹謗中傷に関する相談窓口のご案内」として、状況別の相談先について解説したチャートが用意されています。
このチャートでは、誹謗中傷に遭った際の相談先として、「解決策について相談したい」「悩みや不安を聞いてほしい」の2通りが想定されていますが、まずは後者の、メンタル面で悩みを抱え、とにかく話を聞いてもらいたい場合の相談先について紹介します。
心に傷を負った、誰かに話を聞いてもらいたい、という場合は、厚生労働省の「まもろうよ こころ」に掲載されている連絡先にまずは相談してみましょう。
電話であれば、同サイトの電話窓口一覧にある「こころの健康相談統一ダイヤル」や「よりそいホットライン」などに相談できます。
電話で相談しづらい場合は、LINEやオンラインチャットでの相談も可能です。SNSでの相談を受け付けている団体として、「特定非営利活動法人東京メンタルヘルス・スクエア」や「特定非営利活動法人あなたのいばしょ」、「特定非営利活動法人BONDプロジェクト」などが用意しているTwitterやLINE、チャットなどへのリンク一覧も掲載されています。
団体によっては年齢や性別、対応時間が制限されていることがありますが、そうした制限なく匿名で相談できるところもあるので確認しておきましょう。
このほかには、本連載の『ネットの誹謗中傷に立ち向かうウェブサービス誕生、木村花さんの事件もきっかけになった「TOMARIGI」立ち上げの経緯』で紹介した誹謗中傷トラブルに悩む人のための体験・裁判事例共有サイト「TOMARIGI(トマリギ)」にアクセスしてみるのもお勧めです。
体験談を投稿・共有するコーナーのほか、誹謗中傷のトラブルに巻き込まれたら、どのように対処すればいいのか解説してくれるコンテンツ、裁判事例などが用意されているため、それらを参考にすることができます。
書き込みを削除したいときなどの相談先
次は前述のチャートにある「解決策について相談したい」場合の相談先について紹介します。
まず、解決策を求めるケースとしては主に3パターンがあります。具体的には、書き込みを削除したいケース、誹謗中傷をした人に損害賠償を請求したいケース、書き込んだ人を処罰して欲しいケースです。
書き込みを削除したい場合、自分で削除依頼を出したいとか、アドバイスが欲しいという場合は2つの相談先があります。
ネットトラブルの専門家に相談したい場合は総務省支援事業の「違法・有害情報相談センター」に連絡してみましょう。同センターは、インターネット上の違法・有害な情報に対して適切な対応を促進する目的で、相談を受けたり、アドバイスなどを行う窓口です。相談者が自分で削除依頼を行う方法を教えてくれます。
人権問題の専門機関に相談したい場合は、法務省管轄の「みんなの人権110番」に連絡しましょう。相談者自身による削除依頼の方法を教えてくれるほか、事案によっては法務局がプロバイダなどに対する削除要請を行ってくれます。
全国の法務局における面談だけでなく、電話やインターネットでも相談できます。「みんなの人権110番」は全国共通ダイヤルで、受付時間は平日午前8時30分から午後5時15分まで、番号は0570-003-110です。
また、「誹謗中傷ホットライン」では、日本国内・国外にかかわらず、ネット上の誹謗中傷に対して、プロバイダなどに利用規約に沿った削除などの対応を促す通知を行ってくれます。
書き込んだ人に損害賠償を請求したい場合は弁護士に相談するのが基本です。しかし、着手金をはじめ、弁護士費用は高額で手が出せない、という人もたくさんいます。まずは相談したい、もしくは依頼するお金がないという場合は「法テラス」に連絡してみましょう。
法テラスの正式名称は「日本司法支援センター」で、「法的トラブルを解決するための情報やサービスを受けられる社会の実現」という理念の元、問題解決への道案内をしてくれる組織です。
誹謗中傷に遭った場合、どんな対応策があるのかを教えてくれます。弁護士に依頼する場合でも、費用を分割払いにできるケースもあります。
身の危険を感じる、もしくは加害者を処罰してほしい、という場合は警察の力に頼るしかありません。最寄りの警察署や都道府県警察本部の「サイバー犯罪相談窓口」に連絡しましょう。
相談する場合は相談内容もきちんと整理すること
しかし、これらの相談先に連絡したうえでも解決しなかったという被害者にも筆者はたくさん会いました。そうした被害者の方々にヒアリングしたなかで、気が付いたポイントを紹介します。
誹謗中傷に遭った方はとてもつらいと思います。しかし、だからといってどこかの組織が自動的に正義を執行し、逮捕したり賠償金を取ってきてくれるというわけではありません。
連絡すれば、勝手に解決してくれる、と思い込んでいる場合は注意が必要です。あくまでも相談に乗ってくれるということなので、解決を強く要求してもどうしようもありません。相談窓口に合わせて相談する内容をきちんと整理することで、適切な回答をもらいやすくなります。
例えば、相談する際に、どんな誹謗中傷を受けたのかという証拠を残しておくことも重要になりますが、証拠の残し方については、本連載の「慌てて消すのは逆効果! ネット詐欺に遭ったときの証拠保全」を参照してください。
また、誹謗中傷の書き込みについて、SNSや掲示板などのサービスプロバイダに直接削除依頼を出す際の注意点については、「掲示板やSNS、ブログなどに投稿された自分への誹謗中傷コメントを削除するには?」で解説しています。
誹謗中傷対策として、2022年5月には侮辱罪を厳罰化する刑法改正案が衆議院本会議で可決されました。プロバイダ責任制限法の改正も2021年4月に成立し、誹謗中傷の被害者救済を図るための裁判手続きの見直しも進んでいます。
適切に対応し、弁護士に依頼すれば、誹謗中傷した相手を特定し、賠償金を取れるケースも増えています。ぜひ、目的に応じた関係機関に相談し、少しでも被害を回復できることを望みます。
ネットの匿名性を悪用する誹謗中傷が社会問題になっています。誰もが被害者になりえますし、無意識に加害者になってしまう可能性もあります。この連載では、筆者が所属する「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」が独自に取材した情報を共有し、実際に起こった被害事例について紹介していきます。誹謗中傷のない社会を目指しましょう。
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