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【使いこなし編】第216回

起動できなくなったPCを、Synology「BeeStation」のバックアップから復元する

 本連載では、Synologyのパーソナルクラウド「BeeStation」の活用を、第185回から実践している。本製品はNASの一種だが、インターネット経由で外部からも簡単にアクセスできるのが特徴で、「パーソナルクラウド」の呼び名は、その特徴にちなんでいる。

 前回は、Windows 11でBeeStationに保存したバックアップからの復元を、サードパーティーソフトとなるAcronis「True Image」を使って行った。前回行ったのは起動中のシステムを復元する手法だったが、True ImageではWindowsが起動できなくなってしまったPCも復元できる。今回はこれを実践してみよう。

今回はBeeStationから、起動できなくなったWindowsを復元してみる。もちろんトラブル前にバックアップとブータブルメディア作成は行っておく必要はある

USBメモリまたは光学ドライブを使って復元を開始

 PCの起動用に、USBメモリもしくは光学ドライブが必要になる。ここではUSBメモリを使って行ってみるが、使用中のWindows用には[ツール]セクションの「ブータブルメディアビルダー」から作成する。USBメモリには、WindowsPEと呼ばれる最小限の起動用WindowsシステムとTrue Imageが書き込まれる。必要な容量は2GB以下なので、適当なUSBメモリを用意して、中身は空の状態にしておいてほしい。作業中にUSBメモリを消去する操作はないので注意しよう。

 復元するPCはバックアップをとったPCと同一であることが原則だ。True Imageを使って異なるPCでもできないことはないが、結局Windowsは新規にアクティベーションが必要になるので、あまり便利ではない。

 故障してPCを買い換えるケースを考えると、異なるPCではすでにインストールされているWindowsを起動し、新規で使い始めた方がいいだろう。その後、True Imageも移行し、バックアップからファイル単位で必要なデータを復元すればいい。

 ちなみに、異なるPCで起動させる場合には、[ツール]セクション「Acronis Universal Restore」を選んで進めることになるが、ここでは扱わないこととする。

PCにUSBメモリを装着しておく。フォーマットして空の状態にしておこう
[ツール]セクションの「ブータブルメディアビルダー」を選択する
[シンプル]を選択。[詳細]からLinuxベースの起動に設定することもできる
USBドライブを選ぶ
容量は1.7GBだ。[実行]をクリックすると作成が開始される
作成が完了した

 起動トラブルが起きた時に備えて、作成したブータブルメディアは保管しておく。一度正常に起動ができるか確認しておくといいだろう。

 Windowsがまったく起動しない状態になったら、ブータブルメディアをUSBポートに接続した状態にして、PCに電源をオンにした直後に表示されるメーカーロゴ画面で特定のファンクションキーなどを押し、起動ドライブの優先順位を変更する画面を表示させる[※1]。たいてい[F12]か[Del]キーあたりが割り当てられているが、メーカーにより異なるので、取説もしくは画面表示で確認してほしい。

[※1]…… Windowsが正常起動できている環境では、起動スプラッシュ画面を確認することが難しい。その場合にブータブルメディアの起動を確認してみたい場合には、Windowsの設定から[システム]ー[回復]の[PCの起動をカスタマイズする]で[今すぐ再起動]をクリックし、再起動後の画面でUSBドライブを選択するといい

Windowsの設定から[システム]ー[回復]の[PCの起動をカスタマイズする]で[今すぐ再起動]をクリック
再起動後には、このような画面が表示される。[デバイスの使用]を選択
接続しているブータブルメディアのUSBドライブを選択すると、ここから起動することができる

 画面が表示されたら起動優先順を変更する。もしくはBIOSを表示させても、設定内に起動ドライブの優先順位を変更することができる。

PCに電源をオンにした直後に表示されるメーカーロゴ画面で特定キーを押す。この表示の場合「F7」キーになる。「Del」キーでBIOS画面になる
ブートしたいUSBドライブを上下矢印キーで選択して「Enter」キーを押すと起動する

起動したTrue Imageの画面で復元を行う

 作成したブータブルメディアで起動すると、ターミナルウィンドウが表示され、True Imageのツールが自動で起動する。後は手数は多いが、[復元する]からウィザードに従っていくだけだ。ネットワーク上のBeeStationをマウントする際に、「NAS」として自動で認識しないため、ホスト名を指定して接続する操作が必要になる。

 この時に日本語キーボードとして認識されていないので、バックスラッシュを入力するときにはし工夫が必要になる[※2]。BeeStationに設定したローカルアカウントで認証する場面は、第214回でバックアップを作成した際の認証とまったく同じ手順になる。

[※2]……109日本語配列キーボードが認識されず101英語配列キーボードになっているので、「\(バックスラッシュ。実際には半角で入力する)」の入力は、[](右ブラケット)]キーを使う。[Enter]キーのすぐ左に配置されているはずだ。入力した「beestasion」は、BeeStasionの設定の[システム]で「ホスト名」に設定している文字列になる

True Imageのツールが自動起動している。ここではマウス操作が可能だ。[復元する]を選ぶ
[ディスクの復元]をクリック
「ネットワーク」にBeeStationが表示されるといいのだが検索されなかった。[ファイル名]に「\\beestasion\」と入力する(実際にはバックスラッシュは半角。以降も同様)
「\\beestasion\」と記入すると認証画面が表示される。BeeStationに設定したローカルアカウントを記入して[OK]をクリック。認証をテストしてみてもいいだろう
BeeStationに接続できたら、以前にバックアップしておいた復元したいバックアップファイルを指定する
バックアップファイルを読み込めると、このような画面になる。[次へ]で進める
「ディスクまたはパーテーション全体を復元する」を選ぶ
復元ポイントとして保存されている日時を選ぶ。復元ポイントがある日時はグリーンになっている
復元するディスクを選ぶ。今回はディスク全体だ
復元先のディスクを選ぶ。PCの内蔵ディスクを選択する。選択するとすべて消去される確認が表示されるが[OK]で進める
最終確認画面になる。[実行]をクリックする
復元中
完了画面が表示されたら、ツールやターミナル画面の[×]をクリックして閉じると再起動し、復元したWindowsが起動する
無事に起動した

 後は復元したWindowsが起動することを確認すれば無事に完了となる。この手法を覚えてしまえば、万一ウイルスやアップデート不具合などでWindowsの起動が妨げられた場合でも、短時間で復旧できる。「C:」システムディスクの換装でも利用することができる。

 この復元では、対象のストレージは完全に上書きされてしまうため、重要なデータが保存されていないことを確認してから実行してほしい。Windowsが起動しない状態で、ドキュメントなどをサルベージしたい場合には、今回使っているTrue Imageのツールでフォルダやファイル単位でのバックアップが可能だ。

 いずれにしても、トラブルが発生する前にブータブルメディア作成とBeeStationへのバックアップを保存をしておくことが肝要となる。

今回の教訓(ポイント)

Windowsではトラブルに備え、True Imageで起動用ブータブルメディアを作っておこう
ブータブルメディアからBeeStationのバックアップで復元できる

村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。