インボイス制度に備える

インボイス制度の「適格請求書発行事業者」登録申請をする手順を図解【10月以降対応版】

10月以降も適格請求書発行事業者の登録は継続中

最終更新 2023年10月5日 8:50

 いつか、そのうち、などと思っていたら「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」が始まった。10月1日以降もインボイス制度の登録申請を行えば、「適格請求書発行事業者」になることができる。すでにe-Taxを利用している人なら申請作業は10分程度。この記事では、迷いそうなところは解説を加えつつ、筆者が実際に適格請求書発行事業者の登録申請を行ってみた手順をお伝えしよう。

 インボイス制度への登録(適格請求書発行事業者の登録)は書面の郵送とe-Taxで行うことができる。国税庁が案内した9月11日付の「登録通知時期の目安」によると、提出から登録通知が届くまでの期間は書面提出で約2カ月、e-Taxで約1カ月となっている。INTERNET Watchの読者は確定申告でマイナンバーカードを使用してe-Taxで行っている人も多いと思われるので、できるだけe-Taxでの登録申請をお勧めしたい。

  1. 「書面の提出」で登録申請する手順
  2. 「e-Tax」で登録申請する手順

※10月1日以降、登録サイトの画面の内容が変更されました。10月以降に登録をする人を対象として、画面や説明を刷新しました。

※念のため登録申請をする前に確認をしておこう

  • 「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」は全ての事業者がインボイス制度への登録申請を行い、「適格請求書発行事業者」として登録し、その登録番号の取得が必須になるわけではない。この記事は、「適格請求書発行事業者」になると判断した人に、その手順を紹介している。
  • これまで消費税の免税事業者だった場合は、適格請求書発行事業者として登録することは消費税を納税する課税事業者に移行すること(=増税)を意味する。
  • 適格請求書発行事業者=課税事業者に移行することのメリット/デメリット、免税事業者のままでいることのメリット/デメリットなど、制度の概要や検討すべき事項については、今後掲載予定の記事も参考にしてほしい。

「書面の提出」で登録申請する手順

 書面で提出する人は「適格請求書発行事業者の登録申請書」をダウンロードし、「適格請求書発行事業者の登録申請書」の記載例【個人事業者用】を参考に記入し郵送しよう。

 郵送の場合の送付先は国税局のインボイス登録センターとなる。「郵送による提出先のご案内」に全国12カ所の住所が掲載されているので、自分の管轄のインボイス登録センターに提出しよう。

適格請求書発行事業者の登録申請書(画像は、登録申請書の「初葉」)
記載例【個人事業者用】(画像は、登録申請書「初葉」の記載例)

「e-Tax」で登録申請する手順

 ではここからは具体的にe-Taxによる登録の手順を説明しよう。

 前提として、今回はスマートフォンでマイナンバーカードを読み取ってログインする方式を利用し、免税事業者が適格請求書発行事業者となるケースの登録申請手順を紹介していく。

以下の手順はあくまでも、筆者の環境において登録申請した際の画面遷移を説明したものだ。すでにe-Taxの「利用者識別番号」を取得済みで、確定申告などをe-Taxで行ったことがある人ならば、基本的に筆者と同様の手順で進むと思うが、PCの設定などによって動作が異なることがある。この記事では言及していない「マイナンバーカードによる本人確認」の認証画面などが表示されることもある。その場合は画面の説明をよく読んで判断し、操作してほしい。

 まずは国税庁の「適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)申請手続」にアクセスし、中段にある[e-Taxによる登録申請手続]の[e-Taxソフト(WEB版)]をクリックしよう。

 「e-Taxソフト(SP版)」も選択でき、最終的には同じとなるが、筆者が両方操作した印象では[e-Taxソフト(WEB版)]をお勧めしたい。

[e-Taxによる登録申請手続]の[e-Taxソフト(WEB版)]をクリック
e-Taxソフト(WEB版)にアクセスすると、このようなアラートが表示される場合がある。筆者の場合、マイナンバーカードの読み取りをスマートフォン連携で行うため、無視して[閉じる]をクリックすれば先に進めたが、それでe-Taxソフト(WEB版)が表示されない場合は、アラート画面の「解決方法」のリンクに従って環境設定を行おう

 e-Taxソフト(WEB版)が開いたら左上の[ログイン]をクリックし、ログイン画面の上段の[マイナンバーカードでログイン]を選択。次の画面で[スマートフォンで読み取り]を選択するとQRコードが表示される。

左上の[ログイン]をクリック
上段の[マイナンバーカードでログイン]を選択
[スマートフォンで読み取り]を選択
QRコードが表示される

 マイナンバーカードの読み取りに対応したスマートフォンで「マイナポータル」アプリを立ち上げ、画面下の[読取り]をタップし、QRコードを読み取ろう。4桁のパスワードを入力し、マイナンバーカードにスマートフォンを置いて[読み取り開始]をタップ。読み取りが完了するとPC側の画面がログイン状態となる。

「マイナポータル」アプリを立ち上げ
[読取り]をタップ
QRコードを読み取ろう
4桁のパスワードを入力
[読み取り開始]をタップ
読み取りが完了するとPC側の画面がログイン状態となる

 e-Taxソフト(WEB版)の中央の[申告・申請・納税]をクリックし、新規作成の[操作に進む]を選択。作成手続きの選択が表示されるので[適格請求書発行事業者の登録申請(国内事業者用)(令和5年10月1日~令和12年9月29日)]をクリックしよう。

 留意事項がポップアップする。「登録日(令和5年10月1日以降の日)以降は課税事業者となりますので、消費税の申告を行う必要があります。」という内容なので[OK]をクリック。マイナンバーカードと紐付けされた都道府県と税務署名が表示されるので[次へ]をクリックすると帳票入力画面に進むことができる。

e-Taxソフト(WEB版)の中央の[申告・申請・納税]をクリック。なお、ここがグレーアウトしていてクリックできない場合は、まず左の[利用者情報の登録・確認・変更]メニューをクリックして、利用者情報の登録を行う必要がある
新規作成の[操作に進む]を選択
[適格請求書発行事業者の登録申請(国内事業者用)(令和5年10月1日~令和12年9月29日)]をクリック
留意事項がポップアップされたら[OK]をクリック
都道府県と税務署名が表示されたら[次へ]

 帳票入力画面の[作成]をクリックすると氏名が表示されるので[次へ]をクリック。申告者情報の入力画面は「納税地(フリガナ)」以外は記入済みだと思われる。DX化の流れの1つなのか漢字の読み仮名の登録を行う。全角カタカナで納税地=自宅住所を入力しよう。試してみると文字入力があれば先に進める仕様なので、町名まで入力し番地、マンション名なしでも先に進むことができた。

 「申請内容の入力」で「新たに事業を開始した個人事業主に該当しますか。」と問われるので、今年、令和5年に開業した人以外は[いいえ]を選択しよう。

 次は「申請書を提出する時点において課税事業者であり……」と問われる。現在、免税事業者であれば[いいえ]を選択しよう。

帳票入力画面の[作成]をクリック
氏名が表示されるので[次へ]をクリック
「納税地(フリガナ)」を全角カタカナで入力しよう
今年、令和5年に開業した人以外は[いいえ]を選択
[?]をクリックすると説明画面が表示される
現在、免税事業者であれば[いいえ]を選択

 少々問題があるのが次の画面。3つの確認内容の確認欄にチェックが求められる。1つ目の「登録すると課税事業者となり消費税の申告が必要」、3つ目の「届出を出さないと免税事業者には戻れない」は問題ないが、2つ目の「消費税の申告は登録日を含む課税期間分になります。課税期間は1月~12月のことをいいます。」と書かれている。この文を見ると10月から課税事業者になると1月~12月分の消費税を申告、納税せよとなる。

2つ目の確認内容に問題がある

 これは国会での質疑応答も行われるなど注目点と言える内容で、9月15日に国税庁が公開した「お問合せの多いご質問 PDF」には「基準期間の課税売上高にかかわらず、登録日から課税期間の末日までの期間について、消費税の申告が必要となります」と書かれている。「登録日から課税期間の末日」なので、10月1日を登録日とすれば2023年1~9月分は免税事業者、10~12月分は課税事業者、消費税は3カ月分だけ納税することになる。このPDFには簡易課税についても書かれているので免税事業者の人はチラ見しておくとよいだろう。

登録日から課税期間の末日までの期間について消費税の申告が必要となる
簡易課税の届出について

 話を戻すと、2つ目の確認内容は間違っていると考えてよいだろう。サイトを立ち上げた時点から修正がされていないと思われる。2つ目の確認欄にチェックを付けずに進もうとするとエラー表示が出て先に進むことができないので、納得がいかなくても3つチェックを付けて先に進もう。

 次の画面は理解しがたい。加えて、人によって選択する回答が異なりそうだ。現在は免税事業者で以下の3つに該当する人は[はい]を選択する。

  1. 申請書を提出する課税期間の翌課税期間が課税事業者である場合は[はい]を選択
    =令和5年に申請する人で、令和6年は課税事業者←令和4年の売り上げが1000万円を超えた人であっても令和5年に登録(課税事業者になる)を希望する人は[いいえ]
  2. この申請書を提出する課税期間の翌課税期間の初日から登録を受ける場合は[はい]を選択
    =令和5年に申請書を提出し令和6年1月1日から登録を受ける場合
    注:後述する別ページと内容が異なっている
  3. この申請書を提出する課税期間の翌課税期間の初日から起算して15日前の日までに提出できないため、翌課税期間の途中から登録を受ける場合は[はい]を選択
    =令和5年12月17日までに申請書が提出できないため令和6年1月2日以降に登録する場合
設問が理解しがたい。令和5年に申請、登録希望をする人は[いいえ]を選択しよう。[?]をクリックすると説明画面が表示される。ツラツラと免税事業者と課税事業者の説明などが書かれているが、最後の行に「翌課税期間の初日を登録希望日とする場合は、「いいえ」を選択してください」となっていて、2.と矛盾する説明が書かれている
最後の行に「翌課税期間の初日を登録希望日とする場合は、「いいえ」を選択となっている

 登録日が令和5年中の人は[いいえ]を選択。令和5年に申請して令和6年に登録を希望する人は[はい]を選択すればよいと思われるが、読解力の低い筆者ではよく理解できない。翌課税期間の登録を希望するといろいろ条件がありそうなので、回避方法としては令和6年になってから申請し令和6年の任意の日を登録希望して[いいえ]を選択すればよい。

 筆者が[いいえ]を選択した方がよさそうな言い回しをしている理由は次の画面だ。[はい]を選択し次へ進むと文字数の多い留意事項が表示される。「消費税課税事業者選択届出書」の提出が必要……と後々手間が増えそうな予感がするためだ。

[はい]を選択し次へ進むと文字数の多い留意事項が表示される

 次は適格請求書発行事業者(=課税事業者)となる日の登録。9月30日までに申請した人は10月1日を登録日とすることができたが、10月以降に申請する人は申請日から15日以降の任意の日を登録日として希望することができる。登録日以降は消費税の課税事業者となる……どうなるか。

 10月1日から課税事業者となった人は令和5年1月~9月は免税事業者、10月~12月は課税事業者となるので3カ月分の消費税を納税しなければならない。ザックリ言うと3カ月間の売り上げの消費税分から3カ月間に仕入れや経費で支払った消費税を差し引いた額が納税額となる。もし10月の売り上げが多く、11月12月の売り上げが少ないと予測されるなら、11月から登録すれば消費税の納税額を減らせる可能性がある。

 取引先から「当面の間は免税事業者でも従来どおり消費税を支払う」という連絡をもらっているなら、登録日を先延ばしすると消費税を納める期間も先延ばしできる。例えば“来春(取引先の来期)から”という人は令和6年4月1日とすればかなり消費税を節税することが可能だ。

提出日から15日未満の日を指定するとアラートが表示される
自分に適した任意の希望日を入力しよう
[?]をクリックすると1~3は見あたらないが、さまざまな説明が掲載されている

 登録日の記入が終わると個人番号(=マイナンバー)と事業内容の記入。その次は「納税管理人を定める必要のない事業者ですか」と言う設問。[?]をクリックすると「国内に住所及び居所を有せず納税申告書の提出など国税に関する事項の処理の必要がある場合」は[いいえ]、ほとんどの読者は[はい]を選択しよう。次は消費税法に違反して罰金以上の刑に処せられたことがない人は[はい]を選択しよう。

 次の設問は「令和5年10月1日以降、相続により適格請求書発行事業者の事業を継承しましたか。」とよく分からない内容。[?]をクリックすると「適格請求書発行事業者が死亡した場合……とかなりレアの場合の説明が掲載されている。継承していなければ[いいえ]を選択しよう。

 その他事項の入力に進み、特記事項がなければ空欄のまま[次へ]。登録番号などの通知をe-Taxで受け取る人は[希望する]を選択。最後の画面で[作成完了]をクリックしよう。

個人番号(=マイナンバー)と事業内容の記入
納税管理人は[はい]を選択
刑に処せられたことがない人は[はい]
継承していなければ[いいえ]を選択
[?]をクリックすると「適格請求書発行事業者が死亡した場合……とかなりレアの場合の説明が掲載されている
空欄のまま[次へ]
登録番号などの通知をe-Taxで受け取る人は[希望する]を選択
[作成完了]をクリック

 入力などが終わると最初の画面に戻る。最初にクリックした[作成]ボタンの色が変わっている。[次へ]をクリックして登録作業に進もう。[選択]にチェックを付け、[帳票表示」をクリックするとイメージデータが表示される、はずだが「時間がかかる場合があります」と記載があり、筆者の環境では数分待っても表示されなかった。

 イメージデータを確認したら(しなくても)[次へ]をクリック。送信画面に移り[送信]をクリックすると確認画面がポップアップするので[はい]をクリックすると送信が完了する。ほどなくスマホに通知が届く。マイナポータルアプリを開くと【税務署からのお知らせ】が届いているはずだ。

最初の画面に戻ったら[次へ]
繰り返し「時間がかかる」と警告される
さらに「時間がかかる」とポップアップされ……筆者は待ちきれず[次へ]をクリックした
選択にチェックを付け[帳票表示]をクリックするとイメージデータが表示されるはず。表示されなくても[次へ]
送信画面に移り[送信]をクリック
確認画面がポップアップしたら[はい]
送信完了
マイナポータルアプリに【税務署からのお知らせ】が届く(画面は9月30日以前に登録した例)

 以上でインボイス制度の登録は完了となる。迷わなければ10分程度の作業で済むだろう。

 インボイス制度に関してよく分からない人が多いと思われる。そこで基本となる消費税の仕組み、サラリーマンにとってのインボイス制度、個人事業主にとってのインボイス制度の説明を近日掲載したい。