イベントレポート

CEATEC 2019 Co-Creation PARKレポート

困難なシリカガラス加工が、3Dプリンタで安価になる技術、九州大学研究グループ

Co-Creation PARKレポート #4

千葉・幕張メッセで10月15日から開催された「CEATEC 2019」。イベントの華である大規模ブースのレポートは既に多数掲載しているが、CEATECには海外出展者やスタートアップ、大学・研究機関を中心とした小規模ブースの出展エリア「Co-Creation PARK」もあり、これらの中にも注目できる展示が多い。本レポートでは、これらのブースから、筆者が注目したブースを紹介する。

 10月15日から18日まで幕張メッセで行われていた「CEATEC 2019」において、九州大学グローバルイノベーションセンター藤野茂教授の研究グループは、シリカガラス加工の技術を展示した。

 シリカガラスは加工が難しく、単純な形状しか作成できず、また高価な加工製品ばかり。そのため、高熱耐性や高機械強度、高耐薬品耐性、高光透過性、低誘電率というメリットがあるも用途は限られていた。

 九州大学グローバルイノベーションセンター藤野茂教授の研究グループは、3Dプリンタを利用し、複雑な形状のシリカガラス加工が行なえる技術を開発。液調合、LED光源での照射による型成形・硬化、電気炉での焼成とシンプルなプロセスが特徴。従来のシリカガラス加工製品の製造に比べると、圧倒的に低コストで済み、上記のような加工難度からも解放されるため、下記写真のようにフラクタル構造も実現している。また3Dプリンタで成型する際は、STLデータがあればよく、既存設備への組み込みもしやすい。

フラクタル構造のデモ。型成型では球面・非球面レンズの形成が可能になるほか、数100nmオーダーのラインやホール、ピラーなどの形成にも成功済み

 2019年10月15日時点で、物性は石英と同程度だという。石英をナノインプリントにも展開可能であり、パートナー企業を強く求めているとのことだ。

林 佑樹

1978年岐阜県生まれ。東京在住。ITサービスやPC、スマートフォンといったコンシューマから組み込み、CPS/IoT、製造、材料、先端科学のほか、ゲームやゲーム周辺機器のライティングも行なう。それらジャンルすべてが何かしらの技術でリンクしているのが最近のお気に入り。技術などを見る基準は「効率のいいサボりにつながるか」。フォトグラファーとしては、ドラマスチルや展示会、ポートレートをこなしつつ、先端科学研究所の撮影が多い。