インタビュー

「IoT は “Internet of Toys” だ!(バンダイ社内では)」、CEATECではハロに続く「新型ロボット」?

~新ブランド「BANDAI IoT WORKS」も発足、さらなる共創に……

株式会社バンダイ新規事業室デピュティゼネラルマネージャーの原田真史氏

 「CEATEC JAPAN 2018」が10月16日から10月19日まで幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催される。

 CEATECは、国家ビジョンである“Society 5.0”(≒超スマート社会)の実現を目指し、さまざまな産業のフロントランナーが集結するが、エンターテインメント企業の雄であるバンダイナムコグループも昨年から出展。「ガンシェルジュ ハロ」など、さまざまなロボット玩具をアピールし、大きな話題となった。そして、今年のCEATECでは同社はブースを拡大し、出展する予定だという。

「その技術をそう使うのか!」の答えはハロだった。IBMのWatsonを利用している

 昨年は、事前に「その技術をそう使うのか!」と予告していた同社だが、昨年の出展に手ごたえを感じ、その後の「共創」にもフォーカスし「今年は、それ以上のものを用意している」という。

 言わずと知れたガンダムをはじめ、様々なキャラクターや「遊び」を持っている同社だけに、こういわれると気になる人も多いだろう。そうした点や、「共創」にかける意気込みを株式会社バンダイの原田真史氏(新規事業室デピュティゼネラルマネージャー)にお伺いした。

去年のCEATEC出展の成果は大きく、今年も出展を決意

――昨年が初出展でしたが、今年も続けて出展を決めた理由を教えてください。

 去年は、ハロをメインにしていくつか提案させていただいのですが、ハロを中心にとても話題になったことが、非常に大きいですね。

 我々がメインとする展示会は、東京おもちゃショーやゲームショウなのですが、CEATECでは「今までの延長線ではない新しい製品」を、来場者のみなさまに評価いただける、というのがよくわかりました。「CEATECは、新しい価値を求めていらっしゃる方が多く来場するイベントだ」というのが我々の認識です。

――去年の出展内容の「その後」はいかがでしょうか?

 ハロについては、今年7月に予約をはじめまして、10月にお届けする予定です。

 10月お届け分までの数に関しては、一旦注文は終えていますが、タイミングを見て受注を再開したいと考えています。ハロについては、新たな展開も考えていまして、今年のCEATECでも展示する予定です。

――去年のCEATECのブースで、ハロに対していろいろな反響が寄せられたと思うのですが、そうした反響が、製品版のハロにフィードバックされたりしたのでしょうか?

 ハロができることについて、お客さんが思っていることが想像以上にバラバラだったので、改めて「『ガンシェルジュ ハロ』は何ができるのか」ということをしっかりとお伝えして、世に出すことが大切だと考えています。

 ガンダムの話題以外の会話は基本的にはできないのですが、どうしても、「ついにハロと日常会話ができる」みたいな、情報の独り歩きもあります。「お客さんはハロとこういうことをしゃべりたいんだ」という部分は、もちろんCEATECなどのイベントを経てフィードバックをかけたりしています。

――無茶な要望はきませんでしたか? ハロなら飛んで欲しいとか(笑)

 移動してほしいという要望はありました。某ロボットみたいに動いてほしいとか。

――去年のCEATECでは、まだ商品化が決まっていない製品も多かったですが、その後はいかがでしょうか?

 それらはハロを含め、「BN・Bot」というブランドのもとに作られた商品群なのですが、「BN・Botとは何か」というのを、CEATECの反響を含めて再定義しています。

 ですから、今度のCEATECのブースを見ていただければわかると思うのですが、BN・Botの定義をもっと狭くしました。前回展示したものの中も、BN・Botに当てはまるものもあれば、当てはまらないものもあります。

「BN・Bot PROJECT」の第1弾サービスとして展開されるガンシェルジュ ハロ

「IoT は “Internet of Toys” だ!(バンダイ社内では)」新ブランド「BANDAI IoT WORKS」を提案

――では、今回の出展内容をお聞かせください。「今年の出展は、去年以上」と聞いていますが

 はい(笑

 今回のCEATECのブースは、昨年「ハロ」を出展した「BN・Bot」ブランドの新提案や「BANDAI IoT WORKS」という新ブランド、そしてハロの新展開などを展示します。内容面でも盛りだくさんですし、ブース面積でみても1.5倍になっています。

――「BANDAI IoT WORKS」とはなんでしょうか?

 そうですね、これの詳細は2日目に行う「『BANDAI IoT WORKS』発足 ~玩具としてのIoTの可能性を探る~」というセッションで詳しく提案させていただこうと思います。

 ちなみに、バンダイ的には「IoT」は“Internet of Things”ではなく、“Internet of Toys”ですので(笑

 一方、BN・Botシリーズでは「新型ロボット」をやります。

新ブランド「BANDAI IoT WORKS」

ハロを製品化した「BN・Bot」で、「新型ロボット」を出展?人型…………?

――ハロを製品化した「BN・Bot」で新型ロボットというと、やはりアレですか?(笑)

 それについては、まだ何も言っていないので(笑)

 製品の分類としては、どちらかというとハイエンドな製品ですね。詳しくは、是非ブースに来ていただければと。

 ちなみに、BN・Botの基本コンセプトは、「未来への挑戦をベースに先端技術を体験できるコンセプトモデル」で、IoT WORKSの基本コンセプトは「ネットの力で玩具を楽しく、玩具とユーザーの新たな関係構築」です。

 そうしたコンセプトに基づいた提案をいくつか行います。小学生向けや、女性向け、お父さま世代向けもあります。

 玩具は、「実際に触れられる」のがいいところなんですが、その頻度を高めたいんです。ゲームのように、「はまってしまって明日もこれをやる」みたいなものを、もっと玩具に盛り込みたいということで、ネットの力で玩具を楽しくできるのではないかと考えました。

 また、「ユーザーとの新たな関係構築」というのは、ユーザーに応じていろいろなリレーションを組む、ということです。たとえば「買い切り」だけでなく、サブスクリプションとか、追加購入みたいなものとか。

 これは一般論ですが、ソーシャルゲームはすごいですよね。ユーザーの反応を見て、その日の夜にレベルデザインとかを書き換えますから。それは、ユーザーとの素晴らしい関係性だと思います。ですから、玩具の良いところは生かしながら、そういったデジタルの良いところを重ね合わせることができればいいなと思っています。

――ネットの力で玩具を楽しくするというのは、具体的にはどういうイメージでしょうか?

 ハードウェアとしての「モノ」は生み出されたところから変われません。IoTでは、ネットの力でそこを何かしら変えられるのが楽しいと思います。実は、仮面ライダーのベルトとかも、ガイアメモリとかフルボトルとか、連動アイテムで遊びが広がるので、ある意味そうした流れを汲んでいるともいえるんじゃないでしょうか。

――それを、物理的なものを買わなくても、ネットで変わると。

 それもいいかなと思います。

――「ガンシェルジュ ハロ」のサーバー利用料は1年間無料ですが、そのあとの料金はどうなるのかという話があると思います。IoT WORKSではそのあたりはいかがでしょうか? 例えば、ずっと無料で使えるのか、それともネットにつないで、新しいコンテンツなり、データをダウンロードするために料金を払わなきゃいけないのかなど。

 まさにそこがコンセプトの後半パートです。何か、新しいビジネスモデル的なものですね。

 玩具って、誰も悪くないのですが、製造原価がここ10年で一番上がっている立体物だと思っています。なぜなら、流行が短いスパンで移り変わるため大量生産に有利な「自動化ライン」がなかなか組めないことが一因としてあるからです。

 そして、玩具を製造してもらっているのは、どのメーカーも中国が多いでしょうが、中国は国が最低賃金を上げるといったら、すぐに上がります。結果として、製造原価はここ10年で2倍くらいにはなっていると思います。

 製造原価が上がると販売価格も上げざるを得ませんが、相対的に高価になってしまうと、「お客さんの持っていらっしゃるイメージ」と、「実際にものを手にしたときのイメージ」の齟齬が大きくなってしまいます。

 そうした点を改善する提案も行っていきたいです。

まずは「本質的な面白さ」を追求、その上で「最適なキャラクター」を

――先ほどユーザー層をお聞きしましたが、玩具には「キャラクターもの」とか「ヨーヨー的なもの」とか、いろいろなジャンルがありますが、「こういう人に期待してほしい」とか、何かモチーフがある、例えばキャラクターものであるとか、そういった点はいかがでしょうか?

 我々の所属する「新規事業室」は、「玩具の本質である、遊びのフォーマット」を提案することがミッションだと思っています。

 「遊びのフォーマット」ができれば、そこをガンダムで魅せてみたり、ウルトラマンで魅せてみたりとか、そういうことができますので、キャラクターにあまりに縛られるのはよくないと思っています。

 もちろん、展示では、最適なキャラクターでの提案はしていますが、「それじゃないと成り立たない」というものにはしていないつもりです。

――では、本質的な面白さは当然確保したうえで、それにキャラクターの世界観を付加させて、バンダイらしさもあるInternet of Toysが、少なくとも小学生向けとか、女性向けとか、お父さん世代向けとか、数種類展示されているわけですね。

 はい。そうです。

「IoT WORKS」は共創を進めたくなるブランド「バンダイとだったら何か一緒にできそう」と思って欲しい

――CEATECがテーマとする超スマート社会「Society 5.0」について、この1年で変わった、と思うことはありますか?

 “Society 4.0”までは、生産効率の向上とか、そういうキーワードだったと思いますが、Society 5.0は、より問題解決型なのかなと思っています。そもそも論というか、今回のIoT WORKSも考え方は近く、製造原価は上がっているからどうしようとか、遊びの練度を高めるにはどうしたらいいのとか、そういった「そもそもこれって面白いの?」みたいなところに立ち返りました。そういう時代なのかなという気はしています。

――そういう意味では、去年お伺いしたのは、バンダイは玩具会社なので、これがあるととても便利というものではなく、生活に潤いや楽しさを提案していきたいと。それから、プロデューサー的な立場で、他社さんのいろいろな技術を活用していきたいと。

 はい、それについては継続していきますし、そういった動きはこの1年でかなり増えました。いわゆるTECH系の人と会う機会もすごく増えていますね。

 今は、手数が重要な時代で、世の中にいろいろな提案をするには、プロトタイピングが重要です。そうした理由で接点が増えている面もありますし、「ハッカソンに行くのが大好き」みたいな人も新規事業室にジョインしているという面もあります。

――それで、TECH系の人が増えて、今回発表するIoT WORKSなどに結実してきているわけですね。

 そうですね。ですから、今度のCEATECでのIoT WORKSの発表の後に、たくさんきてくださるといいな、と思います。

――では、単純に玩具が出展されるだけではなくて、「これがあるなら、ちょっと声をかけてみたいな」という内容や提案が含まれているわけですね。

 そうですね。

――IoT WORKSは、コラボレーションをもっと進めたくなるようなブランドというわけですね。

 はい、バンダイナムコグループとだったら何か一緒にできそうだと思っていただけるようなブースを目指しました。

――そういう意味では、CEATECのブースの出展内容が、去年よりもより一歩進んだ感じになっているように聞こえます。共創的な意味で、一緒にやってくださる人に来て欲しいというのは、去年もお伺いしましたが、今年は最初からそういうつもりで展示を作ったように聞こえるのですが。

 そうですね。

 ブースそのものはエンドユーザー向けを主眼に作っていますが、あえて多くのラインアップを用意したのはそういう意味があります。群で揃えたほうが、我々のやりたいこととかコンセプトが伝わりやすいと思ったので。

 正直なところ、かなり先のコンセプトモデルもあるので、展示リスクもあるのですが、我々と共感していただける方を増やして、一緒にやったほうが得策だと思っています。

 また、「単に展示するだけ」じゃなくて、来場者に問うほうがいいと思っていまして。CEATECも、以前とは違ってプロトタイピングが重要になるという流れもありますし、我々もいつかSXSW(サウス・バイ・ サウスウエスト)などにも出展したいと思ってます。であれば、そのリスクもやむを得ないですよね。

――それは、超スマート社会であるSociety 5.0の進化のスピードに合う形にしたという側面もあるのでしょうか?

 そうだと思います。手数を出すしかないという点では、一緒だと思います。新しい時代は流れが速いから、いっぱいやっておかないと。

原点に立ち返って玩具を再定義「IoTを楽しい方向に活かしたいと思っている方は、ぜひきてほしい」

――他に、Society 5.0について何かお伺いできる内容がありますか?

 そうですね。やはり、さっきいったように「Society 4.0」の延長線ではないことは確かですよね。

 だから、「原点に立ち返って考える」ことが重要になるだろうと。「玩具ってそもそもこのままでいいんだろうか」と。

 それが、Society 5.0に通じるのかなあと。何か、こう新しい、延長線にないものの提案だとか、現状の問題に対する回答とか、繰り返しになりますけどそもそも論に振り返ることなのだと。

――つまり、玩具も原点に立ち返らないと。

 そうです。玩具を再定義しなきゃいけないと。

――CEATECのブースにはどんな方が来て欲しいと考えていますか?

 去年、渡辺もお伝えしたように、我々の製品は「生活を便利にする」というよりは、「楽しくする」というものです。玩具に限らず、新しい技術であるIoTを楽しい方向に活かしたいと思っているような方は、ぜひ、訪ねてきていただいて、一緒にできるといいなと思っています。

 IoT WORKSを社内で発足させたのはわりと最近ですが、もう1社で作る時代ではない。特にバンダイはそうですから、いろいろな会社さんとの協業になっています。

――最後に、CEATECのバンダイナムコグループのブースやセッションに興味がある人に対してメッセージをいただけないでしょうか。

 じっくり見ていただいて、「自分のほうがいい物を作るぜ」と思ってバンダイナムコグループにご提案を持ってきていただければ(笑)