俺たちのIoT
第24回
IoTって一体なに? 言葉は普及するも導入は始まったばかり~IoTの現状とこれから
2017年9月26日 06:00
IoTとは何か、を考える本連載が始まって約1年が経ちました。今回はこれまでの連載を振り返りながら、IoTの現状とこれからを考えてみたいと思います。
「IoT」というキーワード・概念は認知されてきたものの……
本連載の第1回では、Google トレンドの検索データを踏まえて「IoT」という言葉が急速に話題になったことを紹介しました。あれから約1年近く経った今、改めてGoogle トレンドをIoTというキーワードで見てみると、その状況に変化が起きていることが分かります。
第1回でも触れたとおり、IoTというキーワードの検索件数は2015年ごろから急速に伸び始めていますが、ちょうど連載が始まった2016年10月ごろには検索回数がピークに達し、その後は増減を繰り返してはいるものの、検索回数自体は一段落。あくまで検索キーワードを踏まえたデータではあるものの、IoTというキーワードが認知され、一般へ普及しつつある様子がうかがえます。
IoTの製品も非常に幅広くなっています。日本では生活に欠かせない存在として「衣食住」という言葉がありますが、「住」については前々回に紹介したとおり、KDDIやNTTドコモといった携帯電話キャリア大手や電力会社がスマートホーム事業に参入。さらに最近ではマウスコンピューターが自社ブランドのスマートホーム製品を発表するなど、スマートホームへの参入が相次いでいます。
「食」の面でも、料理IoTの回で紹介した通り、さまざまなアプローチでIoTが料理の世界に取り入れられています。また、「衣」については、洗濯という電子機器にとって非常に苦手な存在があるものの、洗濯が不要なアクセサリーとしてスマートウォッチやアクティビティトラッカーといった製品が一般にも普及しています。
こうした生活に関する製品以外に、趣味や娯楽といったジャンルでもIoTの取り組みは進んでいます。スポーツをデータ化してさらなる楽しみ方を見いだすスポーツIoTや家族同然の存在と言えるペットのためのペットIoT、子どもの成長をはぐくむための知育玩具にもIoTが取り入れられています。
IoTに対応した製品のジャンルが多様化し、さまざまなIoT機器が登場したことでIoTに関するニュースや情報も多くなり、現状はすでに「IoTとは何か」という大まかな概念は一般に浸透しつつある、と言えるでしょう。
「IoT」ゆえに通信機能と電源が必用=コスト面でのネックも
一方、IoTというキーワードが一般化した一方で、IoTが日常生活に浸透しているかというと、まだその段階にはないというのが現状です。
これまでの連載でも紹介した通り、IoT系で導入が進んでいるジャンルは、既存の家電に追加して利用する「外付けIoT」というべき製品や、導入が非常にシンプルな製品が中心です。前者はスマートリモコンやネットワークカメラ、ChromecastやFire TV Stickといった映像伝送機器で、後者は忘れ物センサーやトイレの在室チェックといった取り組みです。
スマートホームも、IoTの集大成と言える存在ではあるものの、対応機器はネットワークカメラやセンサー類といった後付け型の製品が中心です。最近ではマウスコンピューターがIoT事業への進出を表明しましたが、これも外付けセンサーなど後付けの製品が中心になっています。
第8回で紹介したように何かしらの通信機能が必要なIoTは電気も必要なため、設置場所が限られるという面があります。また、料理IoT回で触れたとおり、現状の機器に比べてどうしてもコストが増加するIoT機器は、特にコスト面が気にされるシーンでは導入が進まないという課題もあります。
課題はあるが、生活の中の「IoT」はまだ始まったばかり
とはいえ、こうした課題は時間が経てば解決する問題でもあります。コスト面は普及が進めば次第に下がっていくものですし、設置場所についても需要があればそれに合わせて変化していきます。
ルンバが日本に登場した当初は「日本の住宅には合わない」という意見もありましたが、ルンバの便利さが浸透した今では、むしろルンバが掃除しやすいように部屋をレイアウトするという考え方も生まれました。ニーズさえあればそれに合わせて環境が変化するということの一例と言えるでしょう。
IoTを支える主要な技術でもある通信技術も、急速に進化が進んでいます。Bluetoothの最新バージョン「4.2」では、低消費電力という特徴はそのままに転送速度の向上やインターネット接続という機能が盛り込まれ、「IoT」への親和性向上が謳われています。
また、LTEについてもMVNO回線を利用したIoTプラットフォームを提供するソラコムがKDDIに買収され、大きな話題となりました。機器が直接インターネットに接続できる携帯電話回線の低廉化や多様化が進むことは、IoTにとって大きな環境変化と言えるでしょう。
最近では「LPWA(Low Power Wide Area)」という技術も注目を集めています。これは、BluetoothにおけるBLEに近い考えの技術で、通信速度を下げる代わりに消費電力やデータ使用量も下げるという、まさにIoTに向けた通信技術です。こうしたLPWA対応の機器が普及してくることで、設定の煩雑さなどを気にせず直接インターネットに接続できるIoT機器も増えてくることでしょう。
IoTはその言葉こそ一般化しつつあるものの、導入としてはまだ始まったばかりですが、逆に考えれば定義だけだったIoTの魅力をより具体的に生活の中で取り込めるようになりつつある、とも言えるでしょう。次回以降はIoT対応の機器やサービスを具体的に取り上げつつ、IoTが生み出すメリットを考察していきたいと思います。