被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
それってネット詐欺ですよ!
自分が設定したパスワードが書かれた脅迫メールが来た
2018年9月7日 06:00
ある日、冷や汗が出てくる文面のメールが届く。
「あなたが使っているパスワードは○○○○ですね。私が誰なのか不思議に思っていることでしょうが、あなたの調査依頼を誰かから受けたわけではありません。私は、ポルノ動画サイトにマルウェアを仕込み、あなたがこのウェブサイトで楽しんだことを知っています。その間、リモートデスクトップとキーロガー機能により、あなたのディスプレイとウェブカメラ、メッセンジャー、Facebook、電子メールの情報などを収集しました。また、あなたが見ていた動画とあなたの様子を組み合わせた動画も作っています。
あなたには2つの選択肢があります。1つめは無視することです。その場合は、作成した動画を連絡先のすべてに送信します。2つめは、私に7000ドルを支払うことです。そうすれば、動画は即削除します。支払いはビットコインで行います。支払い方法が分からない人はGoogleで検索してください。BTCアドレスはxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxです。
もし警察に通報しても、このメールからは私にたどり着くことができません。また、このメールには仕掛けが施してあり、あなたが今読んだことは分かっています。ビットコインが届かない場合は、動画をあなたの連絡先すべてに送付します。」
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
【サイバー犯罪対策課】不審な英文メールが拡散中。メールには受信者が使用しているパスワードが記載されており、「ポルノ動画を閲覧している姿をWebカメラで撮影した」「拡散されたくなければ仮想通貨を支払え」等と脅してきます。パスワードは早急に変更し、相手の要求には応じないでください。pic.twitter.com/BEPN0xKQ4Z
— 警視庁サイバーセキュリティ対策本部 (@MPD_cybersec)2018年7月31日
警視庁サイバーセキュリティ対策本部のTwitterでは、7月31日付で注意喚起ツイートを発し、脅迫メールの文面サンプル画像を公開している
もちろん、これはネット詐欺です。もうネット詐欺のエッセンスをいくつも符合させた強烈な文面ですね。ユーザーが一番恐怖に感じるのが、本当に使っているパスワードが書かれているところでしょう。アカウント情報の漏えいは頻繁に起きています。怪しいサイトだけでなく、大企業からも数千万、数億といった数のメールアドレスとパスワードが漏えいしているのです。これらは、ダークウェブで公開されたり売買されています。犯人は、このデータを参考にしてメールを送り、パスワードを記載しているのです。
その部分以外は、全部嘘です。そのPCでポルノ動画サイトを見ていなかったり、カメラがなかったり、そのパスワードを利用しているウェブサイトが把握できているなら、ネット詐欺だと言うことが分かります。
しかし、パスワードを使い回していてどこで使ったのかも把握できていない場合や、ウェブカメラのあるPCで動画を見た記憶があるなら一気に不安になってしまうことでしょう。
動画を見ている画像だけでなく、連絡先も盗んでいると書いており、社会的な体面も人質にしているのが悪質です。不安に思い、リモートデスクトップやキーロガーといった耳慣れないキーワードをGoogleで検索したら、さらにおびえてしまうかもしれません。リモートデスクトップは遠隔地のPCを操作する機能ですし、キーロガーはユーザーのキー操作を記録する機能です。実際のところ、PCのセキュリティ機能をきちんと有効にしているなら、ウェブサイトを表示しただけで、これらのマルウェアに感染させるのは無理です。デジタルリテラシーがあれば、はったりと分かり、無視できますが、知識がないとやはり不安になることでしょう。
対策としては、パスワードを使い回さないこと。そして、不安なことがあったら相談先を確保しておくこと、です。最も効果的なのは、このパターンのネット詐欺が存在することを知っておくことです。
実は、このネット詐欺、元々は英語の文面になっています。さらに、要求金額が3000ドルとか7000ドルと高いうえ、支払いがビットコインになっています。日本でビットコインを購入、運用している人であればこのような詐欺にはひっかかる可能性は低いでしょう。現状、国内ではこの詐欺の被害者はほぼいないと考えられます。
しかし、この文面が日本語になり、金額が3~10万円程度になり、もっと簡単な支払い方法を使えるようになると、被害が拡大しかねません。ご両親など、デジタルリテラシーが苦手なシニアの知人がいる場合は、この記事を見せて情報を共有してあげてください。
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DLIS(デジタルリテラシー向上機構)
高齢者のデジタルリテラシー向上を支援する団体で、現在、NPO法人の申請中です。今後は、媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行う予定となっています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。