被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

高齢者のネット詐欺被害を撲滅しよう!

FBIが警鐘を鳴らすネット詐欺の1つ「投資詐欺」の手口を学ぼう

 アメリカのFBI(連邦捜査局)は、ウェブサイトでインターネット詐欺に関する情報を広く公開し、啓発に努めています。今回は、その中から「投資詐欺」について紹介したいと思います。

FBIのウェブサイトにある「Scams and Safety」のページ

 典型的なネット詐欺から、日本ではあまりなじみのない仕組みまでいろいろあるのですが、手口を学んでおけば、被害に遭う可能性をぐっと減らせます。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

 昨今、経済のグローバル化が進んだり、日本の経済が停滞していることで、投資先が多様化しています。現金を銀行に預けるだけでなく、さまざまな金融商品などのポートフォリオを持つようになりました。当然、お金が絡むので、みんなちょっとでも条件のいい投資先を欲しがります。欲望があれば、犯罪が発生するのも世の常です。もちろん、投資関係のネット詐欺も起きています。

RRiceさんによる写真ACからの写真

 基本的には、低リスクもしくはリスクのない投資で、高い利益率を得られるという話を持ちかけられます。この手のネット詐欺を、FBIでは4パターンに分類しています。

 まずは、「ポンジ・スキーム」です。スキームとは、仕組みや図式、計画といった意味で、ポンジは1910~20年代に金融詐欺を行い荒稼ぎし、その後、逮捕された詐欺師の名前から取られています。

 元本保証をしたり年率数十%という高利率で出資を募ります。当然、普通の人は怪しみ、まずは小さい金額で出資します。すると、きっちり、利息が払われるので、信用してしまい、より大きな金額を預けるようになるのです。当然、最後は破綻し、お金は戻って来なくなります。

 「ピラミッド・スキーム」は、同じく高利回りを謳った詐欺ですが、その勧誘と集金の仕組みをマルチレベル化しているのが特徴です。他の人を勧誘すると、その人の支払いの一部を自分の報酬として受け取れるのです。これはねずみ講の一種で、もちろん非合法です。

無限連鎖講のイラスト(いらすとやより)

 「プライムバンク投資詐欺」や「取引プログラム詐欺」は、FBIや世界銀行、国際通貨基金といった大きな金融機関の取引プログラムにアクセスできると謳っているのが特徴です。世界の真ん中で合法的なプログラムで巨額を稼いでいる仕組みに投資し、利益を得られるよ、と持ちかけるのです。

 4つめが「前払い金詐欺」です。美味しい投資の話に参加するために、税金や手数料を求められます。送金すると、さらに予期しないことが起きたために追加の費用を求められます。当然、そんな美味しい投資の話などはないため、搾り取られるだけ搾り取られて終わりです。

 関連詐欺としては、「市場操作(ポンプ・アンド・ダンプ)詐欺」も紹介されています。株価を人為的に引き上げて、投資家を詐欺にかけ、犯人は売り抜けて利益を手にする仕組みです。

シロップさんによる写真ACからの写真

 現在では、特に仮想通貨の市場で、ポンジ・スキームやパンプ・アンド・ダンプ詐欺が猛威を振るっているので注意が必要です。リスキーと言われる仮想通貨を持っている人は、投資詐欺に乗ってくる可能性が高いと思われているのでしょう。

 美味しすぎる話が自分だけに来ることなんてありません。美味しい話にのぼせ上がる前に、冷静になって考えましょう。特に、迷惑メールとして送られてきているものは、ネット詐欺と考えてよいでしょう。

 ネット詐欺「かも」とか、月間100万円と言っているが「話半分で」50万円かな、と言う人も多いのですが、錯覚です。迷惑メールや迷惑メッセージであり得ないほど美味しい内容の投資を勧めてくるのは、確実にネット詐欺ですし、話半分どころからどれだけ投資してもリターンはゼロです。欲望を突かれないためにも、これらのネット詐欺が横行している、ということを知り、警戒のアンテナを張っておくようにしましょう。

NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。