被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
それってネット詐欺ですよ!
ログインするだけで仮想通貨がもらえる? ……そんな美味しい話はありません
2021年3月5日 06:00
2021年2月中頃、「MyEtherWallet」を騙る詐欺メールが筆者の元に届きました。最近、仮想通貨(暗号通貨)の注目度が上がっているので、注意喚起として紹介します。
仮想通貨とは電子データのお金です。国家が発行するものではなく、ブロックチェーンという技術を利用しており、特定の組織に管理されていないのが特徴で、インターネット上の取引で利用されます。
仮想通貨にも種類がいろいろありますが、有名なものといえば、2009年に始まった「ビットコイン」です。最初は、ピザ2枚で1万ビットコインという価値だったのですが、最近では1ビットコインが500万円前後に高騰する動きも見られました。そのため「仮想通貨は価値が上がって、儲かるかも」ということで、注目を集めているのです。今では、株のように売買できる取引所も多数登場しています。
仮想通貨を保管する方法はいくつかあります。取引所に預けておく方法のほか、自分で保管することもできます。その際に利用するのが「ウォレット」です。外付けデバイスに保管し、オフラインで管理することもできますが、人気なのはウェブ上で管理するオンラインウォレットです。
そんなオンラインウォレットサービスの中で、人気なのが「MyEtherWallet」です。イーサリアム系の仮想通貨を保存する際に利用されています。
そして先日、「MyEtherWalletアカウントにログインすると、20000個のCHZトークンを受け取ることができます。」という件名のメールが来ました。CHZは「Chiliz」のことで、スポーツの分野で広まっている仮想通貨のことです。1CHZは5円相当なので、2万CHZは10万円相当になります。数億円をうたうものと違って、ちょっと現実味がある価格なのが怖いですね。
メールの本文には「暗号通貨に関する知識を解説してあげます。」というメッセージも書いてありました。公式サイトのURLが記載されているのですが、このリンクを開くと詐欺サイトに繋がってしまいます。HTMLメールだと表示している文字列と実際にアクセスするURLを変えることは簡単なのです。
ちなみに、公式サイトのURLは「https://www.myetherwallet.com/」になりますが、このメールで実際に誘導されたのは公式サイトと似たURLのウェブサイトです。注意して見ないと気付きにくいほど紛らわしい文字列で構成されているのが特徴です。
筆者がアクセスしたときは、ウェブブラウザーの機能により、詐欺サイトであることを警告するメッセージが表示されました。数時間後、強制的に表示させようとすると、「この接続ではプライバシーが保護されません」という警告も出るようになり、その後、詐欺サイトそのものが閉鎖しました。
警告が出た時点で絶対にアクセスしないようにしてください。そして、なぜ詐欺メールに引っ掛かったのかを確認して、今後の対策に生かすようにしましょう。
ちなみに、メールの発送元IPアドレスを調べたところ、中国から発信されていることが分かりました。
消費者庁は仮想通貨に関するトラブルの注意喚起を行っています。例えば、「仮想通貨は投資金額に対して毎月5~10%もの利益が出る」と誘い、入金するように促す詐欺があります。当然、利益が出るわけではなく、入金した分は戻ってきません。最近は、メールだけでなく、SMSでフィッシング詐欺を仕掛けてくることも多いようです。
対策としては、まず怪しいメールを開かないことが重要です。次に、開いたときのURLが公式のものか確認しましょう。メールに記載されたリンクを開くのではなく、自分で検索し、ホームページに直接アクセスすればフィッシング詐欺に遭う可能性を格段に減らすことができます。頻繁に使うウェブサイトであれば、ブックマークに登録することもお勧めします。
銀行口座や仮想通貨など、金融資産を直接引き出せるようなサービスの情報を入力する時は万全のチェックを行ってください。「これまで大丈夫だったから、今回も大丈夫だろう」という気の緩みは危険です。デジタルリテラシーを身に付けて被害に遭わないようにしましょう。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
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