被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

暗号通貨をめぐるトラブル、「超高利率」をうたうネット詐欺に注意

 将来に備えて資産運用するために運用先を探す際、高利率だけを追い求めるのはとても危険です。銀行であれば年0.2%で高金利なところ、年率10%、20%が確実に手に入る、ということなどあり得ません。しかし、今、暗号通貨で詐欺に遭う人が増えています。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

 その大きな理由がビットコインです。2009年に利用開始されてから間もないころ、1BTCは約0.07円でした。2010年にはピザ2枚で1万BTCという価値でしたが、現在(6月19日時点)では、1BTCは約399万円に高騰しました。

ビットコインの価値は乱高下を繰り返し投機対象になっています

 ネット詐欺師はビットコインを例に、「年率10%、100%は余裕。うまくいけば大金持ちになれます」とTwitterやLINE、メール、SMSなどで話を持ち掛けてきます。そして、指定の取引所へ送金させたり、詐欺コインを買わせたりします。

 この詐欺の被害が拡大するのは、その仕組みにあります。なんと、最初のうちは利益が約束通りに振り込まれるのです。元本はそのままなので、エンドレスに儲かると信じ込んでしまいます。そうすると、投資額を増やしたり、友人を勧誘したりします。

 実は、ネット詐欺師は資金の運用はしておらず、新たに出資してもらったお金を回しているのです。そのため、出資者が増えている状態では、見た目上問題なく回ってしまいます。当然、自転車操業ですので、出資者の増加率が鈍化すると、配当が負担になってきて、いつかは破綻します。

 この詐欺は、1920年代にこの手の詐欺を行った詐欺師チャールズ・ポンジの名前に由来し、「ポンジ・スキーム」と呼ばれます。ネットであれば、昔よりも格段に広い範囲の人に詐欺を仕掛けられます。その分被害も大きくなります。

 例えば、2016年から広まった「BitConnect」は、2017年に上場し、貸し付けを行うことで、なんと日利1%という高利益を得ることができました。そのため1BitConnect Coinが約463ドルになったのです。しかし、米国の規制当局からはポンジ・スキームだという警告が出されており、1BitConnect Coinの価値は約20ドルに暴落し、取引所での扱いを停止しました。

 結果的に1BitConnectで20億ドル以上を調達した5人のプローモーターは、米国証券取引委員会(SEC)から告発されました。

SECは5人のプロモーターに対して訴訟を起こしました

 ポンジ・スキームはハイペースで新しい顧客を増やすことで、その分長い間詐欺を実行できます。そのため、紹介制を取ることも多いのです。顧客がほかの顧客を紹介すると、キックバックがもらえる、というものです。日本では「ねずみ講」と呼ばれていますね。

 顧客を紹介すると大きなリターンをもらえる時点で、ネット詐欺を疑ってください。ポンジ・スキームが破綻すればお金も失い、人生が壊れてしまいます。

 筆者が所属するDLISにも、暗号通貨関連のホームページのURLを送ってきて「これは詐欺ですか?」との問い合わせが日々寄せられます。しかし、例え怪しく見えても、捜査当局が詐欺だと認定して乗り出さない限り、我々が断言することはできません。

 ただ、大切な自分のお金を投資するために、投資先の運用法を理解できないのなら、絶対に手を出してはいけません。「儲かる」という営業トークだけを信用してはいけないのです。仕組みを理解できないまま鵜呑みにしてしまうことは危険です。

 一見問題なさそうでも破綻することがあります。例えば、ブロックチェーンを利用したDeFi(分散型金融)の1つ、「TITAN(Iron Titanium)」は時価総額は一時、20億ドルでしたが、2021年6月16日、一夜にして価値がほぼゼロになりました。売りが売りを呼ぶ取り付け騒ぎが起きたのです。投資していた人にとっては絶望の朝となったことでしょう。すでに、ネットでは詐欺ではないか? といった声も上がっています。

 暗号通貨関連の詐欺に遭わないためには、理解していないのなら手を出さない、という基本を肝に銘じてください。

 デジタルリテラシーというよりも、自己防衛の基本です。大切な貯金を失わないために、投資する前には慎重に調査することを忘れないでください。

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