奥川浩彦の「岐阜の山奥に移住しました」

第15回

玄関前に異変、まさかクマ!? ネットワークカメラを設置しました。そこに映っていたのは……

 昨今、事故・事件・災害のニュース映像はスマホやドライブレコーダー、防犯カメラで録られたものが多い。筆者には狙われる財産はないので、セキュリティ意識はそれほど高くないが、「移住したらネットワークカメラ(防犯カメラ)は設置したいなぁ」と思っていた。連載の第15回は、実際に購入・設置したネットワークカメラについて50点ほどの画像と動画でお伝えしよう。

屋外設置が楽かも。ソーラーパネル充電の機種に惹かれました

 筆者が神奈川県川崎市から岐阜県加茂郡白川町に移住したのは2024年12月15日。その2カ月前となる10月8日、インターネットで物件探しをしていたころに目にとまったのは、Ankerのネットワークカメラ「Eufy SoloCam S340」発売の記事だった。広角・望遠のダブルレンズを搭載、8倍ズームと、かなり高スペック。筆者が惹かれたのはソーラーパネル充電で、「電源の屋外配線なしで使えるのは設置が楽かも」と思った。記事に掲載されていた価格は2万4990円。数千円から買えるネットワークカメラとしてはそこそこ高級機だ。

 引っ越し直前、INTERNET Watchに掲載されたAmazonブラックフライデーセールの記事で、この機種の価格が1万9992円となっていた。ただ、ネットワークカメラの設置に緊急性はなく、「そのうちゆっくり考えよう」と価格だけ記憶して半年が過ぎた。

機種選定は方向転換。高価なソーラーパネル充電は不要になりました

 移住後の2025年7月。Amazonプライムデーでネットワークカメラを物色。移住前と方向性は大きく変わっていた。ネットワークカメラの取り付け場所の候補は建物の南東の角。そのすぐ近くに屋外用のコンセントがあった。これで電源供給問題はクリア。高いソーラーパネル充電は不要となった。

ネットワークカメラ設置予定場所のすぐそばにコンセントがあった

 電源供給が容易になれば、選択肢は豊富……というか、多すぎて迷う。詳細は後述するが、過去に複数メーカーのカメラを使用して(評価して)印象のよかったTP-Link、Anker、EZVIZの中から、TP-Linkに絞って機種選択をした。屋外用でパン・チルト、自動追尾ができる製品として「Tapo C530WS」「Tapo C520WS」「Tapo C510W」をピックアップ。TP-Linkのウェブサイトで3機種を比較すると、多くの項目は共通だった。その比較表から、機能差のある部分だけを抜き出してみた。

TP-Linkのウェブサイトで3機種を比較。筆者が気になったところを赤線で示した

 Tapo C510Wはややスペックが劣る。Tapo C530WS、Tapo C520WSの違いは解像度と対応するWi-Fi規格。解像度はフルHDで十分、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)の速度もそれほど必要ないので、価格の安いTapo C520WSを購入した。

Amazonプライムデーで6650円で購入(通常価格は9500円くらい)

やっとネットワークカメラを設置しました

 専用アプリをスマホにインストール。設置場所は予定どおり建物の南東の角。軒下の先端付近とした。

角材を2つ加工し、防腐塗料を塗装
組み立てた角材にネットワークカメラを取り付け、建物の南東の角、軒下の先端付近に設置
軒下の奥の上部。雨の心配のないところにインシュロックタイをタッカーで固定
固定したインシュロックタイでネットワークカメラのACアダプターを壁に設置し、電源ケーブルを取り付けた
外壁のコンセントから給電
パン・チルトで向きを調整し、自宅敷地内の入り口部分を撮影

 設定は多岐にわたるが、主なところだけ紹介しよう。画質の項目では3つの解像度が選択できる。筆者は「1080p・フルHD(1920×1080)」で使用している。

3つの解像度が選択できる

 解像度を上げれば高画質になるが、ファイルサイズは大きくなり、microSDカードに記録できる時間は短くなり、古いデータから自動的に上書きされる。ちなみに2026年8月末時点で、64GB(最大512GBまで対応)のmicroSDカードに残っていた録画は、2025年12月18日からの8カ月半分だった。録画期間は、動体検知で録画した回数によっても異なり、映像が1つだけの日もあれば、複数の映像が記録された日もあり、設置環境によって大きく異なる。念のため言及すると、microSDカードに録画された映像もリアルタイムの映像も、スマホでいつでも、どこでも見ることができる。

2026年8月末時点で一番古い映像は2025年12月18日
2026年1月7日の映像は1つ。郵便配達の人だけだった
天候が荒れた2026年2月23日の映像は56。雨、雪、風の強い日は動体検知の数が増える
浄化槽の点検。青いバーが連続しているので、点検作業中30分以上撮影が続いた。ほかにも筆者が洗車やDIYを行った日は録画時間が長い

 画質が気になる人のため、2K QHDとフルHDの動画を録ってみた。参考にしていただきたい。

2K QHD/25fps。13.507秒。4.13MB
フルHD/25fps。11.974秒。2.66MB
2K QHDのスクリーンショット(2560×1440)
フルHDのスクリーンショット(1920×1080)

 コンビニやビルの防犯カメラは24時間録画が一般的。刑事ドラマでは、徹夜で録画を確認し、犯人が映っている映像を探すシーンがある。一方、個人のネットワークカメラは動体検知で、変化が生じたシーンだけ録画するのが普通だ。Tapo C520WSは人物、ペット、車両と動体(画像変化)を検知して録画を(数秒前から)開始する。

人物、ペット、車両と動体の検知をオンにしている
スマホの画面上では車両と表示される。録画された映像には表示されない
録画された映像。クルマが見える直前(検知する数秒前)から録画は開始される(640×360にリサイズ)
ネコ、タヌキなどの動物はペットと認識される

 ネットワークカメラの設置から1年。一番映っているのは筆者。次は郵便配達の人、その次は宅配便といった感じだ。ペット(として検知される動物や虫)はネコ、タヌキ?、アライグマ?――などがたまに映っている。確認してみると一番多いのはネコ。極まれにタヌキ。アライグマは一回だけだ。編集したものを見ていただこう。

タヌキ・アライグマ編 28秒(720×480にリサイズ)
ネコ編 80秒(720×480にリサイズ)
クモ・ハチ編 88秒(720×480にリサイズ)※近すぎてボケている

 クルマ、人など大きな被写体は動きに自動追尾してパン・チルトしているが、小動物には追尾したりしなかったり。おそらく録り逃しているケースもあるだろう。現在、高さ2.7mに設置しているネットワークカメラを低い位置に設置すれば小動物も大きく映るので、追尾する確率が上がりそうだ。

 自動追尾の確率を上げるなら人などの導線を考慮して設置場所を決めたい。ネコを自動追尾できた映像とできなかった映像を見ていただこう。

ネコを自動追尾できた映像 19秒(1280×720にリサイズ)
ネコを自動追尾できなかった映像 11秒(1280×720にリサイズ)

 被写体の導線(移動するルート)が、ネットワークカメラから離れていると追尾できるが、真下を通過すると追尾できない。実際、筆者や郵便配達の人が映っている映像を見ても、ネットワークカメラに近い位置を通ると追尾できないケースが多い。ビルや自宅の入り口に設置する場合、導線の真上ではなく少し横位置から録れる場所に設置したい。

玄関前に異変! 犯人はイノシシでした

 2026年7月2日、玄関の前の石垣の下が、重機で掘り起こされたようになっていた。イノシシ? まさかクマ? 玄関はネットワークカメラの背中側になるので何も映っていない。夜間、ネットワークカメラの向きを石垣に向けると7月3日・5日にイノシシが映っていた。

7月3日、深夜にイノシシ
7月5日、深夜2時にもイノシシが映っていた

 敷地に通じるスロープは東側。ネットワークカメラの向きも東側を向いている。西側から進入してくる動物は、玄関前を通過してガレージ前まで来ないと映らない。毎晩、カメラの向きを石垣方向に変更するのは手間なので、もう1台ネットワークカメラを玄関付近に設置することにした。タイミングよくAmazonプライムデー。同じ機種を買おうとしたら1000円ほど値上がり。ポチる直前まで迷ったが「Tapo C520WSとTapo C510Wの違いを記事にすれば読者の参考になるかも?」という理由で、前年に選択しなかった少し低価格のTapo C510Wを購入した。

価格の安い「Tapo C510W」を購入
玄関脇に設置、玄関前を通過する動物を撮影する

 設定で気になった点は、画質の選択肢にフルHDがなく2K(2304×1296)、720p、自動の3つ。フルHD(1920×1080)は選択できなかった。自動を選択すると確認できた映像は2Kとなっていた。

 先に設置したTapo C520WSでは検知エリアは全体にしていた。私道を通るクルマの大半は筆者宅に入るクルマ。たまに通過するのはその先の農地に行くクルマだけ。玄関先に取り付けたTapo C510Wは玄関横の部屋の窓に遮光ネット(連載第14回を参照)があり、これが風で揺れると動体検知となるため、画面の左右を検知エリア外とした。

アクティビティゾーン(検知エリア)は複数追加できる。10個追加してみた
実際の設定はゾーン1つ、左右を検知エリア外とした。4隅をスライドさせて変形できる

 設置から1カ月半。イノシシは映っていない。映っているのは人(筆者、郵便配達の人、宅配業者など)と蛾だけ。ネコもタヌキも映っていない。それどころか、先に設置したTapo C520WSもイノシシが出た7月5日以降、ペットの検知がない。イノシシ臭?でネコやタヌキが近付くことを避けているのか、7月の暑さで動物たちも不要不急の外出(徘徊)を避けているのか、2カ月ほど動物がネットワークカメラに映っていない。

人以外に映ったのは蛾

 Tapo C520WSとTapo C510W。比べてみると、筆者はTapo C520WSにアドバンテージがあると感じている。もともと、検知して録画された動画はたまに見るだけ。今回、Tapo C520WSの8カ月分の動画をチェックする際、画像の一覧にペットの表示があるものをピックアップして再生した。この表示がないと、全ての動画を再生しないと確認ができない。Tapo C510Wで数カ月分の映像から、動物が映っている映像を探すのは膨大な労力が必要だったと思われる。

人物、ペット、車両のアイコンは膨大な録画から必要な映像を探す際に有効

 結果として最初にTapo C520WSを選んだのは大正解だったと思っている。

ネットワークカメラは海外メーカー製がいいかもしれません

 少し時計の針を戻そう。余談となるが連載第12回でお伝えしたように、筆者はプラネックスコミュニケーションズの受託広報、その後、社員となってスイッチングハブの商品企画などを行っていた。その時期、ネットワークカメラにも携わる機会があった。

神奈川県川崎市に住んでいたときの自宅の玄関、駐車場にネットワークカメラを設置していた

 次の写真は自宅でネットワークカメラをテストしている様子。国内外の10機種を並べて撮影を行った。撮影に加え、インストールの手順、各種設定なども比較した。

被写体のルンバと扇風機を動かして10台のネットワークカメラの動体検知エリア機能を検証(2021年撮影)

 機能面で差(個性)があったのは、動体検知/検出エリアの設定。すでに5年が経過していて、製品そのものが販売終了、アプリも進化しているので、あまり参考にはならないが見ていただこう。結果、この時点では国内メーカー(ブランド)より海外メーカー(ブランド)が、一歩先を行っている印象だった。

国内メーカー 1。検出エリアの設定は四角1つ。サイズは変更可能
国内メーカー 2。5×5マスから検出エリアを選択
海外メーカー 1。検出エリアは四角、サイズは変更可能。四角の数は増やせる
海外メーカー 2。検知エリアは複数。それぞれのエリアは変形可能
海外メーカー 3。22×15マスを指でなぞるだけで検出エリアの追加、削除が可能。操作性バツグン

 この比較検証より前、時期は覚えていないが、メルコ(現バッファロー)で商品企画を行っていた知人にネットワークカメラについて教えてもらった。製品、チップトレンド、流通、台湾ベンダーなどに詳しく、頼りになる存在だった。

 当時、監視カメラで世界トップシェアは中国のHikvision(ハイクビジョン)。世界中の多くの空港に監視システムを導入するなど技術力、コストパフォーマンスなどで他社を圧倒していた。Hikvisionのコンシューマー部門(家庭用のネットワークカメラなど)が独立したのがEZVIZ(イージービズ)。日本語を話せる担当者を紹介してもらい、WeChatで話をした際に「使ってみて」となり、後日送られてきたネットワークカメラが上述の「海外メーカー 3」。指でなぞるだけで検出エリアの追加・削除が可能、操作性バツグンの製品だった。また、マンションの防犯システムに強い流通業者など、業界の構図も教わることができた。

Hikvisionのウェブサイト。180の国・地域で使用され、2万5000人以上の研究開発員、5万7000人の従業員がいるという

 このころ、監視カメラ業界に激震が走った。INTERNET Watch読者は、Huawei(ファーウェイ)が米国から締め出されたのを覚えているだろう。Huaweiの5G用通信機器やスマホは米国で輸入禁止となった。HuaweiへのAndroid OSやスマホ用半導体の提供も制限され、一時スマホ市場から姿を消すほどだった。同じ時期、Hikvision製品も米国で輸入禁止、米国からの部品供給も制限された。

 日本・世界の監視カメラ業界に影響が大きかったのは、Huaweiの100%子会社で半導体設計部門のHiSilicon(ハイシリコン)が米国の制裁対象となり、台湾TSMCへの製造委託が禁止された。このHiSiliconの監視カメラ用チップは安くて高性能。世界シェア約60%で家庭用のネットワークカメラから大規模な監視システムまで幅広く採用されていた。

 TSMCでの製造ができなくなり、在庫品のHiSiliconの価格は爆上がり。ネットワークカメラメーカーはHiSilicon以外の会社のチップに移行したり、製品を販売終了にしたり、混乱が発生した。Huawei、HiSiliconは中国最大の半導体受託製造会社であるSMICに製造先を変更。SMICは制裁前に日本やオランダから半導体製造装置を爆買いし対応。その後、Huaweiはスマホ用の独自OSを開発。Googleマップ、Gmailなどが使えないので日本や欧米では売れないが、中国国内ではシェア1位を回復した。

 日本ではHuawei、Hikvision製品は政府や地方自治体の導入は制限されているが、民間施設での制限はない。EZVIZのネットワークカメラも家電店やネット通販で普通に購入することができる。ここ最近、筆者はネットワークカメラ業界の動向を気にはしていなかったが、性能・コストを考慮すると海外ブランドが主な選択肢と考えていた。ちなみに筆者宅の掃除機はダイソン、ルンバ、ロボロック……日本製はない。昭和の時代に海外製の家電品を買うことは考えられなかったが、昨今は「海外製の掃除機、普通じゃん」という時代。海外ブランドのネットワークカメラは特別ではないと思っている。

奥川浩彦の「岐阜の山奥に移住しました」連載記事一覧

奥川浩彦@ アイピーアール

パソコン周辺機器メーカーのメルコ(現:バッファロー)で広報を経て、2001年にイーレッツの設立に参加し、USB扇風機などを発売。2006年、iPRを設立し、広報業とライター業で独立。INTERNET Watchでは主に税金関連の記事を執筆。Car Watchではモータースポーツ関連のフォトグラファーとして活動中。