イベントレポート

CEATEC 2023

日立ブース、VRゴーグルなしの設備保全やCO2排出可視化サービスなどを展示

 日立製作所は、CEATEC 2023において、「#あなたとつくる未来社会」をテーマに、8つのソリューションを展示した。

CEATEC 2023の日立ブースの様子
日立ブースには大阪・関西万博の公式キャラクターであるミャクミャクも登場。日立製作所の小島啓二社長兼CEOとのツーショット
日立ブースで説明を聞く小島社長。CEATEC 2023の主催者であるJEITA会長も務めている

「スペーシア X」をメタバースに再現、生成AIにより保守業務を高度化

 なかでも注目を集めたのが、インダストリアルメタバースによって、鉄道設備の保全を高度化する取り組みだ。

 ブースでは、3面のディスプレイを用意し、そこに鉄道車内の様子をメタバース空間として表示。鉄道の車両および設備の保全が行える事例を紹介した。この仕組みでは、VRゴーグルなどを身に着ける必要がなく、操作もスマートフォンを使って行える。

 デモストレーションでは、東武鉄道の「スペーシア X」の車両内部を、CADデータをもとにメタバース空間上に構築するとともに、蓄積した保守履歴データなどを活用。ここに、生成AIを組み合わせることで、自然言語で問い合わせるだけで、故障の原因や修理方法などに関して、最適な回答が得られる。

 例えば、スペーシア Xの1号車に設置されているカフェカウンターでは、4台のビールサーバーが置かれているのが大きな特徴のひとつだが、メタバース空間上でもこれを再現。

 ビールサーバーが置かれている場所で、「ビールの泡立ちが悪いです」と質問すると、生成AIが「最も可能性が高い原因はタップノズルの劣化です」と回答。さらに、「タップノズルを交換することで問題が解消されるでしょう」と修理方法も提案する。

 日立製作所では、鉄道以外にも、さまざまな保守現場での活用を想定しているほか、今後、幅広い利用を模索していく考えだという。

東武鉄道のスペーシア Xの車内をメタバース空間に再現し、保守や修理で活用できる

移動手段ごとの環境負荷が分かるCO2排出量可視化サービス

 また、移動に伴うCO2排出量可視化サービスでは、旅行者などのスマートフォンから得られるデータを用いて、その移動経路を推定し、自家用車での移動と比較してCO2排出量をどれだけ削減できるかを算出。環境負荷の少ない鉄道やバスの利用を促すソリューションと位置づけている。

 経路計測やモビリティの種類も判定できる点が特徴だ。鉄道事業者や自治体向けには、CO2排出削減量に応じて、ポイントなどのインセンティブを付与するといったサービスの提供につなげることができる。今回の展示では、試作した旅行客向けアプリを体験できた。

CO2排出量可視化サービスでは、試作した旅行客向けアプリを体験することができた

インフラ保守ソリューションは、一部の自治体すでに活用

 社会インフラ保守ソリューションとして展示したのが、漏水検知サービスと地中可視化サービスである。

 漏水検知サービスでは、独自開発の超高感度振動センサーを用いて、半径150m以内の管路の状態を常設監視。センサー内に実装した独自アルゴリズムで振動から漏水していることを検知、解析し、その結果を、LPWA通信を通じてクラウドに伝送し、管路の漏水発生状態をリモートで確認できる。

 従来の漏水調査は、人が出向いて音聴棒と呼ばれるツールを使い、さらにボーリング調査で漏水位置を確定していたが、こうした手間がなくなるほか、異常管路の早期検知、早期補修が可能になる。

 また、災害発生時にも対象エリアの漏水状況を網羅的に把握でき、迅速な復旧対応が可能となる。すでに熊本市で利用しているという。

 地中可視化サービスは、地中レーダー探索装置とAI解析により、地下埋設物情報を可視化するソリューションだ。地質調査などで実績を持つ応用地質が保有する地中レーダー探査装置で地下を探査し、日立製作所が持つAI解析技術により、広域の埋設物情報を正確に可視化し、プラットフォームで一元管理する。

 これにより、既存の埋設物情報の収集や、現場での実物確認の効率化、埋設管損傷事故および工期遅延発生の防止といったリスク低減にも貢献できるという。

独自開発の超高感度振動センサー。水道管に取り付けて使用する

ストレージ製品では、初めて再生プラスチックを使用

 サーキュラーエコノミーの展示では、データセンターなどで利用されるストレージ製品と、家庭向けコードレススティッククリーナーの取り組みについて紹介していた。

 ストレージ製品では、これまでにも、前機種に比べて、CO2排出量を約30~40%削減するといった技術を継続的に開発してきた経緯があるが、新たに「HITACHI」のロゴなどが入るベゼル部分に再生プラスチックを約40%使用することになる。

 ストレージ製品で再生プラスチックを使用するのは初めてのことで、データセンターでの長期利用を想定した難燃性や経年劣化、精密機器としての成形精度など、企業や官公庁向けストレージ製品に求められる厳しい安全基準を満たしていることを評価したという。

 再生プラスチックに含まれるリサイクルポリカーボネート樹脂は、CDやDVDのディスク、ウォーターサーバーの水ボトル、自動車のヘッドライトカバーなどで使用されたプラスチックを原料にしているという。

 また、コードレススティッククリーナーでは素材の一部に再生プラスチックを使用している。2022年度モデルから再生プラスチックを採用してきたが、「パワーブーストサイクロン」の2023年度モデルでは、再生プラスチックを質量比で40%以上を使用した機種に一本化。製品本体のハンドルカバーや付属品のスタンド式充電台などに再生プラスチックを使用し、資源循環への取り組みを加速しているという。

ストレージ製品のベゼル部分に再生プラスチックを使用する
コードレススティッククリーナーの「パワーブーストサイクロン」
付属品のスタンド式充電台などに再生プラスチックを使用