iNTERNET magazine Reboot

Pickup from「iNTERNET magazine Reboot」その12

なぜ日本からグーグルが生まれなかったのか?

――ウェブ創世記を知る人々と振り返る[拡大版]

海外は視野にあったのか

サービス開発として考えた場合、当時のサービスの多くは、日本でこそ盛り上がっていたが、海外はまったく視野になかった。いまネットのサービスを作るとき、初めから海外を視野に入れることが当たり前になっているが、当時はどうだったのか。

髙田敏弘さん(左)、高橋克巳さん(右)

遠山:グーグルが日本でもメジャーになった頃からゼロ年代ぐらいまでは、インターネットは世界的に同じサービスが使われるのが当たり前という感覚を抱いていたんです。でも、2010年以降は、日本ではLINEでアメリカではWhatsApp、中国ではWeChatみたいに、国によってアプリケーションがまるで違っていいんだという、価値観の転換が起きました。

坂本:gooがなぜグーグルになれなかったのか。広告ビジネスを考えたときにも言語は重要だから、日本語を中心に考えている企業では、難しかったんじゃないかな。

クロサカ:どうしてもグーグルとフェイスブックが強く見えるから、もう日本では新しいサービスを作れないんじゃないかと思いがちだけど、例えば「食べログ」みたいに国内発の強いサービスはある。欧米ではYelpが強いけど、日本にはなかなか進出できないでいる。だから、いまでも日本から海外に出て行くことはできるんじゃないの。

坂本:以前はネットのサービスは、エンジニアとかネット好きのものでしたが、これだけ普及するとサービスも生活者目線にならないといけない。むしろ今のほうがチャンスはあるのかもしれない。

クロサカ:そのチャンスを掴みに行く時に、「通信屋さん」というアイデンティティや矜持が、強みとなるのか、弱みとなるのか。それが分かれ目です。

遠山:インフラ屋の矜持ってありましたが、グーグルの矜持って「Don't be evil」ですよね。あれって裏返すとevilになろうと思えば、いつでもなれるということじゃないですか。データとソフトでできることに関しては、とりあえずなんでもやる前提で「Don't be evil」というという言葉だけで縛っているだけで、本質的にはリミッターがない。

坂本:evilといえば、アマゾンなどはひたひた感があって。アマゾンのプライムは本当に良いビジネスです。メディア企業とは目線が全然違いますよね。コンテンツは追加しないほうが得なんだけど、そこをちゃんとやっていくのが面白いところ。

クロサカ:無料コンテンツの数をむやみに増やすんじゃなくて、入れ替えているんですよね。「まもなく無料で見られなくなります」って。アマゾンプライムだから実は無料じゃないし、そのあたりも含めてとても「うまいなあ」と。そして彼らをきっかけに、インターネットコンテンツがこのまま無料であり続けるのか、ある種のサブスクリプションに入らないと供給が担保されないのか、新しいモデルが試されている気がします。