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Slackの大規模拡張を発表、「Slack Connect」接続企業数の250への拡大など
「ワークフロービルダー」の拡張も~より柔軟な業務フローの構築が可能に
2021年11月16日 22:00
米Salesforce.comに買収されたSlackは、2021年7月より同社の一部門として新たなスタートを切った。従来通りCEOのスチュワート・バターフィールド氏のリーダーシップのもと、独立したSlackブランドで運営されることになり、これまでSlackのプライベートイベントとして開催されてきた「Frontiers」も、11月16日・17日(米国時間)の2日間にわたって開催されている。
それに先だってSlackは報道発表を行ない、Frontiersで発表するSlackの新機能を明らかにした。その中でSlackは、同社が掲げているコンセプトとなる「デジタル本社(Digital HQ)」という、本社機能をSlack上で再現するために必要となる拡張を行った。具体的には、ローコードでSlack上の業務プロセスを自動化する「ワークフロービルダー」などの機能の拡張や、従来は20社まで相互に接続することが可能になっていた「Slack Connect」(Slackを利用して外部企業と安全にコラボレーションを行う機能)が最大250社まで相互接続可能になることなどが発表された。
目指すは「デジタル本社」、Slackによって本社機能をサイバースペース上に再現
SlackのCEOであるスチュワート・バターフィールド氏は「Slackは最高の“デジタル本社”を目指している。物理的な会社は変化に時間がかかるし、維持に多額のコストもかかる。それに対してデジタル本社は、簡単に進化させることができるし、新しい機能を追加させるのも容易だ。例えば、われわれは採用システムを変更し、採用されるとそれがSlackを通じて社内の関係部門に通知され、自動で処理されていくというシステムを構築している」と述べ、Slackが目指しているところは、同社が「デジタル本社(Digital HQ=Headquarter)」と呼んでいる、本社機能をそっくりデジタル上に構築していくという哲学であることを強調した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、多くのオフィスワーカーがリモートワークやテレワークなどと呼ばれるかたちの勤務形態を強いられることになり、新規陽性者が激減した日本でも、今もモートワークを続けている企業は多い。企業にとっては、従業員がリモートワークでも成果を出してくれるなら、オフィスの維持費がかからないリモートワークは合理的と言える。その反面、リモートワークにはしてみたものの、それがうまくいかない企業や職種などもあり、企業にとってはリモートワーク的な働き方と通常の出社による働き方、両方ができるように環境を整備し、より従業員にとって成果が出せる方を選択できるようにしていく必要がある。そうした“ハイブリッドワーク”と呼ばれるパンデミック後を見据えると、Slackが言うデジタル本社といった会社の機能を全てデジタル化してしまうというコンセプトは注目されていく考え方と言える。
バターフィールド氏は、そのデジタル本社としてSlackは優れた選択肢であり、オフィスワーカーのワークフローをより生産性が上がるものにするため、Slackは機能を拡張していくのだと強調した。
「新しいSlack platform」によって「ワークフロービルダー」を拡張、より柔軟な業務フローの構築が可能に
今回のFrontiersで、Slackはいくつかの新しい発表を行っている。その代表的なものは「新しいSlack platform」と呼ばれるもので、具体的にはワークフロービルダーの拡張だ。
ワークフロービルダーはSlackの機能の中では最もユーザーに人気の機能の1つで、簡単に言ってしまえば、自分の仕事の進め方(英語でworkflow)に応じて自動で処理が進むようにあらかじめ設定しておけるツールだ。
このワークフロービルダーは、基本的にはローコード(ソフトウェアのコードを書かなくてもビジュアルツールなどを利用してプログラムを作るかのようにカスタマイズができること)のツールとなっているが、例えばサードパーティーの外部アプリと接続して使うなど、やや込み入ったことを行う場合には、APIを利用してSlackとサードパーティーのツールを接続するためのプログラムをプログラマーに作ってもらわないといけないなどの制約があった。
しかし新しいSlack platformでは「条件ロジック」を利用することができるようになる。これにより、ユーザーの応答に応じて次のプロセスをどのように進めるのかなどを、プログラムすることなくローコードで実現することができる。例えば、承認権者の承認が下りたら、新しいチャンネルを作ってチームを招聘するなどの分岐が可能になるし、あるいはIT部門のフローとして、誰かが会社に登録されたスマートフォンをなくしたと申請してきた場合には、それをすぐにセキュリティチームのチャンネルに通知して、リモートからロックするなどのワークフローをローコードで実現することができる。
また、「メッセージのメタデータ」機能では、サードパーティーアプリとのデータ共有がより柔軟に行われるようになる。サードパーティーやファーストパーティーのSlackアプリは、Slackと1対1の動作が一般的だった。このため、複数のアプリに対して同時に処理をかけるなどはできなかったのだが、複数のアプリが同時にデータを送り、その結果を返すという機能が間もなく実装される。例えば、ウェブサイトがダウンしたというインシデントが発生したときに、IT部門のSlackに新規インシデントチャンネルを開き、「PagerDuty」などの呼び出しアプリを使ってその新規チャンネルに対象とするメンバーを自動で招待する。こうした複数のステップをまとめて自動化することで、ウェブサイトのダウン時間を最小限にする――そうした使い方が可能になる。こちらは2022年の夏に導入予定だ。
また、サードパーティーのアプリなどにSlackのアカウントで簡単にサインインできるようにする「Slackでサインインのリンク」(2022年夏に導入予定)、サードパーティーのアプリがSlackでのツール用ボタンをクリックするだけで設定できる「Slack上での通知設定」(2022年夏に導入予定)などの機能も追加される。
そのほかにも、アプリケーション開発者向けに新しいアプリIDを作成したり、イベントサブスクリプションを管理したり、コードを自動生成する新しいコマンド(Slack SLI)、さらには新しいSDKが投入され、プログラマーがコードを書くのをより容易にする機能などが追加される予定となっている。
従来は連携先が20社までだった「Slack Connect」、来年には250社へ拡大することが可能に
Slackのプロダクト担当バイスプレジデントであるイラン・フランク氏によれば、Slackは、複数の企業が連携してSlackを安全に利用できる機能「Slack Connect」において連携できる企業数を、現行の20社から250社へと拡大する計画だという。
フランク氏は「Slack Connectのリリース当初は、さまざまな制約などから20社に限定していた。しかし、それをSlackの内部アーキテクチャーを見直して改良し続けていく中で拡大することが可能になり、250社へと拡張することが可能になった。これにより、より多くの企業がSlack Connectに参加できるようになり、参加する企業の利便性が高まる」とコメント。Slackのサーバー側、そしてクライアント側ツール(アプリ、ウェブなど)のアーキテクチャーを改良することで、接続できる企業数を増やすことができるようになったと説明した。
例えば、企業のサプライチェーン全体でSlack Connectでやり取りをしている場合などで、20社以上を参加させたいときなどに制約があったが、250社に拡大されることで、そうした制約がなくなることになり、より大規模なチャンネルをSlack Connectで複数の企業が構築することが可能になる。この250社への拡大は、2022年の初頭に行われる計画だ。