被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
若者もネット詐欺にご注意!
ネットゲームのアカウントやアイテムをRMTで手に入れる
2019年3月15日 06:00
スマホやPCを問わず、ネットゲームが大人気です。気に入ったタイトルにはまってしまうと、より強いキャラクターやアイテムが欲しくなるものです。そのため、時間をかけてプレイしていきますが、社会人だとなかなかその余裕が取れないかもしれません。
そこで使われるのが“RMT(リアルマネートレード)”です。機種変更などのためにアカウントの引き継ぎは可能ですし、ゲームによってはアイテムやキャラクターの譲渡が可能なこともあります。この仕組みを使って、他の人が育成したデータを現金で購入するというものです。
RMTはほとんどすべてのゲームで規約により禁止されていますが、それでも手を出す人は後を絶ちません。例えば、普通にプレイすると10時間はかかって手に入れるゴールドやアイテムが2000円で売っていたら、自分の時給を考えて買いたくなってしまう人もいるのです。逆に、外国では数時間の労働で1000円手に入れば十分というところもあります。自動化ツールを使って手間をかけずに収集しているケースもあります。ここで売買が成立します。
RMTの取引情報は専用のネット掲示板だったり、ゲーム内のチャットでやりとりされます。少額のやりとりであれば、振り込み後、問題なくアイテムをゲットできることでしょう。プレイヤーは「得をした」と思うかもしれません。しかし、高額のRMTになると詐欺が多発します。
お金を振り込んだのにゴールドがもらえないとか、違うアイテムを渡されるという事例があります。相手を突き止めようとしても、受け渡し時のキャラクターに無料作成したばかりのものを使えば削除するのも簡単です。銀行振り込みをしたなら口座番号がありますが、そこから相手を特定するにはものすごい労力がかかります。
ゲーム会社に泣きついても、そもそも禁止行為のRMTをしているのですからまともに取り合ってくれないでしょう。それどころか、ユーザーのアカウントまで凍結される可能性もあります。警察と弁護士にお願いして動いてもらえれば、追跡できる可能性はあります。しかし、相手が本格的に詐欺を仕掛けているなら、別名義の口座を使っているはずなので、捕まえられる可能性は低くなります。もし、仮想通貨で振り込んだなら絶望的です。
くれぐれもRMTには手を出さないようにしましょう。ネット詐欺は人の欲望の隙を突いてきます。さらに、非合法だったりグレーだったりする行為の場合は、その可能性は高まります。もし、被害に遭っても自分も後ろめたいことをしているので、警察や関係機関に相談しにくいからです。
上記のように、強いキャラクターやアイテムはRMTで販売できます。そこで、それらを奪取するためのネット詐欺も横行しています。まず、定番なのが“フィッシングサイト”です。ゲームのログイン画面を模したウェブサイトを用意し、「不正アクセスされた可能性があるのでパスワードを変更してください」とか「新規キャンペーンの先行予約を受け付けています」といったメールにURLを記載しておくのです。
もしアカウント情報を入力してしまえば、相手はその情報でログインしてパスワードを変え、あらゆる持ち物を自分のキャラクターに譲渡します。その上で、奪取したアカウントのフレンドにも詐欺メールを送りつけます。友人からの連絡だと、警戒が薄れるのでさらに詐欺の成功率が上がります。
「ゲームを有利に進められるチートツール」や「アプリを改造できるソフト」などと謳って、マルウェアをインストールさせようとする詐欺パターンもあります。マルウェアの動作はいくつか種類があり、キーロガーというタイプであれば、ユーザーがゲームにログインする際のIDとパスワードを読み取り、外部に送信します。
スマホゲームであれば、偽ゲームの被害も報告されています。似たような名前とアイコンのアプリを用意し、インストールしたユーザーに警告画面などを出して有料のセキュリティアプリを購入させようとするのです。
対応策としては、まず規約違反の行為をしないことがキホンです。次に、OSを最新の状態にして、セキュリティ機能をきちんと有効にしておくことが重要です。パスワードは使い回さずに、推測されにくい強固な文字列を設定しましょう。スマホアプリの場合は、正規のアプリであることを確認し、怪しい制作元の場合はインストールしないようにします。さらに、セキュリティ詐欺を仕掛けられても動じず、アプリを削除してしまいましょう。適切なデジタルリテラシーを身に付ければ、ネット詐欺の心配をせず、ネットゲームを楽しめるのです。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
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