被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

2020東京オリンピックの観戦チケット詐欺に関するあの手この手

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックの観戦チケット抽選が行われました。このように多人数が関心を持ち、大きなお金が動くときには、ネット詐欺も発生します。公式サイトでも、観戦チケット詐欺に関する注意が公開されています。

 抽選結果はメールで届くのですが、公式チケット販売サイトのURLは本文に掲載されていません。公式チケット販売サイトの「マイチケット」で確認することになっているのです。そのため、抽選結果と題して、URLが記載されている場合は、フィッシング詐欺などのネット詐欺となるので注意が必要です。

警視庁サイバーセキュリティ対策本部も、観戦チケットのフィッシング詐欺についてTwitterで注意喚起をしています

 すでにネットショップやオークションサイトで、観戦チケットが出品されているそうです。現在のところは、もちろん偽造品です。大会のエンブレムなどを無断使用しており、違法品とも言えます。このチケットを転売目的で購入した場合、買った人も罰せられる可能性があるので注意してください。

 今年1月にはテレビで、オリンピック詐欺の事例が紹介されました。こちらは、まずオリンピックの関連団体を名乗るところから電話が来て、20万円で優先チケットを販売すると持ちかけられます。高額のため断るのですが、その後、チケット販売会社を名乗るところから電話があり35万円で買い取ると持ちかけられます。もちろん、持っていないので断るのですが、再度、関連団体から20万円で話を持ちかけられ、買ってしまうのです。もちろん、チケット販売会社と名乗っているのも犯人なので、買い取ってもらうことはできません。そもそも、チケットも存在しないというわけです。

 抽選で外れた人も多数出たことで、今後さらに別のネット詐欺が出現する可能性が高いと思われます。例えば、東京オリンピック・パラリンピックの公式サイトのドメイン名は「tokyo2020.org」ですが、すでに1000件近く紛らわしい文字列のドメイン名が登録されています。その中の22件では、ウイルス感染サイトや詐欺サイトが確認されているようです。まだ確保しただけのドメイン名も、これからフィッシング詐欺などに利用される可能性があります。クリックするURLも確認するようにしましょう。

公式サイトのドメイン名は「tokyo2020.org」です

 観戦チケットは今後もいろいろなチャネルで販売されます。6月20日に発表された抽選に当選した人は、7月2日までに購入手続きを行います。その後、秋には先着順販売が開始され、来年春には直前期販売が行われます。さらに、東京2020オリンピック公式観戦ツアーもありますし、世界各国での販売も行われます。

 「先着順販売で優先的に購入できる整理券を譲ります」とか、「海外販売枠を押さえたので、格安手数料で譲りますよ」など、いくらでもネット詐欺のネタは転がっています。メールにURLが記載されていれば、ネット詐欺という情報を逆手に取って信頼度を上げる手口も出てくるでしょう。

 観戦チケット詐欺に遭わないためには、公式サイトからしか購入しない、という基本を徹底することです。観戦チケットの公式以外での無断転売は禁止されています。オークションサイトに出品されたチケットは無効化されるので、たとえ購入できても入場できないので意味がありません。なお、公式のリセールサービスは2020年春からスタートする予定です。抽選に当選した人が行けなくなった際に観戦チケットを売ることができるのです。観戦チケットを手に入れたい人は、これらのタイミングに再チャレンジすることをオススメします。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。