被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

子どもを狙うネット犯罪に注意

SNSで裸の写真を要求したり売春を斡旋、元刑事にTwitterで起こった犯罪事例について聞いた

日本刑事技術協会理事の森雅人氏

 今回、一般社団法人日本刑事技術協会の理事であり、サイバー犯罪、薬物銃器犯罪専門家の森雅人氏にネット犯罪の実例について話を伺いました。

 日本刑事技術協会は元刑事が集う団体で、講演活動などを通じて刑事技術の民間活用を促進するために活動しています。森氏は刑事になってからサイバー犯罪関連の事件を長年手掛けてきました。

 警察に入った2002年ごろは、各都道府県の警察にハイテク犯罪対策総合センターが立ち上がってきたころです。やはり、相談が多かったのは、ネット詐欺や不正アクセス、児童ポルノ禁止法違反だったようです。

 今回はSNSで起こった事例を2つ挙げていただきました。本連載ではあまり取り上げないヘビーな内容ですが、デジタルリテラシー向上のために紹介したいと思います。

日本刑事技術協会のウェブサイト

大学生が20人の女の子を標的に、警察をかたって裸の写真を要求

 1つ目の事例については、中学生の娘を持つ親御さんの相談から始まりました。娘がTwitterで知り合った男性から裸の写真を送るように迫られているというのです。

 最初は「可愛いね、顔写真を送ってよ」と言われたため、実際に送ってみたところ、相手のアカウントが「こちらは警察で、こういう写真を送るのは法律違反になります。ショートメッセージ(SMS)のアドレスを教えなさい。教えなければ、強制捜査を行います」と突然言ってきました。

 彼女は驚いて教えてしまったのですが、今度は「年齢確認をするので、生年月日と全身の写真を送ってください」と相手は指示してきます。従うと「今なら、まだ見逃すことができます。その代わり、上半身裸の写真を送ってください」と要求するのです。

 他にも写真を送るように次々と指示をするのですが、最後には直接会うことを要求し、応じなければ逮捕すると言ってきました。ここでやっと、彼女は母親に相談することになります。

 被疑者とのやり取りの記録が得られたので、捜査としては簡単でした。SMSから携帯電話を割り出したところ、契約者が中年の会社員だということが判明しました。しかし、犯行内容から犯人は若い男だと目星を付けていたそうです。この会社員には大学生の息子がいたことから、携帯電話の使用者は、親名義で契約した息子の可能性が高いということで、さらに捜査を進めます。

 大学生の息子に、これまでに送信したSMSを開示してもらうと、同じような手口でいろいろな人とやり取りをしていました。同じように警察をかたっており、画像を送るように要求するメッセージがたくさん見つかったのです。

 今回の被害者の女の子の供述だけだと、単発被害になってしまいます。そこで、やり取りをした他の女の子達にも連絡をしたのですが、被害者は合計20人、全員高校生以下であることが判明しました。全員から供述を得て、児童ポルノ禁止法違反と強要事件として、その大学生を逮捕しました。

 「今、中高生はますますSNSに近づいていますし、この犯人と同じようなことをしている人もたくさんいます。被害を防ぐには、子どもへのスマホの与え方を考えて欲しいと思っています。スマホをあげてしまうと親が介入できる余地がなくなってしまうので、まずは貸すところから始めた方がいいです。それによって、必要な時に親がスマホを確認できるようになります。」(森氏)

 もう1つ重要なのが、子どもがSNSのアカウントを作る際に子どもであるということを書かないようすることです。

 例えば、Twitterなどのアカウントに、中学1年生の女子であることを表す「JC1」などの単語を入れると、犯罪者の目に留まりやすくなってしまいます。学校名を入れるなんてもってのほかですが、検索してみると多数の子どもが個人情報を垂れ流している状態でした。

画面は作ったものですが、このようにTwitterのプロフィールに子どもであることを書くのは避けましょう

「ジャニーズ好き」の女の子に恋をさせて売春を斡旋、稼いだお金は犯人が没収

 もう一つの事例についてですが、平成29年に起こった事件もTwitterが発端となりました。

 犯人グループに所属する男が、プロフィールに「ジャニーズ好き」と書いてある女の子を標的に「君可愛いね、今度会おうよ」とナンパします。実際、この犯人はイケメンなので、なりすましなどではなく、本当に自分の顔写真を送ります。

 SNSのやり取りが続くと、女の子には恋愛感情が生まれてしまい、直接会うことで交際関係になります。犯人に恋をしてしまったころを見計らって、犯人は「実は金に困っていて、今すぐにはお金が作れないので、良かったら俺のためにお金を稼いでくれないか」と言ってきます。

 信じられないような話ですが、女の子は要求に従って売春組織に入ってしまうのです。騙された女の子達は犯人グループの家に住まわされます。犯人グループの仲間が出会い系サイトで片っ端から売春を持ちかけ、話がまとまったら女の子をホテルに送り込みます。売春で得たお金は全て犯人に没収されます。ノルマも設定されており、1日最低4人以上相手にしなければなりませんでした。

 当然女の子は挫けますが、そうするとこの「色恋管理担当」の男がまた出向いて優しく説得するのです。「もうちょっと俺のために頑張ってよ」というと、女の子は頑張ってしまうそうです。

 女の子達はノルマを達成できないと、犯人グループにスタンガンを当てられる虐待をされます。我慢しきれなくなった女の子のうちの1人が逃げて警察に駆け込み、事件が発覚しました。

 森氏達は機動隊と一緒に全員を逮捕しました。その時点で、被害者の女の子は5人いました。逃げた子を含めれば、10人以上が被害に遭っていたようです。

 「対策は、こういう現実があるんだよということをより多くの人に知ってもらうことだと思います。この事件も闇が深いと思い、報道発表もしたのですが、報道されたのは地方紙三面に3行だけしか掲載されませんでした。そういった事件の裏にも、こういった生々しい事件があるということを知って欲しいと思います。」(森氏)

 筆者が所属するNPO法人デジタルリテラシー向上機構も同様に、デジタルリテラシーを身に付ければ防げる被害があると考えています。森氏も同意見だったのですが、それでもサイバー犯罪に巻き込まれる人はいます。そのときに、誰かが気が付いて「こういう話があるよ」と声をかけることが重要だと思います。

 日本刑事技術協会では講演も多数行っているので、元刑事達の専門知識をもっと詳しく知りたいという人は、問い合わせてみましょう。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

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