被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
ネットの危険から守るために
「お下がりスマホ」を子どもにそのまま渡すのは危険! 安全に使うためにはどうすればいい?
2020年12月18日 06:00
筆者は、ネット詐欺の被害を防ぐための活動を行うNPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)に所属しており、小学校で講演を行うこともあります。講演先で子どもたちに聞いたことがあるのですが、ほぼ全員がスマートフォンやPCでゲームやチャットなどをした経験があり、半数近くが自分のスマートフォンを持っていました。利用時間などの家庭内ルールを作っているという回答も約半数でした。
小学生でも高学年であれば講義の内容を理解してもらえるのですが、低学年だと、ネット詐欺やなりすまし、危険なウェブサイトについての講演内容は伝わりきらないと感じることもあります。
もちろん、子ども達のデジタルリテラシーを向上させることは必要なのですが、同時に大人が仕組みで子どもを守ることも重要です。そこで役立つのが「フィルタリング」です。
フィルタリングは、子どもが不適切なウェブサイトにアクセスしないように閲覧に制限をかけたり、有害なアプリを起動しないようブロックする機能です。
2018年には「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」が改正され、18歳未満がスマートフォンを契約する際は、フィルタリングの内容に関する説明や設定を携帯電話事業者や代理店が行うことが義務付けられました。とはいえ、小学生の場合、保護者のお下がりを渡されていることが多いので、設定は保護者が行わなければなりません。
ちなみに、講演先の小学生にフィルタリングを有効にしているかどうか質問しましたが、手を上げた子どもはごく少数でした。ちょっと心配になってしまいましたが、東京都が2020年4月に発表した「家庭における青少年の携帯電話・スマートフォン等の利用等に関する調査」によると、フィルタリング設定率は小学校低学年で44.3%、小学校高学年で53.3%に上っています。フィルタリング設定が有効になっていることを子どもに伝えていない家庭が多いのかもしれません。
とはいえ、5割近くの子どもがフィルタリングされていないスマートフォンを利用しているということにもなります。インターネット上の脅威は子どもが使っているスマートフォンにも分け隔てなく襲いかかります。子どものスマートフォンに支払い情報を登録していなければ、フィッシング詐欺などによる金銭被害に遭うことはないと思いますが、不適切なコンテンツを表示してしまったり、SNSや出会い系アプリで悪意のある人に呼び出されるリスクなどはあります。そのため、子どもと話し合って、フィルタリング機能で利用制限を行う必要があります。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクのほか、格安SIMや格安スマホを提供する通信事業者でもフィルタリングサービスを用意しているところが多いので、確認しましょう。
スマートフォンにあらかじめ搭載された機能を使って利用制限をかけることもできます。例えば、iPhoneの場合は「スクリーンタイム」という機能が用意されています。
アプリの利用時間に加え、アプリのインストールや削除、App内課金などの制限を行えます。まずは、「設定」の「スクリーンタイム」を開き、子ども用のiPhoneに設定します。その後、パスコードや保護者のApple IDを登録し、「コンテンツとプライバシーの制限」で各種制限を行います。「Webコンテンツ」では、「成人向けWebサイトを制限」「許可されたWebサイトのみ」を有効にすることもできます。
2020年9月には、スマートフォンのオンラインゲームで知り合った相手に呼び出された小学4年生の女児が誘拐される事件が起きました。すでに女の子は助けられて、犯人は逮捕されていますが、保護者の知らないところで子どもが騙されるのはとても怖いことです。必ずフィルタリングサービスを入れて、有害なウェブサイトやアプリから子どもを守るようにしましょう。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
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高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。