被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

引っ掛からないように気を付けよう!

フリーランサーをカモにするネット詐欺に要注意

 コロナ禍ということもあり、ライターである筆者のようにフリーランスで働いている人の中には、ネットで依頼が来て、制作物はメールで納品して報酬を振り込んでもらうといったケースが増えています。業界のよくない慣習でもあるのですが、契約書などは作らず、口約束で仕事を進めることもまだまだ多いのですが、これがトラブルを招きやすかったりします。

 筆者は完全な詐欺には遭ったことがありませんが、最近はフリーランサーからの被害報告を見かけることが多くなりました。今回はそのさまざまな手口を紹介しましょう。

報酬は支払われず連絡が途絶えたり、単価をごまかされるケース

 デザインのコンペの募集があり、応募すると落選の連絡がありました。しかし、数年後、そのデザインを使って商品や広告などを勝手に作られるというものです。デザインの詐取ですが、よくあるパターンと言えます。自分で連絡しても相手にされませんが、弁護士経由で請求するとすんなり解決することも多いようです。

 納品後でもお金を支払わず連絡を断つ、という手口もあります。これは、古典的な詐欺手法で、後払いを利用した取り込み詐欺と言います。

 単価を無理矢理安く済ませようとするケースもあります。例えば、「ロゴデザイン1点2万円」という依頼で10種類のロゴを納品したところ合計で20万円の報酬ではなく、10種類全てを1点の納品物として扱われ、報酬を2万円としてしまうようなパターンです。

 筆者も知らない業者から原稿の依頼を受けましたが、このような手口で騙されそうになりました。このときは着手前に回避することができましたが、寝ぼけていたりしたら書いてしまうところでした。

 海外からイラストの作成依頼が来る、というパターンもあります。資料と言うことで、パスワード付きの圧縮ファイルが送られてきて、実行するとマルウェアに感染するというものです。PC内のファイルに不正アクセスされ、Twitterアカウントを乗っ取られた、というツイートもありました。

資料としてマルウェアが送りつけられてくることもあるようです

Instagram経由でスライドショー制作の依頼、実際に受けてみたら……

 アメリカでドキュメンタリーを撮っている映像作家の椎木透子さんは11月30日、Instagram経由で被害に遭った詐欺の手口についてツイートしました。

 まず、Instagramのダイレクトメッセージ(DM)でスライドショーの編集を300ドルで依頼されました。娘の誕生日祝いのための動画制作を依頼され、写真と楽曲が送られてきました。そして作品を完成させてDropboxで送ったところ、依頼主からは電子小切手が送られることになりました。

 2日後、相手からは「3000ドルの小切手を送ってしまったので、2700ドルを送り返して欲しい」と言われます。椎木さんとしては、そのやり方は避けたいため、キャンセルして300ドルを送るように伝えると、なぜか「この方法以外はできない」と言われました。ここで怪しいと気が付きました。調べてみると、送った動画は閲覧されておらず、ダウンロードもされていないことが分かりました。

 本来、お金をもらうはずの側からお金を取ろうとするネット詐欺の手口です。金銭的な被害は回避できましたが、スライドショーを作成してしまった手間は返ってきません。日本では電子小切手は一般的に普及していませんが、似たようなパターンの詐欺が出てくる可能性もあります。事例を知っておくに越したことはありません。

 駆け出しのフリーランサーだったり、趣味を副業にしている人などは依頼があるだけで喜んでしまいます。身元確認や契約書について確認すると案件がなくなってしまうかも……などと恐れて、言われるがままに仕事を進めてしまうということもあるでしょう。しかし、詐欺に遭ったときの精神的ダメージは計り知れません。自衛するようにしましょう。

 まずは、相手のことを検索しましょう。名前やメールアドレス、依頼内容などです。この時点で詐欺師だという書き込みが見つかればラッキーです。先に紹介した事例のように、曖昧な言い方で単価をごまかそうとする手口も事前に把握しておけばトラブルを回避できます。小切手の返金詐欺も手口が分かっていればお金を送らずに済みます。

 とは言え、本気で仕掛けてくる詐欺師の場合、ネットのやり取りだけで見破れるとも限りません。可能であれば、初回のみでも電話やビデオ会議、リアル対面などで確認を取ることをお勧めします。それができない場合、怪しいと思ったなら仕事を受けない、というのも手です。

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※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと