被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

怪しいメッセージは無視が鉄則!

「会費が未納です」に騙されて725万円失う、架空請求詐欺の被害が拡大中

 2022年6月6日から25日にかけて、新潟県新潟市の60代男性がネット詐欺に遭い、約725万円を振り込んでしまいました。SMSで「ネットサービスの会費が1年間未納」だと連絡が来たことが切っ掛けでした。昔からある架空請求詐欺ですが、「すぐ払わなければ裁判を起こす」と脅されて、支払ってしまったそうです。

 こうなると、ネット詐欺師からするとカモ認定です。その後、「あなたのせいでウイルスに感染した被害者がいるので、損害を弁償する必要がある」と賠償金をさらに要求されたのです。この損害賠償は保険から補填されて返金されると説明され、男性は信じてしまい、振り込んでしまったのです。

 7月4日には、秋田県由利本荘市の30代男性が架空請求詐欺の被害に遭いました。「ウェブサイトの未納料金がある。今払える分だけ振り込むように」とのメールが来たので、2万円を振り込んだそうです。

架空請求詐欺による被害が拡大中です

愛知県では1月から5月で3億円の被害、去年の6倍に

 幸いにも、周囲の人の声かけによって詐欺被害が未然に防がれた例もあります。6月11日には愛知県豊川市のコンビニで、常連の男性客が30万円分の電子マネーを購入しようとしていたことを店員が不審に思って声を掛けたのです。男性客は「登録料金の未納が1年ある」と言われて、支払おうとしたそうです。

 このケースでは詐欺被害を防げたものの、愛知県内では架空請求詐欺の被害が急拡大しており、被害総額は今年1月から5月までですでに3億円を超え、去年と比べると6倍のペースで増えています。

架空請求詐欺は無視が鉄則、電話は厳禁

 架空請求詐欺では、アダルトサイトの会費や利用料金の未納がある、などと言ってくることが多いですが、この手のネット詐欺は無視してしまうのが最善です。

 しかし、アダルトサイトを開いた覚えがあるうえに、こうした対策を把握していない場合、「無料だと思っていたのに有料だったのか!」と驚いてしまうのです。そして、誰にも知られたくないし、裁判なんか起こされても困る、と焦ってしまいます。

 電話番号を記載し、電話をすれば減額に応じる、と書いてあることもあります。もちろん、全てうそです。信じて電話をかけてくるような獲物を逃がすわけもありません。最近は、1回の振り込みだけでなく、冒頭の事例のようにあの手この手で可能な限りお金を搾り取ります。途中から別の詐欺師にバトンタッチし、別団体や弁護士を騙ってお金を搾取しようとします。

 架空請求詐欺に限らず、ネット詐欺に遭わないためには、怪しい連絡を受けても無視することが基本の対策になります。それでも不安であれば、家族や知人に相談するという方法もありますが、今回のように、アダルトサイト関連の相談はしにくいものです。そのため、高齢者ほど誰にも相談できず、結果、貯金全てを奪われてしまう可能性が高くなります。

 高齢男性は電話で直接話せばなんとか切り抜けられると考えてしまうケースがあります。しかし、相手もネット詐欺のプロです。電話したら最後、説得されて被害が拡大してしまうのです。

 回避策は架空請求詐欺メールは無視することが鉄則です。そのためにはこの手の詐欺の事例を知ることが重要です。ぜひ、ご両親など、身近なシニアの方に事例をシェアしてください。今やスマホを持っていれば、誰でも詐欺メッセージを受け取る可能性があります。デジタルリテラシーを向上し、大切な財産を守りましょう。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

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高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと