被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
騙されないように注意!
アダルトサイトを騙ることも多い、発生件数トップの「ワンクリック詐欺」に引っ掛からないためには
2022年7月1日 14:00
詐欺サイト対策ソフトなどを提供するBBソフトサービス株式会社が3月に公表した「インターネット詐欺リポート2021年度版」によると、検知したネット詐欺のカテゴリーランキングトップは「ワンクリック詐欺サイト」でした。筆者が所属するDLIS(デジタルリテラシー向上機構)への相談はほとんどないのですが、まだ猛威を振っているようです。
ワンクリック詐欺とは、ウェブサイトやメール、メッセージに記載されているURLをクリックしただけで、画面上に「契約が完了しました!」「お申し込みありがとうございます!」のようなメッセージが出て、多額の金銭を振り込むように誘導するネット詐欺です。
これらの詐欺サイトはアダルトサイトや出会い系サイトを騙っていることが多く、金額は1万円のこともあれば、30万円のこともあり幅が大きいです。遭遇する可能性が高いのは、怪しいウェブサイトの閲覧中や迷惑メールのURLをクリックしたときで、PCでもスマホでも表示されます。
弱みに付け込んだり、慎重に判断する時間を与えないようにする手口
契約も何もなく、ワンクリックだけで数万円を払え、などと言うのは荒唐無稽なのですが、ネット詐欺師もあの手この手を使って支払わせようとします。
まず、アダルトサイトの動画の再生ボタンを押すことでワンクリック詐欺に誘導されるケースがあります。ボタンを押したことによって金銭の支払いが発生しているように見せかけて脅してきます。金額が大きくても、アダルトサイト絡みということもあり、知人や家族に相談しにくく、弱みに付け込んだ手口と言えます。
金銭を要求する際には、他にも「お客様のIPアドレスは○○です」など、こちらのIPアドレス、利用しているOSのバージョンやウェブブラウザーの種類などを表示することがあります。まるでこちらに関する情報を知っているかのように見せる脅し方です。しかし、これらの情報はどのようなウェブサイトを閲覧する際にもサーバーに送信されるもので、特に隠さなければいけない情報ではありません。
慎重に判断する時間を与えないように工夫しているケースもあります。例えば、誘導先のウェブサイトでは何らかのサービスに新規登録されたような画面を表示し、通常価格より安く済ませるためには制限時間内に支払うよう促してくる手口があります。
凝ったケースだと、「間違って登録した人はこちら」といったリンクまで用意していることがあります。クリックするとメールの作成画面が自動で開くようになっています。退会申請を行うための文面もあらかじめ用意されており、少ない手間で退会できるように見せていますが、これは引っ掛かった人のメールアドレスを収集するための2つ目の罠です。当然、メールを送信してしまった場合はさらに詐欺を仕掛けられる恐れがあります。
間違って開いても画面を閉じるだけでOK、ネット詐欺だと分かっても連絡は避けて
ワンクリック詐欺の対策としては、本来怪しいURLをクリックしない、というのが基本です。ワンクリック詐欺の画面に遭遇しても指示には従わず、スルーしましょう。そのままウェブブラウザーのタブや画面を閉じてしまえばOKです。
解約しようとメールを送ったり、低額だからと支払ったり、なんならネット詐欺と把握した上で記載されている電話番号に連絡して「ワンクリック詐欺は犯罪だぞ!」なんて説教すると言うことは避けてください。ワンクリック詐欺サイトが表示されただけではこちらの個人情報などはネット詐欺師に渡っていないため、連絡をしてしまうとそこが取っ掛かりになり、ネット詐欺師が食らいついてきます。
ワンクリック詐欺の種類は無数にあるのですが、騙すパターンは限られています。URLをクリックしていきなり金銭を求められても、何もせずにページを閉じる。そして、そんなウェブサイトにアクセスするような操作はしない、ということを肝に銘じておきましょう。デジタルリテラシーを高めれば、簡単に被害を回避できるネット詐欺とも言えます。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
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※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと